みなも泳ぐ水鳥も

観劇と他の趣味

2023年見たものまとめ(7~9月)

ファインディングネバーランド

MAOTOくんと星さんにメロメロになった。星さんの浮くくらいの良い声が活用されてた。MAOTOくんの愛され舞監もキュートで動き全部にキレがある。

子供たちが本当に可愛い。しっかりしたお兄ちゃんたちから可愛い可愛いマイケルまでそれぞれ良かった。

武田真治はいつまでも若い兄ちゃんみたいなイメージなんだけど、今回の劇場主は背負うものが多いけどかっこいい大人の象徴で渋くてかっこよかった。フックもさすが本役経験者でかっこよかった。

バリの妻とは志向が合わないだけでちゃんとした人だったから、少年の心は結構だけど大人は責任も伴うんだよって思って見てたんだけど、バリのずるさにフックが重ねられて出てきたので、意図的なんだなと思った。

1幕後半でバリの障害として描かれる大人たちが悪者なだけでないのは良かった。

Playすごく好きな曲。バックステージのシーン好き。

食事会の笑いは合わなかったかな。フック誕生の前だからあれが良しとされてるわけじゃないかもしれないけど、あれが「少年の心」なら大人でいい。

終盤がっつりピーターパンやるからびっくりした。ダンスが美しいピーター&ウェンディもすごく良いですね。ティンクを応援するくだりは本編ピーターパンでもやるので、改めて誕生物語の少し後に作品そのものが見られるのいいスケジュール感だなと思った。

 

水曜どうでしょう 新作公開ライビュ

新作面白かった!!好みは人それぞれだろうけど、私がどうでしょうに求めてるのはだらだらしたトークとハプニングなので、すごく満たされました。やっぱどうでしょうの洋ちゃんは可愛い。

洋ちゃんも会長も私服がめちゃくちゃ可愛かった。あとふたりとも脚が綺麗。

洋ちゃんのリサイタルも解禁。「あんたもう50歳に武道館やりなさい!あたしはそれ見て引退するから!」って社長に言われて決まったらしい。進退の真偽は不明ですが……。(横で会長が「え〜弊社どうしよう……」って言ってた)

 

カラフル

子どもの頃に読んでた原作なんだけど、そのときの感情が増幅してよみがえってきた。

客席の天井が青空で素敵だなと思って見てたんだけど、どうやら世田パブの元々の天井らしい。これまで見上げたことなかったな。

 

もう学校という組織の閉塞感からは距離を置けたけど、家族パートが刺さるようになってきた。
彩乃かなみさんのお母さん、歌からあふれ出てくる感情で心が揺さぶられる。あとアルゼンチンタンゴがめちゃくちゃかっこいい。百名兄は、自分も思春期で言葉足らずだけど家族思いのお兄ちゃん。悪夢のシーンの身のこなしが軽やかで美しい。TJは、明るくて強いパパが似合う。けっこう壮絶な人生だけど、あのまったりした穏やかな笑顔を絶やさないのは救いだろうな。

菊池さん、ひろかちゃんより少し上くらいの子だと思ってたら、りりかちゃんに次いで大人でびっくりした。不安定な中学生そのものでした。今上演するにあたって、ひろかの描写がこれで十分かは難しいなと思うけど、中学生の真にできることは居場所をつくることくらいなのかも。

りりか唱子、登場時間は長くない中でインパクトが強い。ぼそぼそした喋り方にパワフルな歌唱、最後の吐露も胸が苦しくなる。

リアル同級生という福くん陽彩くんの組み合わせ、すごく平和でキュート。早乙女くんの穏やかさは救いだった。

天使の皆さんもよくお見かけする人多くて嬉しかった。1フレーズずつソロもあり。最後の唱子の語りの中で、加害者として登場する彼らも苦しそうでつらそうなのがすごい演出だと思った。

最後プラプラと真が言い合うシーン。小さい誤解が積み重なって真意が伝わらないこともあるし、ガイドのない人生に付きまとう不安は消えないけど、もう少しただそこにいてみたら、長めのホームステイのつもりでやってみたら、のメッセージにいろいろなことを思い出して考えた。

プラプラがメインキャラのメインの曲をワンフレーズずつ歌って彼らを振り返るの、そして最後に真がプラプラの曲歌って親愛の情を示すの、おしゃれで素敵。

今作で出演者が口にする食べ物が基本的に本物で、すき焼きのシーンとかすごくいい匂いが漂ってくるんだけど、これプラプラの最期の記憶である夕餉の匂いにかかってるのかな。

地上に降る雨によって真っ白なセットがカラフルに色づくの本当に印象的なラストだった。


オリジナルミュージカル、アニメ漫画路線もあっていいんだけど、小説原作も増えていってほしいな。見た目を再現するとかしないとかの話から離れられるし、1本の作品にまとめやすいんじゃないかと思うけどな。

あと年々体力がなくなっていくのを感じる。もうちょっと短くなるかどこかで休憩入るかの方が個人的にはありがたい。


ピーターパン
楽しかった!演出がめちゃくちゃ好み。

ダーリング家で展開される1幕は、影がめちゃくちゃ好きだった。

2幕始まった途端、別世界のネバーランド!!でっかい人魚と骨の龍と鹿がかっこいい。衣装も特徴的で、ストリート系のロストボーイズ、中華服の海賊に、呼称が変わって特定民族イメージじゃなくなったモリビト、とカラーギャングな様相。その彼らがそれぞれのダンススタイルでとにかく動く動く。ワニは影絵で表現されててすごくかっこいい。

3幕は小野田無双だった。ピーターとフックの殺陣ががっつりある。
めちゃくちゃ笑いをかっさらうんだけど、自由度は高くても根幹のトゲは外さない船長。優勢で盛り上がる味方に向かって刀振り回すフック、自分しか大切にできない小さくてずるくて悲しい男だな。

魅惑的に響く低音からコミカルな高音まで、声がとにかく魅惑的。最後のダーリング父が前髪おりてて憔悴しててきゅんだった。

玲奈ピーターは少年!そのもの。タイガーリリー救出後に「別の声」って言われて、綺麗な高音で歌うピーター。最後みんなが戻ったあとの複雑な表情が印象的だった。

カテコ、2階でフックコスの少年がスタオベしてて、船長から「お、なんか似てるやつがいるぞ」って認知もらってた。

 

ハリーポッターと呪いの子

1年越しの藤原ハリーリベンジ+初の玲奈ハーマイオニー

アルスコが初見時と同じペアで、完全に好きになってしまった。門田スコピの台詞回しがずっと好き。前も思ったけどアルスコのラストのやりとりはクィア的表現だと認識した。

待ちに待った藤原ハリー、感情表現が苦手で最後まで息子にはぎこちなくしか喋れない父で愛おしい。執務室に来たダンブルドアと話してるシーンで、愛を受け取れなかった息子の顔が強く出てくるのすごく好き。ポリジュース薬とか「がんばってふざけよう」としてるとこの自由度高い。

玲奈ハーマイオニー、めっちゃ好きだ。私の知ってるハーマイオニーが大人になったそのまま、ハキハキしてて強くてキュート。デルフィーがinしてるときの喋り方が全然違っていて可愛い。

たーたんさんどちらの校長もすっごく好きだった。マクゴナガル先生はハリがありながらも威厳と慈愛のある声で、アンブリッジはツヤッツヤあまあまのキュートボイスから恫喝声まで幅広い。

よく考えると、あのマルフォイ家の一人息子があんなにすくすくとハリーポッター及びその周辺の魔法界の歴史オタクに育ったの、本当にドラコパパは否定せずに愛を注いで育てたんだろうなって思うよね。

ようやく出てくるセドリックの声と喋り方があまりにもまっすぐで、そこまでの展開も含めてすごくぐっときてしまう。最後まで正しい正義の人。

運営に思うところはあるけど、著名な父とその息子の物語を、有名俳優と新進の若手で演じるって構図はすごく刺さるものがあるなと改めて思った。

 

スクールオブロック

とにかく楽器班の子供たちが最強だった。ギターソロ聴きに来てもいいくらい。コーラスもサポートスタッフの面々もみんなそれぞれで素晴らしい。個人的にはキーボードのローレンスととんがった衣装センスのビリーが特に推しでした。

 

デューイ、下品でめちゃくちゃではあるけど、音楽を愛していて歴史も理論も詳しくて楽器ができたりサポートスタッフできたりする生徒たちをリスペクトするし尊重するし車の運転も丁寧にするので、破天荒ストレスが少ないんだよな。
デューイと校長がバー行くとこの、めぐさんの絶唱と後ろで受けてうなずいてるお芝居がとても良い。あと保護者会で生徒たち褒め称えるところ。やっぱああいうエモーショナルな感情の発露が好きだなあ。

自作の曲聞かせろって言われて渋々歌い始めるところ、発声練習で早口言葉言うんだけど、母音法やっていてめちゃくちゃ笑ってしまった。どこかの劇団の教育を受けていそうなバンドマン。あとなんかの場面でデューイが校長に「~~メリーポピンズだ!」って言うとこあるんだけど、あれは元々かな。

技術担当のメイソンが校長にハグしに行くシーン、メイソンやってるのが去年メリポピでマイケルやってた中込くんだったので、なんかメタの感情も上乗せされてめちゃくちゃぐっときてしまった。

先生たちに「デューイが従来のやり方を守らない!でも生徒が笑顔になっているのも事実……何か我々が学べることはないか」みたいな曲があったの良かった。抑圧が目的の存在じゃなくてちゃんと生徒のためを思っている人たち。女の先生が校長鼓舞するシーンも好き。

コンテスト主催の神田ジェフかっこよくて好きだった。生徒たちの迫真の芝居(デューイに抱っこされるメイソン?の脱力具合がめちゃくちゃ好き)に押し切られるいい人。なぜか1幕終わりに生徒とデューイに混じって歌ってくれるジェフ。

映画がどうだったか覚えてないけど、生徒の家庭もお金持ちばかりじゃなくて多様なのも良い。男性カップルが両親の家、技術職の父がなんとか通わせている家、勉強じゃなくてフットボールこそ"うちの男"な家。

 

闇に咲く花

いのうえひさし、それほど何作も見てるわけではないんだけど、戦前戦後の日常から戦争を描く作風が面白くてつらい。神道をめぐる問答がすごく興味深かった。
直球のメッセージの作品でほっとするというかこういう作品が続いていてほしい、と思う世の中にどんどんなっているな。
浅利陽介まっすぐな男が永遠に好き。マッカーサー側の高官の方、声がかっこよくてアップで見てしまった。

 

ラグタイム

north-th-east.hateblo.jp

 

アナスタシア

north-th-east.hateblo.jp

 

スリルミー

north-th-east.hateblo.jp

 

2023「アナスタシア」

2020年、いちばん初めに消えたチケットでした。念願の再演に推しまで参加が決まり、山本グレブへの気持ちも残りつつ、もう念願も念願の再演!!!
本当に楽しかった!!! 好きな人しか出てこん、全員歌がおそろしく上手い。


・木下アーニャ/海宝ディミトリ
海宝ディマ、恋の擬人化だった。海宝先生あの諦めた笑顔で身を引くの似合いすぎる。本物のジャスミンに本物のアルを幻視した。やればできるの歩き方教えてるときの真剣な顔が好きすぎる。

My Peterburgがもう本当にキラキラで力強くて最高。海宝先生の声は細かいパールみたいな輝き。

はるかーにゃ、意外と強いしどんどんいろいろできるようになる説得力がある。ずっとキュートでタフ。早い段階で本当に皇女かもって思った。


・木下アーニャ/内海ディミトリ
めっっっちゃ良い!! 歳の近い2人の気安さで、はるかアーニャもくだけてる感じでめちゃくちゃ可愛い。

In a Crowd of Thousand、小さい奇跡に震えるくらいの感動がある。

このふたりは通常で身長同じくらいなので、トランク乗るとアーニャの方が全然上からの体勢になってすごく好き。


・万里生グレブ
キャスティング聞いてからずっと勝手にラドゥーだと思ってた節あるので、誠実で可愛げもあるキャラ造形なの驚いた。あとずっと声でっかくて面白い。

アーニャが自分の人生のしこりを溶かす鍵だったんだな。常にアーニャに対して誠実であろうとしているように見えたのでとても好きだった。

万里生グレブは、子供を撃たざるを得なかった父と撃たなくてよくなった息子なんじゃないかなと思った。革命は起こるべくして起きたとして、その手段は必ずしもそうでなくてもよいはず。最後晴れやかな表情だったので、きっと生きていける。

アーニャに対してはあくまでも道で出会った親愛なる同胞で、嘘なら道を踏み外さないようにもし本当なら名乗り出たらここでは生きられないという心配と忠告が強い気がした。恋とも執着とも違う感じ。

グレブ登場がけっこう鮮烈なので(サイゴン3年後のトゥイみたいだと思った)、出てきた瞬間に歓喜に満たされた。背中向けたグレブと鏡合わせで動き合わせるディミトリのカットがめちゃくちゃ好き。舞台写真欲しい。

白鳥の湖の海宝直人vs田代万里生、会場がびりびりびりってした。音圧。


・海宝グレブ
革命に救われたかつての少年で、優しかった父が行ったことと自分が見たものにとらわれて生きてる青年。繊細さが強い分、私は恋心も強めに感じた。

ずっとつらそうだった。皇族の子供たちが連れてかれるのを目撃したのが心の傷で、でも「父の息子」でいるために同じことをしなければととらわれている。

 

これは、そりゃ万里生グレブ怖いって言われるなって理解した笑。でもあれは単純に愛情の示し方の違いというか 怖がらせたいわけではないのだと思うのよ……。

 

ヴラドは禅さんのみ。ずっとキュート。それでいてディマの父代わりでもありそう。出会った時系列的にそこそこ大きくなってからっぽいけど。

朝海リリー素敵!本物の貴族の品がありつつ、浮気もするし日々酒に溺れるしキュートだった。皇太后に向けては適度に気持ちは寄せつつ、まあ仕事は仕事って感じかな。

堀内リリー、めちゃくちゃキュートでめちゃくちゃおばちゃんですごく好きだった。禅ヴラドとのやりとりめちゃくちゃ可愛い。


背景映像も、ちょうど舞台と馴染む写実具合でとても素敵。My Peterburgの運河の背景が好き。盆3つによる転換もスムーズかつちょっと仕掛け絵本みたいで好きだった。

太平洋序曲で好きだった面々がアナスタシアでもご活躍で嬉しかった。この人好き!って思ったら大体むらむらさん。あと武藤さんイポリトフ伯爵の儚さ。わが故郷に愛を、本当に好きな曲だった。

バレエが本物だったり、細部まですごく好きな作品でした。

また見れますように。

2023「スリルミー」

■松也私×廣瀬彼

見るたびに印象が変わっていく、噛み応えのあるペアでした。
初見時に衝撃で足を取られ、気づけばそこそこ追っていた。


@シアターウエス

廣瀬彼なにごと???? こんなに彼ばっかり見るの初めてくらい彼から目が離せなかった。
頭からずっと心が抜け落ちてるみたいな喋り方、かと思えば子供みたいな受け応えをすることもある。あとかなり明確に前方席の客の目を見ている場面があって、私も冒頭で煙草吸う彼と目が合い続けていた。めちゃくちゃ怖いし動揺した。

でもやっぱりあの彼にたくさん友達いる??あんな怖い人なかなか近づきがたくない??ずっと心壊れてる顔してるけど、少しだけ表情が緩むのは火と刃物を見てるとき、あと私が彼に執着を見せているとき。

スポーツカーも、たぶん彼が想定してるのと違って、最初からずっと怖い。ほぼ脅しだよ、その子供用と思しき声色がむしろ怖さを増長させてるよ。

松也私は2014CDのじめじめべたべたした印象と違って、優秀でおとなしい青年って感じ。いや、レイくんあいつと仲良いの?まじで?って思ってる同級生の人格出てきた。

ラストは愛よりどちらかというとバトルの勝利って感じ。

事前に感想で散見していたけど、わたしも「廣瀬彼 ハンマー」で検索した。

拘置所に連れてこられた彼が入り口で肩どんって押されてよろけるの、めちゃくちゃリアル。総じてマイムがうまくて美しい。あと最後後ろ向きに階段上る彼も美しい。

松也私の倒れ方も好きだった。冒頭私をドイツ語で押しのけるとこで膝曲げずにゆっくり倒れたり、「うちは最近親父がケチで」で押されて階段に座り込むとか。

カテコ5回目退場時に廣瀬さんがセットの梁ぽんぽんってやりながらかがんでくぐっていったのきゅんだった。高身長がちな彼たちあそこ危ないよね。


@サンケイホールブリーゼ

初見時よりもかなり人間だった。もちろんお芝居を変えているところもあるだろうけど、スリルミーという作品が、白い絵を見て何色が見えるか人によってもタイミングによっても違うみたいなところあるよね。

今日の廣瀬彼、大人になり損ねた青年っていう印象。時々飛び出す不釣り合いに幼い言葉遣いだったり時が止まってる部分がある感じがした。
私のこと好きかはわかんないけど、私が自分のこと好きなのは好きで、私が自分に執着を見せてるときに表情が動く。

元々家庭環境でギリギリで生きてて、私との不健全な関係でバランス取ってたのに、契約とかいうしばりを自分で持ち出して私の望みも叶えなきゃいけなくなってバランスが崩れたように見えた。着衣乱れたまましばらく止まっているのが苦しい。5分心を飛ばしながらどこかにたどり着いてしまったのか。

僕の眼鏡以降の松也私めちゃくちゃ好きだな。積極的に介入してるわけじゃないけど、電話で何をどう言えば彼がどう動くか分かっててコントロールしてる感じに見えた。
取り調べ後、公園で彼に胸ぐら掴まれてもまったく視線を外さない表情崩さないのが強い。

取調室で、脅して非難して恨みごと言って色仕掛け泣き落とし。
レイって呼んでほしいってわかってるから呼ばなかった彼が、説得のために名前を連呼するのが浅ましくていつも好き。留置所のキスを早々に止める私が冒頭の彼のリフレインで、立場が逆転してるのがわかる。

Afraidの廣瀬彼、精神的にも身体的にも閉塞した状態が苦手なんじゃないかと思わせられて、見ていて苦しい。もちろん自業自得ではあるんだけど。

ラストは、バトルの決着と関係の変容。
私は愛ゆえというよりいつも彼がやっていたゲームの延長という温度感だけど、彼は私とその関係が不可逆に変わってしまったことを思い知った哀しみを感じた。
そこの感情のずれがとてつもなく好き。

階段あがっていく彼が美しい、永遠のものにしたい。


@ウインクあいち

思えば前楽まで来ていて、ノーガードのときにこそやられる説をまた立証してしまった。

彼はかなり「友達が多い人気者」に見えたな。ニーチェの誤読を語る姿が堂々ときらきらしてて、この彼はけっこう本気で信じ込んでるんだって思った。
最後の「俺がなりたいのは~」につながる印象で、こんなことになってなければ、正義かどうかは怪しいけど勝率のすごいカリスマ的な弁護士になってた気がする。

松也私も落ち着いていて、後半彼の脅しにも全く押されないので、頭脳バトルの色が強いように感じた。
護送車で真実を聞かされてどんどん憔悴していく廣瀬彼が美しい。♪君を認めようで哀しそうに笑うんだな。やっぱり私のことが好きだったとは思えないんだけど、私の"愛"を変質させた哀しさはあるのかな。

何で相手のこと好きなのかは分からないペアだけど、3ペアの中でいちばんべそべそに泣いてるのが松也私なので、好きなもんは好きということなんだろうな。
彼からの気持ちが得られないからなお執着してしまったのはあるかなあ。他2組はともすればふたりで生きる道が見つかったかもしれないので。

彼の方も恋慕じゃないかもしれないけど、毎回♪こんなに君を求めてるのに〜で顔歪めて微かに笑うので、少なくとも私に求められることは彼にとって特別だったんだとは思う。

 

スリルミーは四季くらいカテコの止めどころがわからない。
3回目くらいでハグというかお互い横抱きみたいな、松也がぎゅっとくっつく。そのあと正面からハグ、直前で止まって顔寄せてキスする?しない??をやってちゃんとハグ。
今年の彼たちは役抜けが早いっぽく、切り替えられるタイプのカテコ多かった。


@配信

収録はおそらく自分の初見より前の東京序盤なんだけど、そう思えないくらい彼の感情が見えるので、やっぱり客側の状態で見るたびに味が変わるタイプのペアな気がする。
私は前半から実のところ余裕があるのが垣間見えるし、逆に彼は苦しそうで可哀想。

スリルミー(曲)の間ずっと余裕がなさそうで、見ていて苦しくなる。廣瀬彼は私に求められている事実が好ましいので見せつけるようにジャケット脱ぐんだけど、それと同時に私含めた彼にまとわりつく全てに首を絞められてるみたいな切迫感がある。

♪そして僕の目を見てのとき、指で目ガッってやる松也私が強い。あんなのやってたの初めて気づいた。あんなやつが言いなりの弱気おどおどなわけないだろうよ廣瀬彼。

計画で止めようとしてるときの松也私が本当に心配してる顔してて、少なくともあの時点ではちゃんと止めたかったんだろうなと思った。

スポーツカー、ちょっと自分の世界に耽ってる間に逃げられそうになって♪僕たちともだちで物理的に捕まえてて怖い。

公園での喧嘩でめちゃくちゃ落ち着いてる私、戻れない道でぼろぼろ泣いている私、取調室で菩薩みたいな顔してる私、見れば見るほど好きだった。本当に彼のこと好きで、止められなくて、裏切られて、"勝負"に出たんだろうなと思った。

廣瀬彼、父親に顧みられず、ともすればもう少し家庭環境が悪いように感じるので、自分個人を求めてくる私をどこか拠り所にしているし、突然いなくなるのも「他の奴はこんな面倒なことしない」も試し行動で私の執着を引き出してるんじゃないかと思った。

まったくの脳内設定だけど、途中から廣瀬彼は父親から虐待を受けていたと思って見ていた。
しつけと称して狭くて暗い部屋に閉じ込められたことがあって、閉所恐怖症の節がある。弟はただ愛されていたという気持ちだけで、強さで言ったら弟へのコンプレックスより父そのものへの感情の方が強い。

閉所恐怖症の印象は確実にAfraidのマイムの上手さに起因するものだと思うけど、特定のこのシーンがというより、あんなに見目麗しくて体でかくて強そうなのに、ずっと瞳が揺れていて不安定なところがつらくて引き込まれる彼でした。

 

 

■達成私×公輝彼
役者的にもいちばん楽しみにしていたペア。
自分の観劇の間が空いたのもあって、最初と最後で全く物語が違うように見えた。


@シアターウエス
すごく見たいタイプのスリルミーだった。過去最高レベルに会話が成立している。
達成私は本当に彼のことが好きで、公輝彼もちょっと悪癖はあるけど明るい人気者で、普通にちゃんとカップルだったんじゃないかなと思わせるふたりだった。
これまでにもカップル路線はいたけど、もっとヘルシーでステディなカップル観でこの作品って成り立つんだって驚きがあった。

達成私ずっと本当に恋をしている、恋人を見る顔してる。もっと怖い系に振ると思ってたけど、シンプルで筋が通っていてすごく好きだった。

公輝彼は、冒頭しばらく持ち前の善良さがにじんでいて、彼にしてはまともすぎないかと思ってたけど、空き巣くらいから表情がゆがんできて、普通の大学生が道を外すっていうルートを見た。父へのコンプレックスが強くて、直前に父親か弟がらみの嫌なことがあって、むしゃくしゃしてるとこに私と口論になって積み重なって一線を踏み越えてしまった感じ。

脅迫状も嘘の証言も留置所もちゃんと私の発言を受けて会話をしている彼で、お互いにちゃんと「放火はしない」とか「今は本当に嫌だ」とか止められていればあるいは……と思ってしまった。

死にたくない、元々めちゃくちゃ期待してたけど、期待以上に超良かった。良かったし♪怖いんだって聞いた途端に寝たふりやめてニコォって笑った達成私が本当に怖い。

でも裏切られてなければ、達成私はふたりの人生のためになんとかしたと思う。その「なんとか」が彼の望むものかは微妙なところだけど。

このふたりは身長差がほぼないのも良かった。でかいのにおどおど……きゅるる……ってしてる達成私。

カテコで徐々に役が抜けていく達成とすぱっと元に戻る公輝くんの差も良い。

やっぱり公輝くんのフラットで間をコントロールするお芝居が好きだなあ。映像忙しいのは承知の上で、今後もいろいろ舞台出てほしい。


@ウインクあいち
ずいぶんパワーバランスが変わっていた。達成私がえらい怖くなっている。

公輝彼は、事件の前後で変わっていくというより、明るくて付き合いの良い人が破壊衝動に乗っ取られると暴走する感じに見えた。
計画のときのスイッチの入りっぷりがすごい。♪別の誰かを、の「てめえが止めるからこんなことになるんだぞ」みたいな感情をにじませる言い方。
超人のラスト、東京でも興奮で息が上がってたのが印象的だったけど、それを通り越して声出して笑っていた。

戻れない道の♪信じ~て~た、達成私は目見開いて微笑みながら歌ってて、この人にとっては「いつまでもふたり 永遠の時間」が至上なんだなと思った。

取調室で♪命尽きるまで~を同じ顔で笑ってるの見ながら、このとき彼も「死ぬまで契約守る」って言っちゃってるんだって今日初めて気づいた。
なんなら、この達成私はそれを言わせるために自分にすがらせたのではとまで思った。

Afraid、彼が独白し始めたときは目見開くだけだったけど、最後絶叫してるの聞きながらすごく邪悪な顔で笑っていた。そのあと53歳の窓の下に移動するときも同じ表情のままで、立ち上がるとめちゃくちゃでかいので、うずくまる彼を取り込もうとする悪魔に見えた。

 

■松岡私×山崎彼

@サンケイホールブリーゼ

21年のチケット消えて配信でしか見れなかったので、劇場で見るの初めて。

相変わらず速度の緩急がすさまじくて、キラキラを感じるピアノとすごく合ってる気がした。

21年はもう少し刹那的な関係の印象だったけど、今年めちゃくちゃ幼馴染。頭の良さを隠さない私で力関係が冒頭から私 > 彼だし、彼も恐怖政治を敷くタイプじゃなくて、若者の愚かさで走ってる感じ。

あの速度で進みながら、芝居がすごい細かい。弟へのコンプレックスとか「分かっててつついてる」のがわかる。

"超人"の彼の仮面が崩れてひっくり返るのが定石のお話と思うけど、この彼はずっと何かやるたびに私がフォローというか尻拭いしてきたのではと思わされる。意外と今までいないタイプでは。
こんなにふたりの関係が変わらないまま迎えるエンドが新鮮で面白かった。

前回「○○に似てる」とか「誰それっぽい」とか感じたところがなくなって完全に独自路線で素晴らしかったんだけど、それはそれとしておさまらないカテコの対応が成河すぎて良かった(三方に手向けて胸のところで小さく手合わせる、前屈せんばかりのお辞儀)

 

 

2017年版以降しか見ていないし、初見時はそこまで考えて見てないから昔からかもしれないんだけど、スリルミー(曲)における私の加害性の観点って前回のまりお私以降強くなってるのかな。柿彼も福士彼もあんまり感情が表出するタイプじゃなかったから余計にかな。

物語がひっくり返る意外性の松柿と、周りがなんと言おうとふたりにとっては愛のにろまり、初演ペア2組が再演しながら、別路線の成福が生まれたり、また新たに違うバランスのペアが生まれてくるの、演劇作品としての強度がすごいなと思う。

2023「ラグタイム」

3つの人種の物語という触れ込みだったけど、白人の中でも階級や男女のしばりがある描写が現実だった。
金銭に余裕のある男は露骨に表には出さないけど移民と握手はしないし、妻への"こうあるべき"がある。おじいちゃんが最初かなり抵抗ありそうだったのに、なんやかんや馴染んでいくのも良かった。貧困層は自分より金を持っている他人種が許せない。

ターテの映画のシーンとラストで、いろんな服の人が混ざって踊ってて素敵だった。のだけどやっぱりターテのストーリーが他と絡まない意図が掴みきれなかったのと、ラストもえ~~ってなった。昔の作品だからかもしれないけど、今なら家族にならなくても多民族が手をつなげるラストが見たいかも。

 

最後の図書館のシーンが本当に好きだった。
もちろんコールハウスの選択は間違ってるけど、明確な差別主義者だけでなく警察や裁判所の消極的無関心と偏見による過剰な警戒で大切な人とものを奪われたとき「正しい指導者」が救えるものは何か、そもそも黒人が救わなければいけないことなのかを考える。
説得されて自分だけで引き受けることを決めた表情、抵抗するヤンガーブラザーに泣きそうな笑顔で「大丈夫!」って言う、他の仲間にも笑って肩抱いて送り出すところが真骨頂。"リーダー"としての表情が苦しい。歌詞聴いてると、自分でも「賢い戦い方」ではないことはわかってるんだよね。でもあの時の彼にはそれしか選べなかった。

ファザーと2人になって息子のことを聞く口調と「やっぱり僕は殺されるのかな」の声と表情。ワシントンは公平な裁判を約束すると言って降伏を取り付けて、お父さんも(自分の命の保証も込みで)そんなことしないと信じたかったんだろうけど、それを守らないのが個人の集合たる"社会"なんだよな。(実在の偉人だけど少なくとも今作の)ワシントンは、自分が交渉役として立ち合い説き伏せて条件として公平な裁判を約束した同胞が目の前で狙撃されたのどう思っているんだろう。どれだけ「寛容と忍耐で乗り越えて」名声を積み上げても、結局軽んじられるのではないかと思うと、ただ道のりの長さを感じる。

作中でいちばん変わったのはファザーかなと思う。コールハウスとの対話がすごく良くて、これを川口さんと芳雄さんで見れているのがすごくありがたかった。

でもファザーは戦争であっけなく命を落とすし、ブロンド美女は美しさだけを消費されるし、大公さんへの注意は間に合わない。そうそう世界は変わらない。

 

サラへ通いが通じたあととか回想シーンとか幸せなシーンのときも好きだった。Wheels of a Dreamの希望に先のことを思って泣いた。背中合わせで向かいにいるようなサラとコールハウスのダンス、綺麗で切なくてつらい。

 

コールハウスの元に来たヤンガーブラザーの歌がものすごく良かった。元々紗がかかったような素敵な声質だなと思ってたけど、その質感はそのままにばんばん声が飛ぶようになっててすごい。

決意を固めてしまったコールハウスを見ながらヤンガーブラザーがべしょべしょに泣いていて、最後の退出の仕方も含めて彼は守られる存在だった。それは最後まで本当に仲間にはなりようがないところでもあるし、ここまで心を寄せてくれたことへの感謝でもあるのかな。

 

ネガポジ含め「髪パーマにしたらいいのに」って感想を見て、ファンデの色の延長の話なのではと思っていたけど、やはりもともとかつらつけるはずだったところを、もうこれもいらないんじゃないかということになったらしい。自分そのままで他の人種を演じる中で、じゃあ肌や髪の違いってなんだろう、と考えたとのお話もあって、今回の演出が完全な正解ではないと思うけど、カンパニーも観客もアジア人が多くを占める中で、考えるきっかけにはなったと思う。

それ以外にも感想見てたら「差別主義者がいるってわかってて行ってるから自業自得」みたいなことを強い口調で言ってる人いて、そう思うのは仕方ないとしても(たしかに行かなければ起きなかった出来事ではある)、通しで今作を見て感想としてそれを出力できるんだと思って本当にすごく落ち込んだ。あそこは差別主義者がいるから仕方ない、別の道を通ろうという判断を被差別属性側がするべきだったって、感想として普通に言っちゃうんだって。本当に「私たちと離れた遠い国の昔の話」と思って見れる人もいるんだって思って、道のりは遠い。

 


藤田さんは毎度当然のようにいらっしゃった。開演前駆け込んだら逆に前から歩いてきてて道譲ってくれたし、普通にいすぎ。
9/23マチネ、2幕の野球シーン直後に舞台機構不具合で一時中断して、直後にプロデューサーが出てきてご説明があった。何事もなく復旧して良かったけど、プロデューサーが表に立って説明してくれるの珍しい気がした。

2023年見たものまとめ(5~6月)

キングダム(配信)
面白かった!すごく良い大劇場の漫画原作舞台だった。終わりの暗転が美しくて、あれは劇場で見たかった。

 

キャストの若者とベテランの配置が見事。

みうちゃんの主人公力がすさまじい。東宝が新しくやりたいことの軸になるのわかる。
そして私は牧島くんのことがかなり好きだな。声色多彩で、漂と政で全然印象が違う。もっとふんわりした印象があったんだけど、今作では名君になる青年の精悍さがあった。

やっぱり祐様の声で登場すると面白いんだよな。原作があんな感じなのか詳しくないけど、ミームとして見かける印象にはかなり合っていたのでは。

壁と昌文君がキュート。ふっと緩むシーンも熱いシーンもふたりともすごく好きだった。昌文君が王騎に「あなたがひとりでバカ熱くなってる理由が少しわかりましたよ〜」って言われる理由がわかるのがすごくよかった。若手とベテランの間に立つ、若き王にかける男。

ゆっくん左慈も見たい気持ちもあるけど、あのくらいの年齢の左慈が見られてよかった。温度のない人斬りとしての存在感がすごかった。

王弟の方が新納さんの嫌な役を彷彿とさせる。あの手の役が上手い俳優が好きだ。片眉だけあがる表情とちょっと癖のある声が好きでした。

カテコで子役を抱き上げる主演ふたりの横で、貂の頭ぽんってしてた昌文君がきゅんすぎた。

全体のパルクールも殺陣もかっこよかった。ただ、芝居強めのシーンの戦闘の無音はたしかにちょっと気になった。北斗の拳のときも思ったけど、打撃音入れたらだめなんだろうか。

甲乙という訳ではないけど、「新感線みたいだなあ」「新感線だったらここで拍子木鳴るなあ」って見ながら考えてしまっており、国産アクション活劇における新感線の型って唯一無二なんだなあって思いました(さらに元は歌舞伎だけど)。

 

歌舞伎家話(配信)
松也×柿トーク。気の置けない友達なんだろうなという感じでとても楽しかった。

2014スリルミーで松下松也柿澤のご飯会に万里生くん来たけど10分で帰った(理由は不明)の話。用事あったのか嫌だったのかはわかんないけど笑、2015年エリザの稽古場でIMYたちがかしましすぎてお花様の元に避難していたよしまりのこと思い出して微笑ましい気持ちになった。全然タイプは違うけど、酔っ払ったら電話する程度の交流はあるかっきーと万里生さんのことけっこう好き。

漫画原作演目でトライアンドエラーの話。すごく上手くいった作品もあるし、出来はよくなかったのも目指すものは正しくて、エラーのプロセスも大切、って表で言い切れる人は素敵だなあと思いました。

かっきーが長唄興味あるって言った途端に「清元もやろ!全然関係者と繋ぐし!てか俺が繋がなくても周りにいっぱいいるよね!!舞台に立てとは言わんからけんけんと3人でなんかやろ!!正座嫌なら椅子作るし!!」のテンションになった松也さん、本職に向かって言うことじゃないけどオタクの熱量……となって愛だった。

初めて歌声聴いたときにDNAを感じたって言ってて、プロが聴いたら本当にそうなのかもしれないし、最近血縁主義について思うこともあり、でも自分もこういうエモに弱い自覚もあり、いろいろ考えながら聞いていた。

蜷川さんの時代を感じるエピソードの流れでロミジュリの話になると歯切れが悪くなるかっきー嘘つけなすぎてラブい。

今年のスリルミーの話。38歳が大学生やります、他は20代なのに、でもこの前新納くんが出てたんだから大丈夫だねって廣瀬さんとふたりで喋ってたって言ってて、かっきーが笑いながらおい!ってつっこんでた。新納さん本人もネタにしてるから大丈夫なんだけど、かっきーはその場にいない人の話題でいじる形になったとき必ずフォロー入れる印象で、そういうところ本当にきちんとした人だなあって思いました。

 

人魂を届けに

完全に理解はできなかったけど、わかることが正解ではないんだろうなと思った。しばらく考えたい。

開演前にしんとした静寂の中で鳥のさえずりだけを聞く時間があってすごく印象的だった。

いろんな要素が入っている作品だと思うけど、最後の陣と山鳥のやり取りは「組織を憎んでも個を許して救う」「構成する個人も救われることを信じて正しいことをする」ことでしか組織は変わらない、ということかな。陣さんが森から出られたあとどっちに振るかわからないけど、少なくとも理解して出ていったように見えた。

複数役の方々の役の切れ目が分からなくて、森の家と現実の境があいまいなのがすごく好きだった。

女形で有名な篠井さんが山鳥を演じてる作品の中で、佇まいとか声色が普段と明確に切り替わらないまま八雲の妻が存在してたのがなんとも良かった。伝統的な女型とそれほど性差を感じない日常の女性役が両方とも出てくるのがなんかすごく好き。
もうひとり、作中女性と同じ俳優が演じる、一人称に揺れがあって「本人の意思でなく恋人を失くした」としか語られない葵さんが気になる。
男性俳優だけで構成されている作品だから私がそこに意味を見出そうとしてるだけかもしれないけど、安井さんとの夫婦役という目新しさだけじゃなくてかなり意図的に境界をぼかしてるように感じた。ここに山鳥が作中でも性別男性である事実が絡んでくるのかな。

初め気づいたら舞台上に立ってた黒ロングコート陣さんにびっくりした。めちゃくちゃ似合っていてかっこよかった。

 

ART

north-th-east.hateblo.jp

 

セトウツミ@ビレッジホール
滑り込みで大楽。眼鏡忘れたけど、頭から見損ねたけど、帰りに目の前でパンフ売り切れたけど、めっっちゃ面白かった。

シリアスな最終パートまでどっかんどっかんウケていて、原作が面白いのももちろんなんだけど、舞台上での具現の仕方がかなりめちゃくちゃ好みだった。テンポが良い。最終パートも体温は変わらないのも好み。

ぼんやりとしか出演者把握してなかったからカテコで出演者6人なことに驚いた。
納谷さんと佐藤日向ちゃんがツボでした。田中真二のひとり語りのパートで、ぴょんって飛んで手すり踏んで飛び上がっていて身体能力何事かと思った。樫村/ハツ美の切り替えがめちゃくちゃ好き。

3月から河原で稽古しながら中華統一を目指してた有澤牧島両人。短い切り替え期間で大阪の高校生になっていてさすがでした。
牧島くんは本日もカテコの挨拶が好みだった。おもろの温度が好き。
有澤くんは兵庫県民なんだね。映画ドラマ舞台どれも瀬戸だけ関西人なのは、やっぱりまくしたてるからかな。

そういえば末中小吉も左右対称だなと思った。

 

ある馬の物語@世田谷パブリックシアター
冒頭ビニールに包まれて吊られたところから落ちてくる成河馬でまず心をつかまれた。あんな姿誰でもなかなか見れるもんじゃない。

終始フィジカル成河。馬たちがめっちゃ馬ですごい。

スーパー小西タイムがどの役でもめちゃくちゃ面白い。あんなにかっこいい=面白いの人なかなかいない。美の象徴たる黒毛のイケ馬が彫刻みたいな美しさだけでなく、存在もイケてて素敵でした。

小柳友の御者、明るいけど色気もあってすごくかっこよかった。
1幕ラストのそりのシーンと、ぶつっと切れる休憩の入り方も好き。

 

ムーランルージュ@帝国劇場

north-th-east.hateblo.jp

 


兎、波を走る@プレイハウス
現状あんまり正しい感想が出せない気がする。過去に見た野田地図作品に比べて主題についての知識が乏しく、まぶされてたモチーフや事実が結びつかなかったというのはあるかな。忘れさせないっていう目的は私みたいな人間にこそ意味のあるものなのかもしれないけど。
あと現在進行形であるはずの主題と、AIについて、とかの生まれたばかりで答えの出てないテーマが複数混ざってて、そこの関係を見ようとしてしまってわからなかった。

演劇オールスターズな座組で、テーマに反して悲劇的すぎないお芝居なのは好きだった。セットとギミックも美しい。

いつもどんな扮装してても秒でわかるような俳優ばっかりなので、この俳優さん誰だっけと思ったらその人は野田さんがち。

2023「Moulin Rouge! The Musical」

プレ初日から観劇できて、初見時はオーソドックスなラブストーリーで有名楽曲と派手なショーを楽しむ作品だなと思ってたんだけど、見るたびに登場人物の感情に揺さぶられてみるみるハマっていった。あと洋楽詳しくないけど、知ってる曲たくさんあって楽しかった。

ショー形式のカテコも含めて一般的にイメージされる「ミュージカル」っぽくて、有楽町日比谷巻き込んで街ぐるみで盛り上げていたし、ハレの日のイベントとして普段観劇しない層にも届くと良いのではと思った。のだけど、3ヶ月でミュオタが盛り上がりきったので、来年はチケット取りにくくなるかな。


プレショーではハットの紳士やショーガール、男性パフォーマーのツインズがうろうろ。席近いと目線もらえたりする。どこかの回で見た年齢差と身長差のあるツインズがすごく良かった。
ストーリーは好みあるんだけど、そういうお話なんだと思って見たら見どころたくさん。クリスチャンのハッピーエンドを信じて、現実に苦しんで、拒絶されて思い詰めて、の顔!声!表情!!!コミカルでキュートな1幕と激情の2幕それぞれの良さがあった。


以下主に芳雄クリスチャン回の感想。

【1幕】
プレショーで醸成された空間に溶け込むようにするっと現れる芳雄クリスチャン。ネオンをあげるときにうっすら微笑む。
モンマルトルに入るまでは先の時代のクリスチャンなのかな。サティーン呼び込む前にジドラーと目合わせるのも時の流れを感じる。よく考えるとジドラーとクリスチャンってそれほど付き合い長くないんだけど、特にさとしジドラーと芳雄クリスチャンだと役者マジックもあって、サティーンとの一件のあとも交流があったんだろうなと思わされる。

 

ティーンのパフォーマンス後に、すっかりやられて緊張でクラクラしてるクリスチャン。サンティアゴが通りかかったケースから酒瓶拝借してクリスチャンに渡すと一気に煽る。クリスチャンをくるくる回してバーテンダーから隠すサンティアゴ可愛い。
Shut up and Danceめちゃくちゃ楽しくて可愛い曲で好きだったな。頻繁にこっち向く振り付け可愛い。

 

みんなコメディどんとこいなメンバーだから、象の中のコミカル芝居がめちゃくちゃ面白い。クリスチャンとサティーンの最悪のすれ違いコントが毎回テンポ感がすごく好き。特に望海サティーンの打ち返しが高速で、会話のテンポが加速していく感じする。
Your Song本当に良かったな。愛情をまっすぐ届ける歌唱なんか専売特許だし、それを受けるサティーンもキラキラしてて、運命の出会いの説得力。最初やはり年齢が気になってたけど、このシーンで年下の夢見る青年がばちっと決まる。思い入れも込みで、芳雄望海のデュエットが本当にアツい。ふたりの声が溶け合うんだよな。
あーやサティーンだとキスするときにクリスチャンがはちゃめちゃに腰落として膝曲げてて、身長差にきゅん。キスされて、わわって困ったあとそろっと背中に回る手、離れたあとのとろ〜んとした顔が年下すぎる。可愛いにもほどがある。
途中からキスしたあと、ロートレックに見てもらって可愛い顔でしっかり口紅拭うようになってて、その顔閣下に見られてるの分かってる???と思った。無自覚年下男の罪深さ。
公爵巻き込んだプレゼンシーンも全員面白い。ちゃんと巻き込まれる閣下も可愛い。

 

Your Songの今恋に落ちた表情も良いんだけど、Elephant Love Medleyの「僕は君が好きで君も僕が好きでしょ?」みたいなぽやっとした微笑みも好き。サティーンがどれだけ離れようとしても意に介さなくて、ふたりが想い合っていることを疑わない顔。
逃げ回るサティーン追いかけて、ミラーリングで真似っこするクリスチャン可愛い。

1幕でサティーンの方が「私を見て」って言ってるんだな。クリスチャンから離れるために言う「私を見て」と、最後にクリスチャンから離れようとするサティーンに向かって言う「僕を見て」なんだな………。

 

【2幕】
BadRomanceでサンニニが絡み合ってるのを途中から入ってくるショーのメンバーが「はあ、またやってんの」みたいな感じで見てるの好き。

2幕頭の稽古で、ジドラーの大根芝居見ながらショコラとクリスチャンががやがやなんか話してるの好き。稽古場ではすこぶる棒読みなのに、本番では普通にシェイクスピアみたいになるジドラーがさすが。

キレて出ていったクリスチャン見ながら、あいつ何だ?みたいなことオフマイクで喋ってる閣下。あのとき既に気づいてはいるんだろうね。

ティーンから稽古場での態度をたしなめられたときの「なんで?受け入れてる!」の言い方がすごく好きだった。自分の中では我慢してるつもりの若者の拗ねた喋り方。

閣下がサティーンを脅して「あの美しい顔を切り裂いてやる」って言うけど、閣下も美しいと思ってるんだなってちょっとだけ微笑んでしまう。

Crazy Rollingが凄まじい。怒りに身を任せて感情が噴き出す表情と歌唱。怒りと悲しみで我を忘れていて、顔全体で目を見開く。お芝居で目の形が変わるのが本当に好きなんだよな。ああいうしぼりだす絶望の表現が本当に好き。
見くびるなら覚えておけ、で手叩くのオペラ越しに食らってぐぅってなった。

最後のサティーンとロートレックのシーンがすごく好きだった。物語ではそれほど語られないけど、お互いすごく大切なんだろうなって分かる。少し年上のお姉さんだったサティーンを遠くから見ているロートレック少年が見えた。

怒り狂って絶望して、準備してる中でどこか冷静になってきて、彼女の前に出たら感情が抜け落ちたみたいにぽつぽつ喋るの、リアルで好き。

崩れ落ちる彼女を支える体勢が足なっがい。意識を手放していくサティーンに、泣きながら顔撫でて、張り付いた紙吹雪よけて髪すくって、愛を伝える。

1幕の希望に溢れたキュートな顔も、2幕壊れていって大切なものを失う満ち満ちた感情の起伏も、好きだったな。

 


プレ初日をやったElephantチームを主で取ったけど、Wキャスト全員見られた。

しょまスチャンは本当に若くて可愛い。まっすぐさとそれに比例する視野の狭さ。1幕のキラキラキュートな若者の説得力たるや。
"Dance Hall"とか"Singer Song Writer"の発音がめちゃくちゃ良いのはアメリカ人の役だから??冒頭のモンマルトルズ登場するところがちゃんとクリスチャンの人格。芳雄クリスチャンは拍手煽ってる最中は7割芳雄さんだったので。笑

あーやサティーンは望海さんと別路線の唯一無二性がある。ダイアモンドの洋楽的なノリがショーそのもので素敵。このディーバにパトロン相手の仕事させんなよと思ったけど、喋り方とかを見るとけっこう割り切ってやっていそうと思った。望海サティーンの方が常に13歳の自分が心にいる印象だった。

がうちサンティアゴ、かっこよくてダンスがめちゃくちゃセクシー。

上野ロートレックめちゃくちゃ好きでした。芸術家の体現者。上野さん勝手にバリトンの方だと思ってたので、台詞の声が高くて驚いた。すごく好きな声。

松村ジドラー、可愛げと品があってお調子者すぎないダンディーなジドラーだった。対サティーンに対しても父性が強めな印象。さとしさんは戦友っぽい。

ニニたち初日近くはフレッシュだなって印象の方が強かったけど回を追うごとにお芝居パートが好きになっていった。今後もいろんな役で拝見したいな。

智海ベイビードールが可愛い。歌の印象が強いけど、ダンスも上手いんかい。


物語としては、デュークとロートレックの部分が好きだった。
デュークが稽古場で言う「ド派手なプロレタリアショーに金を出す私の立場を考えてくれ」という台詞をずっと考えていた。
ロートレックも貴族の援助がないと自分の作品が作れないことは分かってるし、サティーンもムーランルージュを守るために閣下の好意を利用している。でも媚びへつらっては芸術家として立っていられないから対等な立場を守ろうとするし、「自由の国」から来た無垢な青年に期待をかけたのかな。そういう意味でもサティーンとロートレックは似ている。この「ずるさ」があるので、最後のサティーンとロートレックのシーンがすごく響くのかも。


以下各観劇日の記録。

■プレ初日
ロビーが人、人、人。キャスボ大行列。
劇場真っ赤で両サイドに大きい象と風車。音楽もガンガン流れてる。これはたしかにすごい!!!喫茶室も赤い!!

プレショーに合わせて早めに座ってたら関係者たくさん入って来るし、しまいには斜め後ろにWキャストの皆さんが座られて、気が気でなかった。

カテコでバズラーマン監督登場。名指しでHe is funny!って褒められるさとしさん良すぎた。

■7/9(芳2貸切)
2階で定点していたのもあって、すごく表情とか見えて、あまりにかっこよくてふわふわ。

■7/22
今回の中でいちばん前方。風車の下での観劇。
fireworks中に額みたいなセットがぐわんって揺れたと思ったら一時中断。10分くらいで復活して、サティーンの部屋から再開。
クリスチャン入ってきて「すごく遅くなってごめん!なんか迷っちゃって!!」

カテコcancan前のジドラーのご挨拶「皆様、本日の"3幕"のショーはお楽しみいただけましたでしょうか?」

ティーンお着替え後に大きい帽子落ちちゃって、被り直すの難しそうだし自発的にかぶったら意味が発生しちゃうしと思って見てたら、稽古場着いたところでバッグと一緒に手で持ってたサティーンから閣下がすっと受け取って持ってくれててきゅん。
プロレタリア作品の稽古場にあの帽子とバッグの滑稽さいいよね。

カテコで伊礼彼方のハート食らって、上川さんのトリプルターンを目の当たりにして、物語の余韻吹っ飛ぶくらいテンション爆上げ。

■7/29 マチネ
芳雄クリスチャン見納め。
カテコ、サンニニから投げキッスの流れになり、芳雄さんとあーやではけるときに投げキッスしまくって、最後ふたりで大きいハート作って退場。可愛い。

■7/29 ソワレ
イープラス貸切でご挨拶あり。隅田川花火大会の日。
しょ「1幕ラストで今同時に花火あがってんだなロマンチックだなって思いながらやってた」
の「あれロマンチックだなってことだったの?なんか1幕終わった瞬間に『今日花火なんっすよね』とか言われたからもう違う話するの⁉︎と思ってた」

しょ「花火ね、川でね……皆さん川よりこちらを選んでいただいてありがとうございます」
ずっと"川"って言ってるかいしょーま。

の「e+と言えば??」
しょ「え⁉︎えっと、プラみですか」
の「そうプラみ!!」
こそこそ喋ってる伊礼松村
い「はい!プラみって何ですか」
の「e+貸切の広報キャラクターです」
い「へ〜俺けっこうe+と癒着あるのに知らなかった」
最後みんなでe+ポーズで締め。ゆるゆるでよかった。


楽しい夏でした。また来年ちゃんと見れますように。

2023「ART」

2020年中止になった中でいちばん未練があった作品が再演!心ゆくまで堪能して、3年前のわたしが救われました。

会話の大洪水を浴びて、おじさん3人に胸が締め付けられる。

見ながら戯曲買って読んだときの記憶がよみがえってきたんだけど、イヴァンを洋ちゃんが演じるの、あまりにもあまりにもだよ!

 

外から見てるとやっぱり起点はマルクだと思うけど、誰かに合わせてちょっと過剰に言っちゃったりいらんこと言って歯車が噛み合わなくなったり全然別の原因で気分が落ちてるときにトゲのある言葉拾って全部嫌になっちゃったりするよね、っていう人間関係のあるあるが詰まってて切なかった。
あそこまでつっかかられたら私なら距離置いちゃうかもしれないけど、それこそ人間関係なんて本人が良ければ良いわけで、3人ともこれでよかったんだろうな。

3人が綺麗なトライアングルではなく、社会的地位のあるふたりと仲介主義の年下ひとりってところが、役者を通すとまた良い。2人で揉めててイヴァンを取り合う形になる段階も、本当に可愛くて好きなんだろうけどあくまでも「俺らふたりとイヴァン」なんだろうなって感じた。

 

しかしまあ大泉洋の台詞が聞き取りやすすぎる。あの早口でとめどなく5分喋り続けて、まだ似たようなシーンが後半に1〜2回あるっていう。スゴ技なだけではなくて、3人の中での彼の立ち位置とか2人への気持ちとか感情のぐらつきとか全部飛んでくる。
最後に戻ってきてから2対1になって、フルテンションでまくしたてるイヴァンさんの自分のこれまでの話に胸が締め付けられて笑ってられなかった。洋ちゃんのああいう台詞回しが本当に好き。
ふらふらしてる自覚はあって、そのままでいられるなら大好きな友達の近くで愉快なピエロでいたかった、けどそうもいかないだろ。生活を保証してくれるわけじゃない、やりたいこと辞めて生活を取ったらつまんない男に成り下がったって言われて、もうなんなんだよ!!どうすればいいんだよ!!!っていうの、毎回胸がぎゅぅっとなる。

争いごとが苦手で近くに怒ってる人がいたら笑わせたくなる性格、年上のメンバーと長年の関係を築いている歴史を彷彿とさせて、つい重ねてしまう。

イライラと爪噛んだり、ムキーって腕ばたばたさせたり、全部嫌になってソファでぐでーんってしたりする姿を目の前で見届けた。長い足に映える細身パンツにオレンジの靴下、左右色違いのサスペンダーがcute. あのサスペンダー本当に可愛い。

 

会話が回りだすとすごいスピードで進んでいくのが本当に長年の友人3人の口喧嘩そのものでなんかすごい良かった。最後言いたいこと言い切って、オリーブの静寂のあとでセルジュがあの判断に至ったのがなんとなくしっくりきた。

ただ最後のセルジュのモノローグ、あれは消せることを分かった上での提案だったということなのかな。そりゃ500万だしというのもあるけど、あれもこれも取り返しのつかない問題ではないっていう感じもして、じんわりくる。

カテコ、3人で肩組んだり、洋ちゃんがお手振りしたり投げキッスしたり、コヒさんがイッセーさんの肩に手かけて電車でハケていったりでso cuteだった。


なかなか舞台の頻度自体高くないけど、当て書きでない作品から取れる栄養もすさまじかったので、翻訳劇もまたやってほしいなあ。今回は当て書きかと思うくらいぴったりだったけども。

私は色彩は感じられないけど、アントリオスは好きだったな。漆喰塗りの壁みたいで綺麗。

 

全部見終わってから戯曲読み直したけど、ほとんど戯曲通りだったのに、初めて読んだときと全然印象が違って驚いた。文字で読むと陰険に喧嘩してるだけなのに、芝居と演出でこんなにコミカルにも切なくもなるんだなあとか当たり前のことを改めて実感。