みなも泳ぐ水鳥も

観劇と他の趣味

2022年見たものまとめ(1~3月)

北斗の拳(配信)

終盤あれだけ愛を知らぬと思い悩む男にわざわざ「我が最愛の弟」って言わせるの本当に好き。強くなって北斗神拳を継承することが自分と弟が生存する唯一の道だったために、元来持っている愛情と究極奥義を習得する道具としての「愛」が紐づいてないんだろうな。

 

今作の個人的ベストアクトは青年ラオウと青年トキでした。

弟を守らんとする長男と自分の力及ばずふがいなく思う弟がいたから、ラオウとトキの関係が映えたと思う。

 

加藤トキのエポっぷり誰も敵わない。でも儚さと兄への想い一本の小野田トキにも囚われている。

対トキは福井ラオウが好き、というか小野田福井の関係が今作の軸であるくらい好きなんだけど、対ケンは宮尾ラオウの畏れとコンプレックスを押し殺してる感じけっこう好きだな。

理生レイ甘さ控えめで好き。りおレイいれいジュウザの方が好みだったかな。
ジュウザ、りおさんは享楽と敬愛、伊礼さんは君も君も好きだけど愛しているのはあなたって印象。あとは楽曲とアクションがそれぞれ好み。

少年ケンシロウ時の蒼くん、そら感情も戻るわなって感じのかっこよさ。
玲奈リンはマミヤの後継って感じ。戦士の系譜。

あとやっぱ"拳王"初登場シーンは髑髏城。ラオウトキケンの立ち位置が天蘭捨。

 

宮尾ラオウ楽、ケンシロウとハグして最後はお姫様抱っこ!!東京楽で大貫さんが見逃してたカテコ登場時のハイジャンプターンもしっかり向き合って見てました。

 

恋人としては無理(配信)
新しい出会いを求めてシリーズ。柿喰う客。
しばらく耳が追いつかなくて困惑したけど、何の話か分かってからは絶妙な分かりやすさと演じ分けに魅力を感じた。突然壁ぶち壊しに来る先輩たちずるい。

 

Japan Musical Festival(配信)

出てない面々のエリザ曲が良かった。

晴香シシィはもうやってるくらいの風格。近い未来に絶対やってほしい。

とんルドはちょっとあると思ってたんだよな。もうないと思うけどやってほしい。

和樹トートは、もうシングルで回す公演地に呼びませんか??

 

リトルプリンス@ビレッジホール
いろんな感情におそわれてぐしゃぐしゃに泣いた。宝箱にしまっておきたい作品。

過去作品の中で1,2を争うくらい飛行士のビジュアルが好きだった。りりか王子がまさに無邪気なこどもなので、彼にいらだったり守ったり心が解れていく様が、兄であり父のようでもある。
狐は楽しそうでキュート、生意気で兄貴面するけど寂しがり屋な面もあって、異種族交流譚に求めるベストな可愛さだった。

 

りりか王子、本当に好きだった。
花のわがままも心から叶えたいし、疑問に他意はない。何より声も表情も見た目も少年そのものだから、最後の選択に胸が詰まるし、カテコの姿に泣く。

 

花のおはなさまが開花して喋りだしたところでまず泣いた。"ぼくの花"すぎる。
まともに登場するのは王子の回想のみだけど、全編通して軸となる存在なのであまりにもベストキャスティング。
一瞬だけど芳雄さんと恋人のお芝居見れたのにもなんかぐっときた。


ヘビがセクシーすぎる。超人的な動きはもちろんながら、声質がザラザラスルスルしてて敬語なのが超ヘビ。
原作でも解釈が分かれるとこなのかもしれないけど、最後まで悪でも善でもなかったとこが好きだった。

 

星々の人たちもキュートだし、黄色い花素敵だし、セットも好き。構成人数少ない舞台が好きだなって改めて思った。

 

一部を抜き出して"名言"って紹介されがちな作品だけど、表層じゃなくて根幹の部分をふくらませて、言葉より先に心で理解できるような舞台作品だった。

 

空鉄砲(配信)
メロメロになってしまった。アーカイブ期間中に配信系で過去最高くらい見た。
役者3人の身体性声表情と台詞回しのリズム感が好き。声と骨格と身体性がわたしのツボ。

 

鳥髑髏が好きすぎて、複数の男の愛憎見るとどうしてもその型で解釈してしまうの良くないね。
ひとりの男を愛した権力者と、寵愛を受けて自分も敬愛を抱く男、自分に割かれるはずだった愛情リソースを奪われて憎み自分のものにして壊そうとする男。それは愛ではないけど憎しみもまた情なので……

台詞的には介凪御幸間の矢印も発生しそうなのに、あくまでも父ありき恋人ありきで、私を愛したあの人がもうひとり愛していたあいつでしかなかった。あったとしても16年間物理的に一緒にいたことによる情。

 

LOOSER2022(配信)
いや〜面白かった。まさに舞台の再構築映像作品。
撮影スタジオで黒子が転換しながら進む、舞台的なギミックと映像に合わせたお芝居のハイブリッド。

やっぱ芹沢鴨と沖田さんが好きで。芹沢さんの最期のシーンは映像で今の安田さんで見られて良かった。
沖田さんの優しくて、それでいて今の感覚でいくと破滅的でもあり繊細で強いところ、あと刀さばき、本当に好き。初めてLOOSER見たときと同じくらい好きだった。
土方/龍馬の冷酷さも輪をかけてかっこよくなっていた。

彼の立板に水の演説の力が龍馬の説得力にブーストをかけると思ってるので、龍馬のシーンもうちょっと多いと嬉しかった。

古高くんが連れてかれるとこ、安田さんひとりで腕しばりあげられて引き立てられるの上手すぎなかった?あんなにマイム能力高いの知らなかった。

冒頭の14のチンピラの言葉遣いと容赦なく暴力ふるうの珍しくて大変良かった。

 

ただ、元作品が作られた時代よりもこれが撮影された時よりも少し未来にいる私は、命を賭して戦うことすべてを讃えてしまって良いのかは考えてしまった。

 

最後の回収も粋で良かったね。

この人のこの芝居が見たい!も、このふたりが相対するのを見たい!というのも、そもそもの物語と企画の面白さも全部叶えてくれた作品でした。

これを書いている現在(2023/8)、未だに映像販売の話が出てないのが信じられないよ。

 

千と千尋の神隠し@帝国劇場
面白かった!あの世界観をほとんど人力で実現していて、舞台芸術だからこその作品になっていてとても良い。
声が原作に寄せている?似ている?人がたくさんいて、ハクリン父とかはかなり似てたし、湯婆婆はどっちのキャストで見てるか分からんくらい湯婆婆だった。
そしておばたのおにいさんは操演の人でも声の仕事の人でもないのに、あの人は何者なんだ??

神様とかハク龍とか身体パフォーマンスの人たちがかっこよかった。河の神様が帰るとこが素敵。
3曲くらいある歌もどれも良い曲でした。
逆にカオナシは著名なパフォーマーを呼んだ割には序盤はそれほど動きがなくて、カエル飲んで以降はどんどん大きくなっちゃうので、単純にもうちょっと見せ場!みたいなシーン見てみたかった。

 

映画を本当に忠実に舞台にしているので物語や解釈が変化することは私はそんなになかったかな。どうやって舞台上で三次元に落とし込んでいるかを楽しむ作品だから、普段あんまり舞台見ない人に広く見てほしいなと思ったけど、席に座るまでのハードルが高いんだよな……。

会場アナウンスをいい声のおじさんにやってもらうの定番になってるね。MonSTARS大活躍。

2024年再演とロンドン公演が決まり、東宝を支えるビッグコンテンツになっていくといいな。

 

冬のライオン@プレイハウス
面白かった!!俳優のタイプも混ぜこぜで衣装コンセプトもばらばらで7人が喋り続ける台詞劇、好きだ。


しばらく誰が誰と手を組んで何を狙ってるのか追ってたんだけど、父母のお気に入りはいても三兄弟とフィリップはくっついたり切ったりしているし、領地王座権力……すなわち愛情だって理解したので流れに身を任せた。パンフで水田くんが言ってるようにそれほど計画的に発言してる人も少ないのかもしれない。


三兄弟だとジェフリーがいちばん刺さった。
ぺらぺらと喋りながらけっこう直球で愛を求めてたのに、両親にはついぞ一度も正面から受け止められなかった。言うこと聞いてくれるからジョンを手札に持ってたところもあるんだろうな。
でもフィリップとは比較的良好な関係を築けていそうなのは嬉しい。ジョンをたしなめるために悪役を振っても面白そうな微笑みで乗ってくれるのは、利害関係の一致が理由であっても、ある程度は信頼しているからなのでは。

歴史上でも名の残る王だけど、今作のリチャードは母の泣き落としにころっと落ちるし、力の差をもって迫った過去のある男が自分と同じ気持ちであると思ってる節があるし、視野が狭め。衣装もなんかこうドラマに出てくる過去のコンプレックスからモラハラ走る男みたいな感じ。
武力には長けてるんだろうけどあんまり謀略に向いてないよね。感情が表に出て嘘がつけないしなんだかんだ人を信用してしまうところがあり、結局"母に愛された息子"なんだろうな。


ヘンリーエレノアが笑いながら腹探りあったり悪態つきあったりするの、周りにいたら本当に迷惑だけど魅力的なふたりだった。
「おい!悪口言ってんだからちゃんと聞け!!」って台詞好き。
本当に迷惑だけど。騙しあって打ち負かすことそのものが目的で楽しみで、もうふたりで勝手にやってろよって思うけど、彼らの競り合いはそのまま国の争いになるからややこしい。

 

フィリップは感情を出さない「ようにしている」のが印象的だった。
まだ17歳で、父のことリチャードのこといろいろ飲み込んで王として生きてきた人なんだろうな。

 

フィリップの部屋で入れ替わり立ち替わりするシーンと最後の地下牢のシーンが好き。
照明が本当に素敵だった。昼になり夜の室内になり朝日が差し込んで地下牢になる、ほぼひとつのセットで時間経過がありありと分かる。
セットがぱかっと割れて舞台の奥行きを生かした地下牢になるのもかっこいい。声が反響して聞こえるのもプロの仕事なんだろうな。