みなも泳ぐ水鳥も

観劇と他の趣味

2021「ストーリーオブマイライフ」

役固定になって、新ペアも増えて、さらに物語が深まった感じがした。前にも増して、大切な作品になりました。

役スイッチの希望も消えたわけじゃないけど、2021年にやるなら平方元基はトーマスで田代万里生はアルヴィンだなあって公演期間中通して実感した。

 

2ペア続けて見て、俳優こそ物語の媒介者なんだなというのを改めて思った。その人を通してしか、見る側が知ってる情報を通してしか、見ようがないんだな。

 

■初演ペア

アルヴィンの髪をくしゃくしゃする仕草、橋の上以外でも蝶見てるときもスノーエンジェル作ってるときもやってて、トムの癖なんだろうな。そういう細かいところに役が生きているの本当に好き。

「素晴らしい贈り物」、トムのジャンプの高さもだけど、アルヴィンがハタキでフルスイングするときのフォームが様になってて、そういや運動神経いいもんなあと思った。

「初めてのさよなら」でカメラ向けられていっつも片手びしっと伸ばしてピースだったのが大楽はダブルピースで、旅立ちが嬉しいことは見るからに分かるよとなった。片手ピースでも十分嬉しそう。

「普通になれ」で手すりにとまってるちょうちょ驚かすためにノーモーションで椅子に飛び乗ってるの好きだった。帰省のときにアルヴィンにガッタガッタされてるし2週間もってよかったね。

 

トムの作品として発表される1876年とかバタフライ、雪の中の天使以外の曲は、作中で独立してなくて台詞と不可分なところが好き。

1876年後の「僕のキャリアの大きな一押しとなったのです」を聞きながら、アルヴィンは嬉しくて寂しいみたいな顔してた。
バタフライは、私が見た回だと2サビあたりからみるみる表情が変わってく。
海を遠くに見るところでトムが旅立つ未来が見えて、比例するようにトムはどんどん自分の物語に入り込んでいくんだよね。
トムの歌が毎回素晴らしくキラキラで、それだけにつらい。
曲の後すぐ台詞入ったりして拍手起きないようなつくりになってると思うんだけど、それでもあのバタフライの威力に抗えないんだよね。そしてすさまじければすさまじいほど劇中でアルヴィンにあの顔をさせる理由にもなる。

 

子どもの頃遊びの延長でプレゼントした本が夢を見つけるきっかけになり、「出せば」って言ったところを起点に職業として実現に近づき、個人的な事情で約束を反故にしたこと(「無邪気で無害な軽い一押し」)が道を違うきっかけになったの、バタフライ効果の変奏かな。

「すごいよね」初演アルはふたりともあんな内容手紙で送ってたんだろうなと思ってたけど、今回はまったく被害妄想なのではという気がした。アルは当てつけみたいなことしないし、トムはあの時点でかなり追い詰められてる。

走馬灯みたいなシーンでトムが言う「知らない誰かになってた」のは誰のことなんだろうと考えてる。お父さんの弔辞を読むアルヴィン?「この町」に対する自分自身?

 

3回目の神の偉大な図書館からが本当に好きすぎる。
プライドのいちばん弱いところを刺されたトムの爆発の仕方がリアルで、それを受けるアルヴィンもビクッとはしながらも折れずに自分の考えで行動する。

「気づくんだ孤独に」って歌ってるとき、弔辞読んでるアルヴィンは参列者に知り合いがいることに気付いて手振ってそこからまた物語を広げているような動きをしていて、トムが見ていた「子供のまま変わらず父親がいなくなったら自分しか拠り所がない友人」とは違う顔があったんだろうなと思わされた。

 

最後の方多層構造すぎてきちんと理解できてなかったんだけど、「その物語を手に入れることができれば君はアルヴィンケルビーの物語を終えることができる」って台詞は、ここには存在しないから疑問は消えないしこれが全部だし永遠に10歳のままここにいるよに対応するのかな。

「ありがとう」って呟くアルヴィンを見ながら暗転を迎える。

 

■カテコ

・12/19

カテコ、素敵な表情で何回もお辞儀してくれて最後は壁に掛けっぱなしだったトムのコート広げてげんきくんの肩にかけて帽子被せて、adiósみたいな指ぴゃってやる挨拶して笑顔で手を振って締めだった。
本当にあたたかくてぎゅっと詰まった110分でした

・12/24 前楽

イブカテコ、テーブルの周りぐるぐる走って紙吹雪巻き上げながら「メリークリスマス!」「ハッピーニューイヤー!」「プレゼントちょうだい!」「お年玉ちょうだい!!」「もうすぐ誕生日!」って言っててso cute.
その前のはけぎわに突然元基くんのベストのボタン外そうとしてごちゃごちゃっとして諦めて帰って「……何??こわ!!!」って言われてるやつも何だったんだ笑

・12/25 大楽

カテコの元基くんの飾らない言葉も、まりおさんの優しくて手堅く再再演の種を撒くコメントも、雪の中の天使おかわりで橋の上で肩組んで歌うのも、ハグしようとする後ろをとってバックハグしてひらかたげんきくん(36歳)を操るたしろまりおくん(38歳)も大好き。おかわり雪の中の天使、最後まりおくん上ハモですっごい気持ちよかった。

 

■弟ペア

まきトムは年相応に幼くて、アイデアの源がどこなのかとかお父さんのお葬式でのこととかを無意識に気づかないふりしてるように感じた。元基トムは全部わかってて目を背けてる感じ。
もっくんアルはちゃんと年齢を重ねている、もしくはトムが街を出たくらいの年齢に設定されてるように感じた。衣装の印象も大きいかも。
もっくんのキャラクターぽくもあり大人っぽくもある感じの声好きだった。

このふたりは割と対等で、アルヴィンも変わり者だけどひとりぼっちじゃなくて、トムもそんなに世渡りが上手いタイプじゃないように見えた。

 

■Wアルヴィントークショー(12/19)

元基トムの「こんなの書けたらかっこい⤴︎いな」「ここが好き⤴︎」の裏声が好きで、初演の頃から楽屋で再現して褒め称えてたまりおさん。めっちゃ分かる。
子供の頃どっちかというとトムだったもっくんと、500%アルヴィンだったまりおさん。まりおさん普通に見ててそうだろうなと思うけど、ひょうきんな人ランキングに入るタイプの枠なんだ、という興味深さがあった。

ぷはーっ!のステージドリンクはOS-1だそうです。

 

あと今更ながら「素晴らしき哉、人生!」も見た。
面白くてクリスマスの定番作品になるのは分かるんだけど、この作品をモチーフにしてSOMLが出来上がるのか……と思った。
才覚と人望の男、天使がやってきてIFの世界を見せて人生をやり直す、たくさんの人の笑顔に囲まれたクリスマス………。
クラレンスが来ない物語でこそ救われる心もあったよ。

 

アルヴィンという存在は何か考えてて、「苦しみから解放してあげたい(そのために痛みのある過去と向き合うことになっても)」というアルの思いがトムの記憶の集合に重なった存在かなと思った。
あの空間は本屋でありトムの頭の中。

そういえば初演時は、元基アルとの差も相まって、純粋に弔辞を書いてほしかったのが濃厚ですらあると思ったけど、今回はそうは思わなかった。
「遅刻だよ」の口調が責めるような響きから不安で仕方ない印象に変わっていたことと、トム→アルヴィンへの感情が途切れることがなかったのが大きい気がする。

アルヴィンにも寂しさとか悔しさとかもっとトムに言ってない感情とか色々あって、トムだって自分の道を進みたいとか焦燥とかあって、でもそれを超越するくらい再演ペアずっとお互いのこと好きだったな。初演以上にお互いへの気持ちが強くて、どこもかしこも愛だなと感じた。

 

これからも特別な作品です。