みなも泳ぐ水鳥も

観劇と他の趣味

2021年見たものまとめ(2月)

パレード@愛知県芸術劇場大ホール
初演以降、流れてくる感想で大体どういう話か最後どうなるのかは分かっていたから、食らいすぎてということはなかったけど、しんしんと受け止めて内省する気持ち。

 

しかし、あの、サカケンさんめちゃくちゃかっこいいな。
どういう役かは分かってるんだけど、その抗えなさも含めて完全にやられてしまった。
諦めに身を任せた悪。


ドーシーは民衆を扇動する役だけど、そこに悪意や憎悪が強くあるわけでも上昇志向が強烈なわけでもなさそうで(目的のひとつではあろうが)、ただ周りを見て淡々と嘘の筋書きを作り上げてる感じが不思議なバランスだった。
パーティーに乗り込んできたルシールを無表情でじっと見つめてるのが印象的。


ワトソンは今ここにいそう……と思った。
「今いる場所」を脅かす外部存在を憎み、ある程度立場があり声が大きく聞いてしまうとそちらに引きずられる人もいる。
とにかく歌が上手くてキツい。
好きだなと思う曲がすべて扇動する曲・嘘つくときの曲で、本当によくできているミュージカルだなと思った。
音楽の暴力的な魅力を正しく理解していてキツい。

 

イリュジョがほぼフランキー視点のパレードみたいな話で、マチソワした人本当に感情がめちゃめちゃになりそう。

 

どうあれば良かったのか考えていて、もちろん最後の私刑は言語道断だけど、事件が起こった事実はそこにあり(嘘の)証拠は出てきてる、自分たちを不自由にしている裕福な支配層が怪しい(ドーシーが狙ったのはたぶんこれ)となったときに、うねりを構成するひとつひとつの声は止められないよなと今でも思う。
昨今も声が集まって事態が動くことが多々あって、最悪の扇動であることも既存の壁にひびを入れることもあって、じゃあそのムーブメントの良し悪しを切り分けるのは何なのか。
でも何も言わなきゃいいってわけでもないし……。
じゃあ生活に実害がある本当の支配層の振る舞いに市民の怒りが向かったときにどうなるかがMAかな。

 

Brand New Musical Concert@愛知県芸術劇場コンサートホール

パレードからの流れで行けたコンサート。

1幕ゆるゆる喋ってたら押しまくり、2幕は早口で喋るっていう分かりやすい対策。

ラスト「予定通りいきましたね!」って言って終わったので、時計見たらしっかり25分押しててわろた。


小柳さんの「愛情」、凄まじかったな。
もちろん他の面々も持ち歌素敵だけど、自分の曲の威力を改めて感じた。

あっきーの「スーパースター」がめっちゃ好きだった。
コーラス部分も自分で歌うことで聞きごたえがやばい、まじで音楽とともに生きてる人だな。
あとかずっきーのStarsとけんけんさんの僕ミュも良かった。最近初代ヴォルフは若手が歌うの聴くポジションだね。

サイド席、距離だけで言えばかなり近いし袖とかオケとのアイコンタクトとか見えるから好き。

 

スルース@ウインクあいち
2016年、音尾さんで見た作品。
やっぱ戯曲がまずめちゃくちゃ面白いし、このふたりだからこその演出もたくさんあって面白かった。好きな柿澤勇人の詰め合わせって感じ。
5年前よりもどういう話かもうちょっと踏み込んで理解できるようになった、かな。

2016年PARCOのスルースはand more...?みたいなこと書いてドップラー警部カモフラージュしてたけど、ホリプロ版スルースは本当にもうひとりキャスト呼んでたのが、本編とあんま関係ないけどかなり好きだった。
1幕ラストの階段落ちでかっきーすご!って思って、いやさすがに違くない?ってパンフ見たらアクションアクターの方のお名前があった。
カテコで出てこられたんだけど、帰り道「あれ誰?」って言ってた人いたから気づかないと分からんだろうな。

マイロの俳優のオタクとしては、2幕はまじで好きの詰め合わせなんだよな。

ちなみにタクマイロの好きな瞬間はガラスのテーブルに飛び乗るところだったんだけど、柿マイロは2階で階下を見てる芝居がとにかく好きなかっきー。

あと1幕の年相応な若者感と2幕終盤でトーンダウンしたときの落ち着き感のギャップ。

2幕の正体明かすところで、やっぱ好きな声だな〜と思う。
明らかな違和感は感じるけど、分かんないくらい声が違うのですごい。
声戻ったとき後ろの席でおぉ?って聞こえたのでちゃんと騙されてたんだろうな。

 

タクマイロはカジュアルな格好だったよなと思ったら、にーろさんは派手系スーツだったのか。
柿マイロのビシッとブリティッシュなスーツは、生まれに思うところがあり父親が変えた名前名乗って仕事してる意図が感じられて好きだった。あととにかく似合うし。

 

過去の遺産にすがる支配階級の男を、彼が愛する「ゲームのルール」にのっとって他所者の若者が現実に引きずり下ろす物語かなと今回より強く感じた。
コスプレ衣装の中に白頭巾入れてたのも意図的だと思うし。

PARCO版はもうちょっと同じ魅力に取り込まれてしまった人みたいな認識だった気がする。

 

コミカルとシリアスがシームレスにやってきたり冗談めかした侮辱が出てくる作品だと笑いどころは難しいなあと毎度思う。
客席が統一されてる必要は全くないけど、そこで笑うのか……と思うところが何ヶ所かあった。