みなも泳ぐ水鳥も

観劇と他の趣味

2022年見たものまとめ(6月)

四月は君の噓@御園座
とにかく曲がかっこいい。爽やかな曲も耳に残るし、コンテスタントたちが歌う曲はいつもの戦いソングで、これもまた戦いですもんねと思った。


物語的には、自他を同一視して心の傷をわかって踏み込んでくるキャラがあまり得意ではないので、好きではなかった。自分がエゴだと自覚していて、受け手も分かった上で過去と決別して人生が変わったというお話なので、好みの問題ですね。

ただ渡を巻き込む必要は1mmもなかったね。クライマックスのタイトル回収のところで大々的に宣言されるとさすがに人のことなんだと思ってんだよ、と思った。

物語とは別に、個人的にミュージカルという形態だと台詞劇以上に自分と舞台の間に1枚幕がある印象があって、過去とか海外だとそれがマッチするけど現代日本が舞台だと自分の中の解像度高すぎて違和感があるのかなと思った。検証できるほど現代日本が舞台の作品見れていないのだけど。

 

達成さんの泣きもがく演技が好きなので、突然渡に掴みかかるとこ好きだった。

半分残ったぴよりんを一口でいくふうか椿so cute.

アンサンブルの皆さんがすごく厚くて、人がたくさんのシーンが全部かっこいい。

 

ドライブインカリフォルニア(配信)
松尾作品好みがあるので身構えてたけど優しいお話で好きだった。混沌の中にも光が見えるお話。
河合優実さん好きだった。落ち着く声をされている。
小松さんが演じるどこか欠落している役好きなんだよなあ。

ガイズアンドドールズ@帝国劇場

north-th-east.hateblo.jp

 

パンドラの鐘シアターコクーン
しばらくぼんやり見てて、途中でこれ野田秀樹の戯曲だったとなった。テーマが明らかになってから格段に面白く見られた。


演出の杉原さん、セット組んでない素顔のコクーンが好きなんだろうな。コクーンって搬入口開放する使い方多いけど、開いてるそのときに事故起きたり通行人が気になって見に来たらどうするんだろうと思って見ている。

わかなちゃんは特有のオーラがあって、立場のある女性の役がすごく似合う。幼くてヒイバアとハンニバルに守られてる頃はちょっとキンキンした感じなのに、女王になって肝の座った落ち着いた声に変わっていく。

ハンニバルとヒイバアふたりでお酒飲んでるシーンが自由度高くて好き。
教授が男に詰められてるシーンの気の抜けた教授と硬軟の態度を切り替えながら目的に近づく男が好き。そこから古代に切り替わったときの狂王の迫力がすごい。
王位簒奪の罪で全員集まってからの二転三転と、それぞれの台詞回しと勢いがとても好きだった。

将校の言葉、玲央さんのよく通る声で叫ばれるといっそうつらく響く。けど古代の立ち位置を考えると、それを言うのは彼で良かったんだろうか?それほど緻密にリンクしてるわけではないのかな。

 

関数ドミノ@とよはし芸術劇場
信じれば願いは叶うと信じて生きる方がいいよねというお話なんだけど、そこにたどり着くまでのいや〜なリアリティが面白い。SFというより世界の解釈の話で、ぐわ〜っと広がった展開が普遍的な結論に収束していく。

真壁はその辺にいる否定が染みついた、ともすれば自分かもしれない男でずっといや〜な気持ちになった。

森魚は割と良くあろうとするところはあるけども、弟の恋人に対してあのぐにゃっとした距離感で近づく歪みみたいなのがすごく気持ち悪かった。

弟の恋人がずっと森魚のこと警戒していて、その存在に救われるところがあった。

森魚のぐにゃっとしたところが好きだったんだけど、作品の立ち位置としては、ただスポットライトが当てられただけの普通の人なのかな。基本的に善良だけど下心もあるし、家族が自分の思うようになってほしい気持ちもあるけど自立を決めたなら応援しようと思う、そこそこ納得して生きてるけどもちろん諦めてることもいくつもある人。

願えばなんでも叶う男とその調整で割を食う人なんていなくて、報われたり諦めたり好かれたり嫌われたりしながら折り合いをつけて生きてる人と誰かを特別視して自分の上手くいかない原因を人のせいにする人ということか。そこに環境の違いがない、もしくは後者の方が恵まれてるかもしれない場合、そこには何の違いがあるのか。

理論検証チームのテンションが盛り上がっていくのに合わせて、森魚が神か仏かのように座って光に照らされているのが美しかった。

LOOSER2022 安田さんトーク(ライビュ)
改めて本編が面白い。沖田さんは確かに2004年よりも落ち着いているけど桂さんで現れた瞬間に年齢が繰り上がるように感じる。上演前トークだったので、芹沢は本当にさっきまで喋ってた人か??って思った。土方/坂本は悪い顔が堪能できる役だなあ。

あとリーダーに意図的に人を煽動する役やってほしいなと思った。あの声と朗らかな笑顔を武器と自覚して悪用するところが見たい。

京都でのトーク能楽堂のひとり語りの話題になったんだけど、あれが8年前なの恐ろしかった。そんな前なのか。

 

鎌倉殿 頼朝退場回

範頼さん誅殺回で、これまでの謀略の頼朝さんならラストの「やはり生かしておくべきではなかった」はもっと低く冷たく出たはずで、あのひっくり返るような言い回しはもう違うところに行ってしまってるんだよな。

見たい見たいと思っている大泉洋だった。徐々に狂気がにじみ出て最後には乗っ取られかけている男。

そんな中迎えた退場回。縁のあった人たちに挨拶して、大切な人に思ってること伝えられて、自分の運命を受容したところで終えられて優しい道だった。
北条のみんなと賑やかに穏やかに過ごしてるの見てめちゃくちゃ泣いてしまった。行動にいろいろと思うところはあれど、頼朝本人のことはちゃんと家族だと思ってくれていたんだと思うよ。
かなり憔悴してはいたけど最後まで政治家していたし、女好きも消えないままで、最後まで鎌倉殿で良かった。

当たらない全成さんの出まかせを真に受けて怯えながら結局全部やってしまった頼朝さんの天命が尽きたの、ブラッドブラザーズの迷信の思い込みを思い出した。

 

半年の間、いろんな顔を見せる役を見続けられたの本当に幸せでした。三谷さんのビッグラブだよ。