みなも泳ぐ水鳥も

観劇と他の趣味

2023年見たものまとめ(2月)

ボニーアンドクライド@御園座
初宝塚!面白かった。楽曲はさすがの天才ワイルドホーンだし、演目もかなり好み。

最後は唐突な幕切れで、かつフィナーレに馴染みがないのでしばらく何が起こってるのかわからず混乱しながら見ていた。
初めは生きるため抜け出すためだった悪事を繰り返すうちに、たがが外れてしまうカップルの話。そのままならなさも含めて好みだった。

犯罪を繰り返すうちに英雄視され始めて、本人たちも高揚してきて戻れなくなって、でも末路もうっすら分かっている。ヒーローとしてもてはやされるカップルがトップコンビな構造が現実と物語でリンクしていた気がする。
兄夫婦が好きでした。冒頭の美容院の曲が好き。ブランチの方歌うっまい。
生まれた環境から逃れられない、というか家族から逃れる気もない兄、神は隅々まで見ておられるのか、本当に?みたいなのをずっと考えさせるふたりだった。

子役を大人が演じるみたいな趣向ではなく子役としてやるっていうのどんなだろうと思ってたんだけど、普通にすんなり子供時代として見られた。ふたりとも可愛くて素敵でした。

 

AGRImanSHOW@サンシャイン劇場
非常にリーダーらしい全部乗せのショー。脈絡消滅情緒めちゃくちゃな構成も面白い。

入場直後からじゃがいものプレゼント。めちゃくちゃ笑ってたけど、ちゃんと作中とリンクしていて素敵でした。

短い一人芝居がいくつかあって、父ひとり子ひとりの作品のパパの顔が素晴らしく良かった。あとエンディングの紙吹雪演出に、ロマンティックリーダーの本領発揮。

生身リーダーももちろん良いんだけどブリッジのVTRがかなり好みだった。昔好きだったコント番組思い出す感じ。


桜姫東文章@とよはし芸術劇場
元の歌舞伎は分からないけど、誰かひとりがクソというより、メンツを立てることを一義にしている武家社会がクソ、悪事を働かないと生活できない社会がクソ、その中でやはり女がモノとして扱われるのがクソみたいな印象だった。
全編抑揚を排したせりふ回し。私は好きだった。ただ完全にフラットな人もいればけっこう感情の起伏のある芝居の人もいて、意図なのか結果なのかわからなかった。

2幕頭の非人やってた方に心掴まれてそれ以降目で追っていた。あと松井源吾とお十も好きだった。松井殿まあまあ悪い方の人だけど、ずっと軽くて火に当たりながら「おれ散々じゃね?」って言ってんの憎めなくてたしかにそれな〜ってなった。

高僧の衣装がごっつい毛皮なのがいい。名実ともに生臭坊主に身を落とす男。
でも彼だけが嫌なやつな描き方じゃないのは好みだった。言ってみたら不憫な話だし子供も育てるし、ただ心の奥で女を下に見て私はこんな可哀想だから許されるだろうとも思っている"普通の男"。
権助も生きるためにいろいろやってる小悪党って印象。なんで好きになる?って思ってたけど、あの性格の桜姫が周りから隔離されて育てられてたら御簾ぶち破ってきた男好きになるかもかな。久々に再会して生きる力強そうだから着いていくし最後事実を知ったらああするかもなって納得感があった。
桜姫と権助の絡むシーンが舞踏な2人なので綺麗で面白い。あと川で袖引っ張って落ちる流れ見事な落ちっぷりだった。

寺子屋のくだりがいちばんキツかったな。お茶屋ではまともに見えたお武家さんが謎理論ぶちかますの、身代わりの話もあるだろうけど不倫の噂が立った時点で事実がなくとも面子が潰れることが問題ってことでしょう。


キングアーサー@兵庫県立芸術文化センター
全体的に何の話なんだと思ったけど、嫌いではない。曲がポップでトレンディ。
無邪気な青年が王の器となっていく物語に最もふさわしい男、浦井健治。最初の対メレアガン戦で覚醒した剣さばきに切り替わったところ鳥肌たった。
メレアガンはやばすぎた。歌がうますぎる。事前に歌番組で聞いていたハイトーン曲が早々に歌われて、2幕にまだ更なるハイトーンがある。

伊礼メレアガンは絶対に王の器ではない。だからこそコンプレックス刺激されてモルガンにいいように転がされてグィネヴィアにすがりつく様が哀れだった。

伊礼メレアガンは哀れなら、和樹メレアガンは可哀想だった。ひたすら真面目に努力してきたのに横からかっさらわれて「そこ俺の場所だったのに!!!」って泣きながらキレてる子だった。ちゃんと任命されてたら頑張って国治めてたと思う。

モルガンに乗っ取られたまゆこグィネヴィアがめっちゃかっこよかった。モルガンと完全にシンクロしてて素敵。

マーリンとケイさんの可愛いおじさんチームかわいくてずるかったな。キュートで憎めない浮世離れした妖精さんがめちゃくちゃ上手いソロ曲歌い上げる。

鹿と狼、侍女の方をはじめとしたダンスチームの素晴らしさたるや。

メレアガンの2曲目なんであんなに爽やかなんだろ。そんなライバル校に負けたサッカー部みたいな。

和樹-もっくんの組み合わせ見ると、伊礼-壮ちゃんの体格差があるのに同じマント着たくらいで騙されるグィネヴィアしっかりしなよって思うな。

鳥形態のマーリンが飛び去る先に座ってたんだけど、ちゃんと音が前から飛んできて後ろに回り込んでいったのすごかった。

楽曲の雰囲気も含めて新感線歌モノの味がした。主演が健ちゃんなのでさらに。曲はかっこいいし悪役はどんどんメイク濃くなっていくし様式美で楽し〜〜ってなれるタイプの作品でした。

 

ドリームガールズ

私たぶんショービジネスものが好きなんだな。ショービズだけどショーアップすぎない演出が好きだった。盆がぐるんぐるん回る。バックステージものと盆の相性の良さ。


全員歌うまいしお芝居もすごい。

spiさんのお芝居が好きで、それを十二分に堪能できた。激昂したときに声のトーンがあがるのが好き。人に向ける用の作った笑顔が好き。アポロシアターで既にエフィの肩抱いてて、こいつ……!!!自分の魅力を全活用する男。

JBではニックの野心を抱えてままならなかったところが好きだったんだけど、カーティスも野心ギラッギラで、そしてそれを実現する才能がある。
こちら向いて喋る会見のシーンで、上の席から見ていてもカーティスの目線がばしばし飛んできた。JBのカテコでもそういうことあって、見てる方向の人全員に目が合った!って思わせる類の人かもしれない。

とにかくSteppin' To The Bad Sideがやばかった。一瞬で空気が変わる。

ツアー中に大揉めしてるときにエフィがお腹さすってるのに気づいてつらかった。あそこまで精神が不安定だとグループ運営に支障をきたすのも事実だし、悪いのはカーティスなんだけど、その後でディーナも結婚してるんだよな。

1幕終わりのエフィの絶唱に向けた観客の拍手が、新生ドリームズの登場に吸収されていく演出がえぐい。

すがられる男だったカーティスが2幕でディーナにすがるの、めちゃくちゃ好き。彼にとってディーナはミューズで特別で大切なんだろうけど、ミューズだって人間だし自分の意思を持っているんだよ。

最後の会見、リードボーカルの夫でやり手な有名プロデューサーが離婚と解散を報告して涙ながらに思いを語るのって、現実でもそこそこ評判になるだろうなと思いながら見てた。上手く振る舞いながら歌唱の中で内心の後悔がにじむの好きだった。

カバーで原曲を塗りつぶす戦略は1幕のキャデラックのリフレインで、それが完全に道を違えた瞬間だったんだろうな。

悪になるって覚悟決めてやることはラジオDJに金ばらまいて曲かけてもらうことなので、それ別作品ではポジティブに語られてたぞと思ったりした。
ラストライブで3人で歌う曲、さよならの向う側みたいな曲だなと毎回思っていた。


お馴染みの方も初めましての方も皆さん配役が適材適所だった。
saraさん、可愛らしいけど台詞の声が意外と低めでコメディセンスが好き。スターにメロメロになってたティーンの頃から、グループの形が変わっても仕事はきちんとやって自分を大切にしない男に毅然と迫るかっこいい女性になるまでずっと素敵だった。ジミーに激ギレする曲の迫力が好き。
あと不満を隠さないエフィに「私と一緒なのに嫌?」って聞く台詞、3人の中での彼女のポジションが感じられてすごく好きだった。仕事をきちんとやる人。

村川さんもめちゃくちゃソウルフルでかっこよかった。カーティスにすがりつくとこのキツさも、再起後のシャキッとした感じもすごく好き。

ただ私は昔から村川さんのお顔がかなり好きなので、ビジュアルがどう歌がどうというところだけは最後まで飲み込みきれなかった。めちゃくちゃ可愛いやろがい。そう思って見るものなのはわかってるんですが。

ディーナがセンターにいるべき人なのも最初からそう見えているんだけど、「私みたいに歌えない」ことないのも知っているので、そこは難しかったな。

 

どうしてもJBのこと考えながら見ちゃうんだけど、ほぼ同時代の話なのかな。
R&Bのカウンターとして活躍せんとするイタリア系白人グループの横で、黒人歌手の活動の場を広げようと様々に手を尽くすビジネスマン。