みなも泳ぐ水鳥も

観劇と他の趣味

2022年見たものまとめ(11~12月)

青空@博品館劇場
戦争ものがあまり得意ではなく人並み程度にしか触れてきてないんだけど、主人公が軍国少年だとこんなに辛いんだな。最近は最初から「こんなことやりたくない」タイプの主人公が多いけど、生まれてからそれが正義って刷り込まれてたのが事実だもんな。

少年大和、犬の麦、猫の小太郎以外は全部語り部の安田さんなんだけどさすがの七色の声。幸せでふっとゆるむシーンもあり、どっかで聞いたことある人も出てきて笑、優しくて過去を抱える父、明朗で適当な医大生から高圧的な軍人たちまで、声だけで情景が浮かぶ。久々に舞台の安田さんを焼き付けた。

どのキャラクターも良かったけどお父さんが特に好きだった。ベースの語りとそれほど声色が違うわけじゃないけど、明確に役が乗ってて「兵隊にはならなくていい!」の声で空気が変わった。自分の信念はあるけど、息子にそれを理解してもらうまで説得はしないのか、できないのか。

小池栄子≒柴犬くらい麦ちゃんだった。この作品のテーマでもあるので振り回されるんだけど生命力があって賢い。従順でご主人大好きな麦と皮肉屋で素直じゃない小太郎のバランスが物語の救いだった。

ベテラン3人に囲まれた瀬戸くんがとっても良い。すくすくと軍国教育を受けて育った少年の危ういほどまっすぐで不安定なものの上に立っている雰囲気が出ていた。

皆さん涙ぐんだりこらえたりしながら読んでたんだけど、安田さんが言葉詰まらせるくらいになってた(ように見えた)のが自分の役じゃなくて小太郎の行動を説明する語り部分だったのがすごくぐっと来てしまった。父も松原さんも、彼らは泣かないのかも。
きちんとした朗読劇ほぼ初めてだったけど、照明と音楽と一部立ち上がったり移動したりの演出と役者の力だけで本当に場面が変わっていくように感じたの素敵だった。

 

終演後に一言ずつご挨拶。安田さんって善さんから顕さんって呼ばれてるのね。

しかし複数役やる安田さん見てひとり語り見たくなった。舞台発声と多彩な声色が大好き。

謡曲明治座
1幕んん〜?だったんだけど2幕展開していくにつれ面白くなった。
とりあえず中川大志くんは数年のうちに新感線の主演くると思う。声も歌もお芝居もめちゃくちゃ舞台映えして、映像も引っ張りだこだろうけど、定期的に舞台もやってほしい。せっかく三銃士企画なんだから東宝でガチガチのミュージカルもやって!

浅利さんがめっちゃかっこよかった。筋の通った男がとにかく似合う。

曲者おじさんトリオも、前半のやりたい放題から空気をキーンと凍らせる怖さまで自由自在で好き。

若者たちも皆さんすごく印象的だった。利生の大切に育てられた優しさと、それでも家族について思うことある感じめっちゃ良い。桜木輝彦との最後の曲好き。

 

1幕の時系列ぐっちゃぐちゃなのは何か意図があったんだろうか。見てればなんとなくわかるけどちょっと混乱した。
倉持作品の「普通の世界」で生きにくい人が決して救われて終わらないのはキツいけど、一件落着チャンチャンで終わらないのは誠実ではあるのだろうか。
今作は、強いて言えば希子ちゃんが最後全部気づいていて、夢も叶えたのが救いかな。

 

しびれ雲@本多劇場
今回も正しく群像劇。ケラさんが言っていたようにお豆腐みたいな作品でした。群像劇の中のひとりとして、かつ物語のフックとして存在する芳雄さんも好き。

OPとか転換のステージングは今回も美しかった。あと照明の光とリンクするようにセットの色が変えてあったのがすごくかっこよかった。

 

しばらく標準語だったところから慣れて方言話し出すところの台詞の音階の美しさに、音楽の人だ〜と当たり前のことを思った。

菊池さんめちゃくちゃかっこいい。親戚のおじさんの友達でちょくちょく家に来てたら初恋枠だと思う。自営業で自分でもお店に立って、周りのおじさんに比べて品があって、デート誘われたら乗ってくれるけど明らかにそれどころじゃなさそうな人に怒るでもなく無理しなくていいよって言ってくれる人、良すぎない?あの島の子供になって露骨に懐きたい。

あと佐久間さんの切なさがしみじみと良かった。一途すぎると怖いこともあるんだけど、三宅さんのコミカルさとたまきさんの飄々とした掴めなさが中和してとても可愛くて切なかった。
フジオさんのシーンは、愛妻弁当冷やかすところと万作さん家で3人で喋ってるところと夜訪ねてきた千夏さんと喋るとこと最後ふたりを説得するとこが好き。
初めは救いの手を取らざるを得なかったところもあるんだろうけど、素直に助け助けられて生きていくことができる人柄がとっても好きでした。

 

東京楽は照明データが全部飛ぶというハプニングで30分ほど開演押し。たしかに初見時に感動したセットと調和した照明ではなかったし、フジオのスポットも追いきれてなくて芳雄さんが入りに行ってた。

通常のカテコ後にケラさん登場されて、流れるように土下座。8時だョ全員集合みたいに懐中電灯でやるか、そうすると片手が埋まるから……とか考えてたけど、大人の知恵で何とかしたそう。
最後ケラさんの計らいで劇中歌をアカペラ歌唱!素敵なラストでした。

アカペラでって提案した後冗談で「これで6000円分ね」っておっしゃってて、ルーツを尊重して価値あるものとして扱うって「できるならやってもらおう」とはまた違うよなあってしみじみと感動した。また下北にも呼んでほしいです。

 

ヘアスプレー@御園座

コーニーコリンズにメロメロになって帰ってきた。久々に急転直下の恋だった。
あんなに目の足りないエンディングだったのに、コーニーコリンズから目が離せなくていろんなもん見逃した。

提供ソングでウインクが飛んできて衝撃に備える姿勢を取ってしまった。ヴェルマとバトって、トレイシー面白そうに見て、機動隊引き込んで、ペニーとシーウィードが踊ってるの見て感極まった顔してるの、ずっとかっこよくて目が離せなかった。

ダンスももちろんかっこいいけど、精神も含めてかっこいい大人の代表なんだよね。「世の中変わるべき」だけではなくて、それを自分の番組で実現するしできるっていう自信と野心がある。映画初見時はもう少し雇われの印象があったけど、舞台版は自分の名前で番組が成り立ってる自覚があった。
ヴェルマと議論を戦わせてるときの好戦的な笑顔が好き。カメラ外でトレイシー見てるとき「来たぞこれは!!」って笑顔でADさんに絡んでるのが好き。
You can't〜でペニーとシーウィードが踊ってるの見て感極まってるのが好きでした。

 

あとペニーがずっとおもろい。フォーリンラブ曲でマネキンになってる周りで遊び倒したり、シーウィードがガンガン指絡ませてくるのにフリーズしながらもトレイシーに話しかけにいくのにわざわざ手外してもらってるの可愛い。
シーウィードはちょっと刺激が強すぎるくらいグイグイでキラキラだった。

みうリンクのトリプルアクセル何の前触れもなく飛ぶからびびった。ちょっと残念なかっこつけだけど、素直でいい奴。

直美ちゃんって歌い上げる印象があったんだけど、よく考えたらほぼリップシンクで本人が歌ってるのってほとんど聞いたことなかった。とてもトレイシーっぽいミュージカル歌唱ですごく良かった。コミカルなシーンの抜き具合はさすがのプロだし、とにかくセンターぢからがすごい。

瀬奈さんも絶好調で素敵でした。悪徳母娘のこと憎みきれないし、最初のママの歌で3組並ぶことで、アンバーもあの母の子であって、彼女だけが悪いわけではないのが感じられた。めいめいのアイドル仕草がさすがすぎる。

ラスト卒倒してぐったりしてるアンバーのことカメラマンのお兄さんがちゃんと面倒みてあげてるの可愛い。

主軸じゃないところで人が意志を持って喋ったり動いたりしてるのがすごい好きで、ついついそっち見ちゃった。
入れ替わり立ち替わり出てくる川口さんも素敵。実は踊りの人って聞いてたので、ばちばちに踊ってるとこ見れて嬉しかった。

カテコ川口さんがMAOTOくんの両肩持って退場してたの見て沸いた。

リトルアイネスが大きめの子役なのかと思って見てたら、成人の俳優さんなんだね。お芝居と衣装とメイクの力なのか、すごい子どもに見えた。

ルードヴィヒ@シアタードラマシティ
う〜んハイカロリー……LDHが持ってくるタイプの韓ミュっぽかった。緩急で言うと、緩急急急急!!!緩緩急急急!!!!緩って感じで、ちょっと消化が追いつかなかった。
木暮さんが他の演者のピアノも全部弾くの素敵だった。

マリーがとても魅力的。冒頭から最高速度でしんどいが続く中、マリーが出てくるところで一度ふっと緩んでちょっとコミカルになる。3回目の訪問の居住まいが素敵。
カールパートに入ってからのベートーヴェンが絶妙にキツくて、悪意じゃないのも分かるだけに苦しくてしんどい。またそれを受けるカールの我慢がたまっていって爆発、でも対峙して高圧的に来られると萎縮してしまうのがリアルだった。

倫也くんと福士さんの声質とか歌い方が似てるので役の関係性が面白かった。

 

キンキーブーツ@オリックス劇場
ドンが涙腺クラッシャーで2幕途中からざばざば泣いてしまった。今年も見られてよかった!!
試合後のドンとローラ、それを受けてのSoul of a Man後のドンとチャーリーが今作のテーマのひとつだなってぐっときた。どういう話か改めてちゃんと理解できた気がする。

1回ずつしか見てないし感覚的なイメージだけど、春馬ローラが強くあるためにローラでいる人だとしたら、優ローラはローラでいると強くあれる人かな。

What a Woman Wantsのローラが心強くて、こんな人そばにいてほしいなと思った。だからサイモンのときの大きいのにぽきっと折れそうな雰囲気がつらい。

あと軽口叩くときとかなんかの空気を察したときとか人の恋路を見守るときとか、間の取り方が最高。たまにおばちゃんみたいな口調になってんの好き。

チャーリーがしっとりと大人でかっこよくて、ローレンが好きになるのも仕方ない。
チャーリーの暴発の部分、ドラァグクイーン用のブーツ作ってんだから本物が出るのそんなおかしいか?女性モデルが出る方がコンセプト違いじゃない?と思うんだけど、20年前の感覚だとまだ難しいのかな。それかチャーリーの"想像のミラノ"なのか。

 

ショウマストゴーオン@京都劇場
往年の三谷さんのドタバタバクステものなんだけど、皆さん上手くて楽しかった。
松也、舞台上では輝くクセツヨスターが似合いすぎる。声が素敵。
ウエンツがとにかくかっこよかった。喧騒の中で唯一まともな人。
荻野さんがピアノ弾いてるのも見れて嬉しかった。クライマックスで代役三谷さんとふたり本物の"裏方"が舞台上で仕事してるのが現実と入れ子でぐっときちゃった。

社長も舞監も女性でプロフェッショナルとしてかっこよくて、今のシスカンパニーの作品だなと思った。

三谷さん主演代役の配信も見た。カップルの歳の差がより強く見えるので、浅倉周りのつらさが強くてあさくら!!!この野郎!!!って思った。
設定が変わらず性別だけ戻って変わりなく見られたのはとても良かった。

けど、こんな代役祭りはもうない方がいいなとは思った。みなさん健やかに……。

 

ThankCUE FAN MEETING

氷点下に耐えうるようにスマホ買い替えて眼鏡も新調しました。4年前ファンミに着ていくつもりで買って行き場を失っていたワンピースも無事日の目を見たよ。

取れない行けないのうちにコロナ禍で止まってしまい今回6年ぶりくらいの参加でしたが、やっぱり参加できると独特の楽しさがあるなあ。本当に楽しかった。

事前の謎解きは、適度な難度のところに答えがあったのでそこで満足したら、もう一段階謎があって悔しかった。

本編はいつものわちゃわちゃ企画にフォトセッションなど、感染対策しながら例年のイベントをやってくれようとしていた。お見送りは接触も発話もNGな分、しっかり目を合わせてくれてとてもありがたかった。

 

シスターアクト@愛知県芸術劇場

シスターフッドの、相互理解の話。ここまでいろんなタイプ/年齢の女性が、自由に魅力的に面白い作品あんまり思いつかない。めちゃくちゃ良かったな。

修道女たちのシーンずっと面白くてキュートだった。

あの聖歌隊の曲めちゃくちゃ泣いてしまう。アランメンケン神、これまではそうは言っても知ってるディズニーソングだったけど、知らない曲でもこんなざばざば泣くとは。物語と俳優のパワーを十二分に引き出す楽曲。

くすっとするシーンがかなり好みに合う。修道女たちのシーン全般となんも分からんタクシードライバーとキラキラ神父が好き。神父様はきっと本役の方だとご本人のキャラにあった可笑しさなんだろうけど、スウィングの常住さんのしっとりしたええ声で寄付集めて子羊ちゃんに感謝するのめちゃくちゃ面白かった。


敬虔なカトリックだからシスターに手出せない映画版のマフィアたちが好きだったんだけど、教会でぶっ飛んだ目しながら銃ぶっ放すのもそれはそれで好き。冒頭でJBトミーの「いいか、人殺しは目撃者も殺さなきゃなんねえんだよ(大意)」を思い出した。
本編の呑気と狂いの絶妙なバランスに加えて、カテコのダンス指導で全部持ってった健人くん。カテコ歌って踊って終われる作品大好き。