みなも泳ぐ水鳥も

観劇と他の趣味

2023年見たものまとめ(10~11月)

眠くなっちゃった

north-th-east.hateblo.jp

 

切り裂かないけど攫いはするジャック

しばらく考察ブームの過熱とか事件のエンタメ化とかが織り込まれてるのかなと思いながら見ていたんだけど、織り込まれながらどんどん混ぜっ返されて、混ざったまま終わった。笑
キーとなるシーンのミスディレクションもそうだけど、キャラクターがめいめいに動くのが肝なので、見てないところで起きてることは見逃してる可能性があるかも。

いつもは群像的な印象が強いけど、今回は個で動くキャラがたくさんいたのが好きだった。また、その群と個の切れ目がなんとなく意味ある感じなのも。考察で盛り上がる住人たちが集まっている後ろで事件が起きているけど、集まっているので気が付かない。

全景配信が欲しい舞台だったな。

 

天號星

笑いとアクションと人情ものが全部楽しめるハンバーグカツカレーみたいな作品。

ザ・新感線の主人公!な義と自己犠牲の男を早乙女太一で見られるとは。
早乙女兄弟が対面してるのにまともな殺陣は2幕までおあずけなのか~?と思ったら、1幕ラストで半兵衛の気持ちの変化に伴って太刀筋が鋭くなる、その物理的な変化にしびれる。

最後のvs朝吉戦終えて、足も手もガクガク震えてる姿に涙腺が決壊した。

 

銀次inの古田さんはこれこれ!って感じ。やっぱり悪い男が好きだな。

半兵衛inタイチサオトメの歩き方がまんま古田さんですごかった。

山本千尋、剣も型も全部かっこいい。普通の会話の声が落ち着いてて好き。くぼしーさんもすごい新感線の人って感じで良かった。

 

シスターアクト

ペンラ複数持ちのファンとなんか有名な作品だよね~みたいなペアに囲まれて、良い観劇体験だった。

 

聖歌隊が変わっていくシーン、何回見てもすごく好き。修道女でも人種の感覚はあって、人によってはデロリスに表情を変える人もいるけど、それでも音楽が距離を近づける。はみ出しものだけど音楽への愛とリスペクトのある人が集団を変えていくの、SORのことも思い出した。

廣瀬エディは誠実でいい奴。かずエディはデロリスと同じグループにはいたんじゃないかなと思うけど、廣瀬エディのことは本当にギリ名前覚えてた同級生って感じ。汗っかきがちゃんと悪口で、からかわれるの嫌だったけど言えなかったんだろうな。

優しくて誠実で内気なエディがデロリスのために少し変わって助けられるようになる経緯がすごく好きだった。

あと動きが不審。笑 なんであんなにガタガタ踊れるんだ。エディ初登場の「フィラデルフィア警察に任せておけば、安心だぜ」みたいなシーンで、武道の型みたいなのをへにょへにょ披露しながら、ちっさい声でア,マチガエタ,チョットマッテ,モウイッカイってごちゃごちゃ言ってんの好き。

梅田メアリーロバートは初め純粋な子供のようで、デロリスの影響で変わったのがすごくよく分かる。ミックジャガー神父のブーツが背丈の半分くらいあって可愛かった。

大澄カーティス、めちゃくちゃ怖い。キザで伊達男なので、より闇の顔が怖い。最後逮捕されるときの喚きは「かつて呪いの言葉だったもの」って感じで、デロリスが何に打ち勝ったかよく分かる。

実はお初の太川神父は、やり手ビジネス神父って感じでギラギラで出てくるのも違和感なかった。この前見た常住神父は、神とともにあった人が俗世にまみれたように見えたのでそれはそれで好きだったんだよな。

この作品のクスッとするシーンはかなり気が合うんだけど、ダントツで「何ひとつ事情を説明されないまま捕まって解放されるタクシー運転手」が好き。

ラスト曲みんな仲良しで可愛かった。
梅ちゃん翔太くんで並んでルダハートしててキュート。
ジャンプするところで無の顔でまっすぐ高く飛ぶ廣瀬氏と、高さを張り合おうとするまあさまはシュール。

 

 

無駄な抵抗

今作もわかりすぎない話でありつつも、かなり直球のメッセージもありつつ。
最後芽衣とリサの会話で何かが解けた気がした。ただかなり直接的に説明されるので、事前に注意喚起があっても良いのではとは思った。

止まらない電車に対して"工夫"して慣れてしまわずに、もし大ごとになったとしてもその手で止めろというメッセージはすごく好きなんだけど、そこまでにあったリサの抵抗や駅の女性の捨て身の抗議は効果がなくて、島忠という個人のこれまた無茶でようやく止まるのが、どう思えばよいか難しい。事実そうでもしないと止まらない、何ならそこまでしても止まるのか?というところまで世界は来てしまっているのだけど。
正式な手順を踏んで、誰か一人の人生をかけずに電車を止めることはできないんだろうか。

 

めちゃくちゃ卑近な感想になるけど、下手最前列に座っていたので登場直後の大道芸人にニコッとしてもらった。

コロスと個としてのキャラクターのつなぎ目が曖昧なのが面白くて、それぞれの人物のそこにいないけどそこにいる居方が好き。その中でどこにも存在している可能性がある大道芸人さんの動き見てるの面白かった。個人的にはコーヒーが来るのを予知しているのが好き。

ケラさんにしても前川さんにしても、今の劇作家が今伝えるべき作品を作って、それを観劇できている世界の有難さが続いてほしい。

 

 

浅草キッド

正直2幕までちょっと長いなと思ってたんだけど、ラストに向けて加速度的に良かった。

とにかく山本耕史オンステージ。登場した瞬間に劇場が色づく。歌もダンスも普段の振る舞いも何もかも様になる。東京はせり上がりだったらしいけど、会場の関係で客席登場。暗闇の中客席に現れるのが見えてめちゃくちゃ沸いていたらそのままスポットライト引き連れて、中通路練り歩いてシンプルにめちゃくちゃかっこよかった。
師匠の半生曲好き。
2幕の亜矢ちゃんとのシーン、どうにもできない情けなさと申し訳なさの表情が切ない。

タケが売れた後の、嬉しさを隠せないめんどくさい師匠に心がぎゅっとなる。それはそれとして師匠のビジュが良すぎる。
最期のシーンは、三浦の服毒(してないけど)後を思いだすような身体コントロールの極致みたいな芝居。本当に体が動かなくなっていくのを見ているしかない客席。あれを舞台で、すぐそこで演じてるのを見られて幸せだった。

2幕の病院のシーンもすごく良かった。マキグチくんが現実でどういう存在の人だったか知らなかったんだけど、穏やかなところから苦しさがにじみ出てくる表情がすごく好きだった。

今野さんもめ〜ちゃくちゃ良かった。コンビとして成立するまではむしろキヨシが引っ張ってきた、売れる熱意のある男。売れて喫煙している後ろ姿から、求められていたのは自分じゃなかったのを実感するすごく短いシーンが苦しかった。

松下さんは全てのシーンの出が強い。歌もダンスも華やかで目を引く人だなあ。
新しい時代を連れてくる男で、でもかつての師匠と同じことはできない自覚がある切なさ。

いろんな濃い人たちの中で、決して表情豊かじゃないタケの芝居が本当に上手い。特に2幕で周りの状況が変わり出した中で、ムスッとしながらいろんなこと考えてるのが分かるのすごい。1幕ラスト師匠とのタップ競演も素敵だった。

ただやっぱり各シーン全部ちょっとずつ長い感じがした。もうちょっとコンパクトにしてくれると助かる。