みなも泳ぐ水鳥も

観劇と他の趣味

2022「エリザベート」

@帝国劇場

いっくん、3年前のエリザぶりのはず。歌と芝居が上手い。
育トートは血が通ってる気がした。でも翻弄はされずに、感情はほぼ乱されない。
書斎閣下、ぬーって出てくる登場がホラーのそれ。椅子にちょっこり寄りかかるの可愛い。「今こそお前は〜」のとこ爽やかに遠くを見てて、感情が凪。

ルドルフ死後の育トート、悲しみに暮れるシシィの髪撫でながら可哀想にみたいな表情を向けて、命をあげるって言われても無のまま表情変えずに拒絶してた。最後も大きく表情変わらず、割とシシィへの執着が薄い気がする。
革命失敗してルドルフの軍服以外すべてモノクロになるところ好きなんだけど、閣下の髪の毛も若干色彩が残っててちょっと面白かった。

 

まりンツ、登場から既に涙目。1幕シシィから拒絶されて傷ついた顔したあとに必ず唇噛んで曖昧に微笑んだ顔するの、感情を抑えてるんだな。

やっぱ年1くらいでロイヤルまりおもやってほしい。両軸でいきましょ。

甲斐ルド、割と考えが甘いタイプ。革命中トートにけしかけられてすごい笑顔で先に進むし、シシィにも助けてくれるでしょ?って思ってる顔してた。これまでのルドたちみんな思い詰めて、絶望の方向と程度の違いって感じだったからめちゃくちゃ新鮮。

 

上山ルキ、歌声は煽動者声だけど喋ってないときはただそこにいて見ている人。給仕なら給仕、小間使いなら小間使いでそこにいる感じ。
だから最後スポットが当たった瞬間ぞくっとした。あれ以降の彼は現実のルイジルキーニなんだろうな。

閣下に対してもどこか他人行儀で、上山ルキにとってトートは崇拝の対象でも自分が作り出した幻影でもなく、ずっと周りに漂っていた死の気配なのかもと思った。

マックス、結婚式でずっと心配して最後まで止めたそうにしてて泣ける。ただそもそもお前がお見合いバックれたから代わりにシシィが行くことになってこうなってるんやで、とも思う。

子ルドちゃんも歌が上手い。我ら息絶えし〜からすごい声が飛んでくる。

今更だけど、エーヤンの♪エリッザベーの裏に入るハイトーン鬼フレーズ、あれ2幕の頭に吹かされるの嫌すぎるなと思って聴いてた。

カテコでフランツとルドルフが立ち位置シンメで同じポーズ角度でお辞儀してて、親子で良かった。


御園座
ゆんトートめっちゃくちゃかっこいい。TDと見目がそっくりで分身みたい。いろんな曲でフェイク入れ放題でイケイケ。


ゆんトート×花シシィ、歴史系少女マンガ色が強い組み合わせかな。戦う女に生まれついたちゃぴシシィも好きだけど、宮廷生活の理不尽に開眼せざるを得なかったお花さまのシシィもやっぱり好きだなあ。


まりんつは初めからずっと道を違っていたし、彼女の求める「自由」と彼の皇帝像は相反するんだけど、愛だけは真実なんだよなあ。

ルドルフのお葬式から夜のボート、悪夢の一連が好きすぎる。シシィに寄り添おうとするけど拒否どころか目に入ってすらいない辛さ、夜のボートは対話が成立してるからこそもうどうしようもないとはっきりしてしまう辛さ、我が妻だと絶対に譲らないけど「自由」に目を伏せる辛さ。

初しゅがんつは優しすぎて胸が苦しい。まりんつは完全に宮廷の血の人間で、妻のこと心底愛してるけど「分かったよ(分かってない)」の部分が大きいけど、しゅがんつは彼女が何を求めてるのかわかっていて、見えているけど母に背いてまで状況を変えるだけのパワーを持たない人。

晩年になり威厳が出てからの息子への振る舞いはさすが。それでも妻が悲しみに暮れてなお支えを拒絶すると静かに悲しい顔をするし、夜のボートの慈愛がすごい。悪夢も怒りというよりひたすらに妻を思っている印象。

上山ルキ、狂言回しに徹してる訳でもなければ生前のアナーキストを彷彿とさせる振る舞いをする訳でもなく、たまにこっちに語りかけながらただ見てるのがつい気になって目で追ってしまう。ミルクもHASSもさすがの扇動ボイスで、やろうと思えば全編革命モードでできるだろうけどそうじゃないんだろうな。
悪夢でトートフランツがバトってる間も顔伏せて座っていて、名前呼ばれたらにやっと笑って駆け出して刃物取りに行ってスポットライトが当たる。そこからの独白の声色がそれまでと変わるのぞくっとする。

結婚式のシーンでしか並ばないけど、マックスとゾフィーのお互いを嫌いあってる感じなんかぐっとくるんだよね。結婚式のマックス永遠に泣けるし、ルドヴィカの規範に従いながら娘のことちゃんと思ってるのも好き。

子供好きの女官さんやっと認識した、明らかに周りとテンションが違って可愛い。

 

何につけてもこんなストレスフリーな視界でエリザ見たの初めてだ。御園座コンパクトで2階邪魔が何一つなかった。帝劇が下手の階段も袖口もかなり隠れてたので余計に全部見えるの感動。