みなも泳ぐ水鳥も

観劇と他の趣味

2023年見たものまとめ(10~11月)

眠くなっちゃった

north-th-east.hateblo.jp

 

切り裂かないけど攫いはするジャック

しばらく考察ブームの過熱とか事件のエンタメ化とかが織り込まれてるのかなと思いながら見ていたんだけど、織り込まれながらどんどん混ぜっ返されて、混ざったまま終わった。笑
キーとなるシーンのミスディレクションもそうだけど、キャラクターがめいめいに動くのが肝なので、見てないところで起きてることは見逃してる可能性があるかも。

いつもは群像的な印象が強いけど、今回は個で動くキャラがたくさんいたのが好きだった。また、その群と個の切れ目がなんとなく意味ある感じなのも。考察で盛り上がる住人たちが集まっている後ろで事件が起きているけど、集まっているので気が付かない。

全景配信が欲しい舞台だったな。

 

天號星

笑いとアクションと人情ものが全部楽しめるハンバーグカツカレーみたいな作品。

ザ・新感線の主人公!な義と自己犠牲の男を早乙女太一で見られるとは。
早乙女兄弟が対面してるのにまともな殺陣は2幕までおあずけなのか~?と思ったら、1幕ラストで半兵衛の気持ちの変化に伴って太刀筋が鋭くなる、その物理的な変化にしびれる。

最後のvs朝吉戦終えて、足も手もガクガク震えてる姿に涙腺が決壊した。

 

銀次inの古田さんはこれこれ!って感じ。やっぱり悪い男が好きだな。

半兵衛inタイチサオトメの歩き方がまんま古田さんですごかった。

山本千尋、剣も型も全部かっこいい。普通の会話の声が落ち着いてて好き。くぼしーさんもすごい新感線の人って感じで良かった。

 

シスターアクト

ペンラ複数持ちのファンとなんか有名な作品だよね~みたいなペアに囲まれて、良い観劇体験だった。

 

聖歌隊が変わっていくシーン、何回見てもすごく好き。修道女でも人種の感覚はあって、人によってはデロリスに表情を変える人もいるけど、それでも音楽が距離を近づける。はみ出しものだけど音楽への愛とリスペクトのある人が集団を変えていくの、SORのことも思い出した。

廣瀬エディは誠実でいい奴。かずエディはデロリスと同じグループにはいたんじゃないかなと思うけど、廣瀬エディのことは本当にギリ名前覚えてた同級生って感じ。汗っかきがちゃんと悪口で、からかわれるの嫌だったけど言えなかったんだろうな。

優しくて誠実で内気なエディがデロリスのために少し変わって助けられるようになる経緯がすごく好きだった。

あと動きが不審。笑 なんであんなにガタガタ踊れるんだ。エディ初登場の「フィラデルフィア警察に任せておけば、安心だぜ」みたいなシーンで、武道の型みたいなのをへにょへにょ披露しながら、ちっさい声でア,マチガエタ,チョットマッテ,モウイッカイってごちゃごちゃ言ってんの好き。

梅田メアリーロバートは初め純粋な子供のようで、デロリスの影響で変わったのがすごくよく分かる。ミックジャガー神父のブーツが背丈の半分くらいあって可愛かった。

大澄カーティス、めちゃくちゃ怖い。キザで伊達男なので、より闇の顔が怖い。最後逮捕されるときの喚きは「かつて呪いの言葉だったもの」って感じで、デロリスが何に打ち勝ったかよく分かる。

実はお初の太川神父は、やり手ビジネス神父って感じでギラギラで出てくるのも違和感なかった。この前見た常住神父は、神とともにあった人が俗世にまみれたように見えたのでそれはそれで好きだったんだよな。

この作品のクスッとするシーンはかなり気が合うんだけど、ダントツで「何ひとつ事情を説明されないまま捕まって解放されるタクシー運転手」が好き。

ラスト曲みんな仲良しで可愛かった。
梅ちゃん翔太くんで並んでルダハートしててキュート。
ジャンプするところで無の顔でまっすぐ高く飛ぶ廣瀬氏と、高さを張り合おうとするまあさまはシュール。

 

 

無駄な抵抗

今作もわかりすぎない話でありつつも、かなり直球のメッセージもありつつ。
最後芽衣とリサの会話で何かが解けた気がした。ただかなり直接的に説明されるので、事前に注意喚起があっても良いのではとは思った。

止まらない電車に対して"工夫"して慣れてしまわずに、もし大ごとになったとしてもその手で止めろというメッセージはすごく好きなんだけど、そこまでにあったリサの抵抗や駅の女性の捨て身の抗議は効果がなくて、島忠という個人のこれまた無茶でようやく止まるのが、どう思えばよいか難しい。事実そうでもしないと止まらない、何ならそこまでしても止まるのか?というところまで世界は来てしまっているのだけど。
正式な手順を踏んで、誰か一人の人生をかけずに電車を止めることはできないんだろうか。

 

めちゃくちゃ卑近な感想になるけど、下手最前列に座っていたので登場直後の大道芸人にニコッとしてもらった。

コロスと個としてのキャラクターのつなぎ目が曖昧なのが面白くて、それぞれの人物のそこにいないけどそこにいる居方が好き。その中でどこにも存在している可能性がある大道芸人さんの動き見てるの面白かった。個人的にはコーヒーが来るのを予知しているのが好き。

ケラさんにしても前川さんにしても、今の劇作家が今伝えるべき作品を作って、それを観劇できている世界の有難さが続いてほしい。

 

 

浅草キッド

正直2幕までちょっと長いなと思ってたんだけど、ラストに向けて加速度的に良かった。

とにかく山本耕史オンステージ。登場した瞬間に劇場が色づく。歌もダンスも普段の振る舞いも何もかも様になる。東京はせり上がりだったらしいけど、会場の関係で客席登場。暗闇の中客席に現れるのが見えてめちゃくちゃ沸いていたらそのままスポットライト引き連れて、中通路練り歩いてシンプルにめちゃくちゃかっこよかった。
師匠の半生曲好き。
2幕の亜矢ちゃんとのシーン、どうにもできない情けなさと申し訳なさの表情が切ない。

タケが売れた後の、嬉しさを隠せないめんどくさい師匠に心がぎゅっとなる。それはそれとして師匠のビジュが良すぎる。
最期のシーンは、三浦の服毒(してないけど)後を思いだすような身体コントロールの極致みたいな芝居。本当に体が動かなくなっていくのを見ているしかない客席。あれを舞台で、すぐそこで演じてるのを見られて幸せだった。

2幕の病院のシーンもすごく良かった。マキグチくんが現実でどういう存在の人だったか知らなかったんだけど、穏やかなところから苦しさがにじみ出てくる表情がすごく好きだった。

今野さんもめ〜ちゃくちゃ良かった。コンビとして成立するまではむしろキヨシが引っ張ってきた、売れる熱意のある男。売れて喫煙している後ろ姿から、求められていたのは自分じゃなかったのを実感するすごく短いシーンが苦しかった。

松下さんは全てのシーンの出が強い。歌もダンスも華やかで目を引く人だなあ。
新しい時代を連れてくる男で、でもかつての師匠と同じことはできない自覚がある切なさ。

いろんな濃い人たちの中で、決して表情豊かじゃないタケの芝居が本当に上手い。特に2幕で周りの状況が変わり出した中で、ムスッとしながらいろんなこと考えてるのが分かるのすごい。1幕ラスト師匠とのタップ競演も素敵だった。

ただやっぱり各シーン全部ちょっとずつ長い感じがした。もうちょっとコンパクトにしてくれると助かる。

2023「眠くなっちゃった」

管理が全然うまくいっていないディストピアのお話。
完全管理社会よりリアリティがあって、まるでどこかの国みたいだなと思った。

いつもボリュームがあって疲弊するんだけど、美しくて哀しいラストシーンで会場が静寂に包まれる瞬間はしびれる。
壮絶な人生の記憶がすべて消えたあとに、リュリュから愛されていることだけ覚えるんだな。そこにかつて愛していた人たちがいなくなってしまっているのが哀しいけど。

ヨルコ、初め出てきたときはクズだけどたまに優しいので妻は離れられない系の男ね~と思って見てたら、全く同じ文章を全く同じトーンで繰り返すところで違和感が出てくる。そのあとどんどん壊れたラジカセみたいになっていくので、やりようによってはもっとオモシロになるんだろうけど、絶妙なバランスでコントロールされているんだろうな。その演出も実際に出力できるのも好き。
ロボットの身体表現もすごく好きだった。お茶入れずに帰ってきて、ノーラたちが喋ってる横で上半身だけガガッガガッって回すのとか、火花が出て壊れたり回収員に頭撃たれて直角のままバタンと倒れるところ、機械の体だった。
サーカス団長も道化たちと一緒にパフォーマンスしていたし、身体表現のプロがいる作品でここまで役割を担っているのが見えて幸せでした。

団長も優しくてずるい良いキャラクターだったな。匿ってくれるし裏切ったりするわけじゃないけど最後は置いていってしまうし、そもそもノーラにやりたくない仕事させてたのは団長なわけだし。

ケラさんはメッセージを直接言わせるような作風ではないと思っているけど、現実を組み込んだような描写のひとつに「娯楽は必要でしょう」って言う興行主と生活でそれどころではない苦しい市民が入ってくるの、苦しいな。


マイベストは野間口ナンダ。お仕事と人間味のバランスが好き。
ゴーガに対してもどういう感情を持っているのかわからないけど、少なくとも何か特別ではあったんだろうなと感じるラスト。
あの作品世界であの立ち位置のキャラで、あの力の抜け方が野間口さんだなあ。

門番-バンカーベックも好きだった。壊れている世界を容認して、実際の立場がどうであれ支配者側に立って人生をドライブしようとする人。今の世界にたくさん存在する人。あの生き方を選んでも、決して平穏に生き続けられるわけではないのが、まさに現実だなと思った。
あの彼だけが世界を止めて第4の壁を越えて、現実の我々に語りかける役割なのが何となくわかる。

山内さんは毎回精神が分裂しそうな対極の2役をやっていた。ゴーガの暴力表現の圧倒的な美しさ。

リュリュ妻が本当に妻なのびっくりした。一回気づいたら、「愛する妻の声を聴きながら今はノーラといる」構造にもうひとつ入り組んだ気持ちを抱いてしまうところはあったけど、本当にあたたかくて素敵だった。

2023年見たものまとめ(7~9月)

ファインディングネバーランド

MAOTOくんと星さんにメロメロになった。星さんの浮くくらいの良い声が活用されてた。MAOTOくんの愛され舞監もキュートで動き全部にキレがある。

子供たちが本当に可愛い。しっかりしたお兄ちゃんたちから可愛い可愛いマイケルまでそれぞれ良かった。

武田真治はいつまでも若い兄ちゃんみたいなイメージなんだけど、今回の劇場主は背負うものが多いけどかっこいい大人の象徴で渋くてかっこよかった。フックもさすが本役経験者でかっこよかった。

バリの妻とは志向が合わないだけでちゃんとした人だったから、少年の心は結構だけど大人は責任も伴うんだよって思って見てたんだけど、バリのずるさにフックが重ねられて出てきたので、意図的なんだなと思った。

1幕後半でバリの障害として描かれる大人たちが悪者なだけでないのは良かった。

Playすごく好きな曲。バックステージのシーン好き。

食事会の笑いは合わなかったかな。フック誕生の前だからあれが良しとされてるわけじゃないかもしれないけど、あれが「少年の心」なら大人でいい。

終盤がっつりピーターパンやるからびっくりした。ダンスが美しいピーター&ウェンディもすごく良いですね。ティンクを応援するくだりは本編ピーターパンでもやるので、改めて誕生物語の少し後に作品そのものが見られるのいいスケジュール感だなと思った。

 

水曜どうでしょう 新作公開ライビュ

新作面白かった!!好みは人それぞれだろうけど、私がどうでしょうに求めてるのはだらだらしたトークとハプニングなので、すごく満たされました。やっぱどうでしょうの洋ちゃんは可愛い。

洋ちゃんも会長も私服がめちゃくちゃ可愛かった。あとふたりとも脚が綺麗。

洋ちゃんのリサイタルも解禁。「あんたもう50歳に武道館やりなさい!あたしはそれ見て引退するから!」って社長に言われて決まったらしい。進退の真偽は不明ですが……。(横で会長が「え〜弊社どうしよう……」って言ってた)

 

カラフル

子どもの頃に読んでた原作なんだけど、そのときの感情が増幅してよみがえってきた。

客席の天井が青空で素敵だなと思って見てたんだけど、どうやら世田パブの元々の天井らしい。これまで見上げたことなかったな。

 

もう学校という組織の閉塞感からは距離を置けたけど、家族パートが刺さるようになってきた。
彩乃かなみさんのお母さん、歌からあふれ出てくる感情で心が揺さぶられる。あとアルゼンチンタンゴがめちゃくちゃかっこいい。百名兄は、自分も思春期で言葉足らずだけど家族思いのお兄ちゃん。悪夢のシーンの身のこなしが軽やかで美しい。TJは、明るくて強いパパが似合う。けっこう壮絶な人生だけど、あのまったりした穏やかな笑顔を絶やさないのは救いだろうな。

菊池さん、ひろかちゃんより少し上くらいの子だと思ってたら、りりかちゃんに次いで大人でびっくりした。不安定な中学生そのものでした。今上演するにあたって、ひろかの描写がこれで十分かは難しいなと思うけど、中学生の真にできることは居場所をつくることくらいなのかも。

りりか唱子、登場時間は長くない中でインパクトが強い。ぼそぼそした喋り方にパワフルな歌唱、最後の吐露も胸が苦しくなる。

リアル同級生という福くん陽彩くんの組み合わせ、すごく平和でキュート。早乙女くんの穏やかさは救いだった。

天使の皆さんもよくお見かけする人多くて嬉しかった。1フレーズずつソロもあり。最後の唱子の語りの中で、加害者として登場する彼らも苦しそうでつらそうなのがすごい演出だと思った。

最後プラプラと真が言い合うシーン。小さい誤解が積み重なって真意が伝わらないこともあるし、ガイドのない人生に付きまとう不安は消えないけど、もう少しただそこにいてみたら、長めのホームステイのつもりでやってみたら、のメッセージにいろいろなことを思い出して考えた。

プラプラがメインキャラのメインの曲をワンフレーズずつ歌って彼らを振り返るの、そして最後に真がプラプラの曲歌って親愛の情を示すの、おしゃれで素敵。

今作で出演者が口にする食べ物が基本的に本物で、すき焼きのシーンとかすごくいい匂いが漂ってくるんだけど、これプラプラの最期の記憶である夕餉の匂いにかかってるのかな。

地上に降る雨によって真っ白なセットがカラフルに色づくの本当に印象的なラストだった。


オリジナルミュージカル、アニメ漫画路線もあっていいんだけど、小説原作も増えていってほしいな。見た目を再現するとかしないとかの話から離れられるし、1本の作品にまとめやすいんじゃないかと思うけどな。

あと年々体力がなくなっていくのを感じる。もうちょっと短くなるかどこかで休憩入るかの方が個人的にはありがたい。


ピーターパン
楽しかった!演出がめちゃくちゃ好み。

ダーリング家で展開される1幕は、影がめちゃくちゃ好きだった。

2幕始まった途端、別世界のネバーランド!!でっかい人魚と骨の龍と鹿がかっこいい。衣装も特徴的で、ストリート系のロストボーイズ、中華服の海賊に、呼称が変わって特定民族イメージじゃなくなったモリビト、とカラーギャングな様相。その彼らがそれぞれのダンススタイルでとにかく動く動く。ワニは影絵で表現されててすごくかっこいい。

3幕は小野田無双だった。ピーターとフックの殺陣ががっつりある。
めちゃくちゃ笑いをかっさらうんだけど、自由度は高くても根幹のトゲは外さない船長。優勢で盛り上がる味方に向かって刀振り回すフック、自分しか大切にできない小さくてずるくて悲しい男だな。

魅惑的に響く低音からコミカルな高音まで、声がとにかく魅惑的。最後のダーリング父が前髪おりてて憔悴しててきゅんだった。

玲奈ピーターは少年!そのもの。タイガーリリー救出後に「別の声」って言われて、綺麗な高音で歌うピーター。最後みんなが戻ったあとの複雑な表情が印象的だった。

カテコ、2階でフックコスの少年がスタオベしてて、船長から「お、なんか似てるやつがいるぞ」って認知もらってた。

 

ハリーポッターと呪いの子

1年越しの藤原ハリーリベンジ+初の玲奈ハーマイオニー

アルスコが初見時と同じペアで、完全に好きになってしまった。門田スコピの台詞回しがずっと好き。前も思ったけどアルスコのラストのやりとりはクィア的表現だと認識した。

待ちに待った藤原ハリー、感情表現が苦手で最後まで息子にはぎこちなくしか喋れない父で愛おしい。執務室に来たダンブルドアと話してるシーンで、愛を受け取れなかった息子の顔が強く出てくるのすごく好き。ポリジュース薬とか「がんばってふざけよう」としてるとこの自由度高い。

玲奈ハーマイオニー、めっちゃ好きだ。私の知ってるハーマイオニーが大人になったそのまま、ハキハキしてて強くてキュート。デルフィーがinしてるときの喋り方が全然違っていて可愛い。

たーたんさんどちらの校長もすっごく好きだった。マクゴナガル先生はハリがありながらも威厳と慈愛のある声で、アンブリッジはツヤッツヤあまあまのキュートボイスから恫喝声まで幅広い。

よく考えると、あのマルフォイ家の一人息子があんなにすくすくとハリーポッター及びその周辺の魔法界の歴史オタクに育ったの、本当にドラコパパは否定せずに愛を注いで育てたんだろうなって思うよね。

ようやく出てくるセドリックの声と喋り方があまりにもまっすぐで、そこまでの展開も含めてすごくぐっときてしまう。最後まで正しい正義の人。

運営に思うところはあるけど、著名な父とその息子の物語を、有名俳優と新進の若手で演じるって構図はすごく刺さるものがあるなと改めて思った。

 

スクールオブロック

とにかく楽器班の子供たちが最強だった。ギターソロ聴きに来てもいいくらい。コーラスもサポートスタッフの面々もみんなそれぞれで素晴らしい。個人的にはキーボードのローレンスととんがった衣装センスのビリーが特に推しでした。

 

デューイ、下品でめちゃくちゃではあるけど、音楽を愛していて歴史も理論も詳しくて楽器ができたりサポートスタッフできたりする生徒たちをリスペクトするし尊重するし車の運転も丁寧にするので、破天荒ストレスが少ないんだよな。
デューイと校長がバー行くとこの、めぐさんの絶唱と後ろで受けてうなずいてるお芝居がとても良い。あと保護者会で生徒たち褒め称えるところ。やっぱああいうエモーショナルな感情の発露が好きだなあ。

自作の曲聞かせろって言われて渋々歌い始めるところ、発声練習で早口言葉言うんだけど、母音法やっていてめちゃくちゃ笑ってしまった。どこかの劇団の教育を受けていそうなバンドマン。あとなんかの場面でデューイが校長に「~~メリーポピンズだ!」って言うとこあるんだけど、あれは元々かな。

技術担当のメイソンが校長にハグしに行くシーン、メイソンやってるのが去年メリポピでマイケルやってた中込くんだったので、なんかメタの感情も上乗せされてめちゃくちゃぐっときてしまった。

先生たちに「デューイが従来のやり方を守らない!でも生徒が笑顔になっているのも事実……何か我々が学べることはないか」みたいな曲があったの良かった。抑圧が目的の存在じゃなくてちゃんと生徒のためを思っている人たち。女の先生が校長鼓舞するシーンも好き。

コンテスト主催の神田ジェフかっこよくて好きだった。生徒たちの迫真の芝居(デューイに抱っこされるメイソン?の脱力具合がめちゃくちゃ好き)に押し切られるいい人。なぜか1幕終わりに生徒とデューイに混じって歌ってくれるジェフ。

映画がどうだったか覚えてないけど、生徒の家庭もお金持ちばかりじゃなくて多様なのも良い。男性カップルが両親の家、技術職の父がなんとか通わせている家、勉強じゃなくてフットボールこそ"うちの男"な家。

 

闇に咲く花

いのうえひさし、それほど何作も見てるわけではないんだけど、戦前戦後の日常から戦争を描く作風が面白くてつらい。神道をめぐる問答がすごく興味深かった。
直球のメッセージの作品でほっとするというかこういう作品が続いていてほしい、と思う世の中にどんどんなっているな。
浅利陽介まっすぐな男が永遠に好き。マッカーサー側の高官の方、声がかっこよくてアップで見てしまった。

 

ラグタイム

north-th-east.hateblo.jp

 

アナスタシア

north-th-east.hateblo.jp

 

スリルミー

north-th-east.hateblo.jp

 

2023「アナスタシア」

2020年、いちばん初めに消えたチケットでした。念願の再演に推しまで参加が決まり、山本グレブへの気持ちも残りつつ、もう念願も念願の再演!!!
本当に楽しかった!!! 好きな人しか出てこん、全員歌がおそろしく上手い。


・木下アーニャ/海宝ディミトリ
海宝ディマ、恋の擬人化だった。海宝先生あの諦めた笑顔で身を引くの似合いすぎる。本物のジャスミンに本物のアルを幻視した。やればできるの歩き方教えてるときの真剣な顔が好きすぎる。

My Peterburgがもう本当にキラキラで力強くて最高。海宝先生の声は細かいパールみたいな輝き。

はるかーにゃ、意外と強いしどんどんいろいろできるようになる説得力がある。ずっとキュートでタフ。早い段階で本当に皇女かもって思った。


・木下アーニャ/内海ディミトリ
めっっっちゃ良い!! 歳の近い2人の気安さで、はるかアーニャもくだけてる感じでめちゃくちゃ可愛い。

In a Crowd of Thousand、小さい奇跡に震えるくらいの感動がある。

このふたりは通常で身長同じくらいなので、トランク乗るとアーニャの方が全然上からの体勢になってすごく好き。


・万里生グレブ
キャスティング聞いてからずっと勝手にラドゥーだと思ってた節あるので、誠実で可愛げもあるキャラ造形なの驚いた。あとずっと声でっかくて面白い。

アーニャが自分の人生のしこりを溶かす鍵だったんだな。常にアーニャに対して誠実であろうとしているように見えたのでとても好きだった。

万里生グレブは、子供を撃たざるを得なかった父と撃たなくてよくなった息子なんじゃないかなと思った。革命は起こるべくして起きたとして、その手段は必ずしもそうでなくてもよいはず。最後晴れやかな表情だったので、きっと生きていける。

アーニャに対してはあくまでも道で出会った親愛なる同胞で、嘘なら道を踏み外さないようにもし本当なら名乗り出たらここでは生きられないという心配と忠告が強い気がした。恋とも執着とも違う感じ。

グレブ登場がけっこう鮮烈なので(サイゴン3年後のトゥイみたいだと思った)、出てきた瞬間に歓喜に満たされた。背中向けたグレブと鏡合わせで動き合わせるディミトリのカットがめちゃくちゃ好き。舞台写真欲しい。

白鳥の湖の海宝直人vs田代万里生、会場がびりびりびりってした。音圧。


・海宝グレブ
革命に救われたかつての少年で、優しかった父が行ったことと自分が見たものにとらわれて生きてる青年。繊細さが強い分、私は恋心も強めに感じた。

ずっとつらそうだった。皇族の子供たちが連れてかれるのを目撃したのが心の傷で、でも「父の息子」でいるために同じことをしなければととらわれている。

 

これは、そりゃ万里生グレブ怖いって言われるなって理解した笑。でもあれは単純に愛情の示し方の違いというか 怖がらせたいわけではないのだと思うのよ……。

 

ヴラドは禅さんのみ。ずっとキュート。それでいてディマの父代わりでもありそう。出会った時系列的にそこそこ大きくなってからっぽいけど。

朝海リリー素敵!本物の貴族の品がありつつ、浮気もするし日々酒に溺れるしキュートだった。皇太后に向けては適度に気持ちは寄せつつ、まあ仕事は仕事って感じかな。

堀内リリー、めちゃくちゃキュートでめちゃくちゃおばちゃんですごく好きだった。禅ヴラドとのやりとりめちゃくちゃ可愛い。


背景映像も、ちょうど舞台と馴染む写実具合でとても素敵。My Peterburgの運河の背景が好き。盆3つによる転換もスムーズかつちょっと仕掛け絵本みたいで好きだった。

太平洋序曲で好きだった面々がアナスタシアでもご活躍で嬉しかった。この人好き!って思ったら大体むらむらさん。あと武藤さんイポリトフ伯爵の儚さ。わが故郷に愛を、本当に好きな曲だった。

バレエが本物だったり、細部まですごく好きな作品でした。

また見れますように。

2023「スリルミー」

■松也私×廣瀬彼

見るたびに印象が変わっていく、噛み応えのあるペアでした。
初見時に衝撃で足を取られ、気づけばそこそこ追っていた。


@シアターウエス

廣瀬彼なにごと???? こんなに彼ばっかり見るの初めてくらい彼から目が離せなかった。
頭からずっと心が抜け落ちてるみたいな喋り方、かと思えば子供みたいな受け応えをすることもある。あとかなり明確に前方席の客の目を見ている場面があって、私も冒頭で煙草吸う彼と目が合い続けていた。めちゃくちゃ怖いし動揺した。

でもやっぱりあの彼にたくさん友達いる??あんな怖い人なかなか近づきがたくない??ずっと心壊れてる顔してるけど、少しだけ表情が緩むのは火と刃物を見てるとき、あと私が彼に執着を見せているとき。

スポーツカーも、たぶん彼が想定してるのと違って、最初からずっと怖い。ほぼ脅しだよ、その子供用と思しき声色がむしろ怖さを増長させてるよ。

松也私は2014CDのじめじめべたべたした印象と違って、優秀でおとなしい青年って感じ。いや、レイくんあいつと仲良いの?まじで?って思ってる同級生の人格出てきた。

ラストは愛よりどちらかというとバトルの勝利って感じ。

事前に感想で散見していたけど、わたしも「廣瀬彼 ハンマー」で検索した。

拘置所に連れてこられた彼が入り口で肩どんって押されてよろけるの、めちゃくちゃリアル。総じてマイムがうまくて美しい。あと最後後ろ向きに階段上る彼も美しい。

松也私の倒れ方も好きだった。冒頭私をドイツ語で押しのけるとこで膝曲げずにゆっくり倒れたり、「うちは最近親父がケチで」で押されて階段に座り込むとか。

カテコ5回目退場時に廣瀬さんがセットの梁ぽんぽんってやりながらかがんでくぐっていったのきゅんだった。高身長がちな彼たちあそこ危ないよね。


@サンケイホールブリーゼ

初見時よりもかなり人間だった。もちろんお芝居を変えているところもあるだろうけど、スリルミーという作品が、白い絵を見て何色が見えるか人によってもタイミングによっても違うみたいなところあるよね。

今日の廣瀬彼、大人になり損ねた青年っていう印象。時々飛び出す不釣り合いに幼い言葉遣いだったり時が止まってる部分がある感じがした。
私のこと好きかはわかんないけど、私が自分のこと好きなのは好きで、私が自分に執着を見せてるときに表情が動く。

元々家庭環境でギリギリで生きてて、私との不健全な関係でバランス取ってたのに、契約とかいうしばりを自分で持ち出して私の望みも叶えなきゃいけなくなってバランスが崩れたように見えた。着衣乱れたまましばらく止まっているのが苦しい。5分心を飛ばしながらどこかにたどり着いてしまったのか。

僕の眼鏡以降の松也私めちゃくちゃ好きだな。積極的に介入してるわけじゃないけど、電話で何をどう言えば彼がどう動くか分かっててコントロールしてる感じに見えた。
取り調べ後、公園で彼に胸ぐら掴まれてもまったく視線を外さない表情崩さないのが強い。

取調室で、脅して非難して恨みごと言って色仕掛け泣き落とし。
レイって呼んでほしいってわかってるから呼ばなかった彼が、説得のために名前を連呼するのが浅ましくていつも好き。留置所のキスを早々に止める私が冒頭の彼のリフレインで、立場が逆転してるのがわかる。

Afraidの廣瀬彼、精神的にも身体的にも閉塞した状態が苦手なんじゃないかと思わせられて、見ていて苦しい。もちろん自業自得ではあるんだけど。

ラストは、バトルの決着と関係の変容。
私は愛ゆえというよりいつも彼がやっていたゲームの延長という温度感だけど、彼は私とその関係が不可逆に変わってしまったことを思い知った哀しみを感じた。
そこの感情のずれがとてつもなく好き。

階段あがっていく彼が美しい、永遠のものにしたい。


@ウインクあいち

思えば前楽まで来ていて、ノーガードのときにこそやられる説をまた立証してしまった。

彼はかなり「友達が多い人気者」に見えたな。ニーチェの誤読を語る姿が堂々ときらきらしてて、この彼はけっこう本気で信じ込んでるんだって思った。
最後の「俺がなりたいのは~」につながる印象で、こんなことになってなければ、正義かどうかは怪しいけど勝率のすごいカリスマ的な弁護士になってた気がする。

松也私も落ち着いていて、後半彼の脅しにも全く押されないので、頭脳バトルの色が強いように感じた。
護送車で真実を聞かされてどんどん憔悴していく廣瀬彼が美しい。♪君を認めようで哀しそうに笑うんだな。やっぱり私のことが好きだったとは思えないんだけど、私の"愛"を変質させた哀しさはあるのかな。

何で相手のこと好きなのかは分からないペアだけど、3ペアの中でいちばんべそべそに泣いてるのが松也私なので、好きなもんは好きということなんだろうな。
彼からの気持ちが得られないからなお執着してしまったのはあるかなあ。他2組はともすればふたりで生きる道が見つかったかもしれないので。

彼の方も恋慕じゃないかもしれないけど、毎回♪こんなに君を求めてるのに〜で顔歪めて微かに笑うので、少なくとも私に求められることは彼にとって特別だったんだとは思う。

 

スリルミーは四季くらいカテコの止めどころがわからない。
3回目くらいでハグというかお互い横抱きみたいな、松也がぎゅっとくっつく。そのあと正面からハグ、直前で止まって顔寄せてキスする?しない??をやってちゃんとハグ。
今年の彼たちは役抜けが早いっぽく、切り替えられるタイプのカテコ多かった。


@配信

収録はおそらく自分の初見より前の東京序盤なんだけど、そう思えないくらい彼の感情が見えるので、やっぱり客側の状態で見るたびに味が変わるタイプのペアな気がする。
私は前半から実のところ余裕があるのが垣間見えるし、逆に彼は苦しそうで可哀想。

スリルミー(曲)の間ずっと余裕がなさそうで、見ていて苦しくなる。廣瀬彼は私に求められている事実が好ましいので見せつけるようにジャケット脱ぐんだけど、それと同時に私含めた彼にまとわりつく全てに首を絞められてるみたいな切迫感がある。

♪そして僕の目を見てのとき、指で目ガッってやる松也私が強い。あんなのやってたの初めて気づいた。あんなやつが言いなりの弱気おどおどなわけないだろうよ廣瀬彼。

計画で止めようとしてるときの松也私が本当に心配してる顔してて、少なくともあの時点ではちゃんと止めたかったんだろうなと思った。

スポーツカー、ちょっと自分の世界に耽ってる間に逃げられそうになって♪僕たちともだちで物理的に捕まえてて怖い。

公園での喧嘩でめちゃくちゃ落ち着いてる私、戻れない道でぼろぼろ泣いている私、取調室で菩薩みたいな顔してる私、見れば見るほど好きだった。本当に彼のこと好きで、止められなくて、裏切られて、"勝負"に出たんだろうなと思った。

廣瀬彼、父親に顧みられず、ともすればもう少し家庭環境が悪いように感じるので、自分個人を求めてくる私をどこか拠り所にしているし、突然いなくなるのも「他の奴はこんな面倒なことしない」も試し行動で私の執着を引き出してるんじゃないかと思った。

まったくの脳内設定だけど、途中から廣瀬彼は父親から虐待を受けていたと思って見ていた。
しつけと称して狭くて暗い部屋に閉じ込められたことがあって、閉所恐怖症の節がある。弟はただ愛されていたという気持ちだけで、強さで言ったら弟へのコンプレックスより父そのものへの感情の方が強い。

閉所恐怖症の印象は確実にAfraidのマイムの上手さに起因するものだと思うけど、特定のこのシーンがというより、あんなに見目麗しくて体でかくて強そうなのに、ずっと瞳が揺れていて不安定なところがつらくて引き込まれる彼でした。

 

 

■達成私×公輝彼
役者的にもいちばん楽しみにしていたペア。
自分の観劇の間が空いたのもあって、最初と最後で全く物語が違うように見えた。


@シアターウエス
すごく見たいタイプのスリルミーだった。過去最高レベルに会話が成立している。
達成私は本当に彼のことが好きで、公輝彼もちょっと悪癖はあるけど明るい人気者で、普通にちゃんとカップルだったんじゃないかなと思わせるふたりだった。
これまでにもカップル路線はいたけど、もっとヘルシーでステディなカップル観でこの作品って成り立つんだって驚きがあった。

達成私ずっと本当に恋をしている、恋人を見る顔してる。もっと怖い系に振ると思ってたけど、シンプルで筋が通っていてすごく好きだった。

公輝彼は、冒頭しばらく持ち前の善良さがにじんでいて、彼にしてはまともすぎないかと思ってたけど、空き巣くらいから表情がゆがんできて、普通の大学生が道を外すっていうルートを見た。父へのコンプレックスが強くて、直前に父親か弟がらみの嫌なことがあって、むしゃくしゃしてるとこに私と口論になって積み重なって一線を踏み越えてしまった感じ。

脅迫状も嘘の証言も留置所もちゃんと私の発言を受けて会話をしている彼で、お互いにちゃんと「放火はしない」とか「今は本当に嫌だ」とか止められていればあるいは……と思ってしまった。

死にたくない、元々めちゃくちゃ期待してたけど、期待以上に超良かった。良かったし♪怖いんだって聞いた途端に寝たふりやめてニコォって笑った達成私が本当に怖い。

でも裏切られてなければ、達成私はふたりの人生のためになんとかしたと思う。その「なんとか」が彼の望むものかは微妙なところだけど。

このふたりは身長差がほぼないのも良かった。でかいのにおどおど……きゅるる……ってしてる達成私。

カテコで徐々に役が抜けていく達成とすぱっと元に戻る公輝くんの差も良い。

やっぱり公輝くんのフラットで間をコントロールするお芝居が好きだなあ。映像忙しいのは承知の上で、今後もいろいろ舞台出てほしい。


@ウインクあいち
ずいぶんパワーバランスが変わっていた。達成私がえらい怖くなっている。

公輝彼は、事件の前後で変わっていくというより、明るくて付き合いの良い人が破壊衝動に乗っ取られると暴走する感じに見えた。
計画のときのスイッチの入りっぷりがすごい。♪別の誰かを、の「てめえが止めるからこんなことになるんだぞ」みたいな感情をにじませる言い方。
超人のラスト、東京でも興奮で息が上がってたのが印象的だったけど、それを通り越して声出して笑っていた。

戻れない道の♪信じ~て~た、達成私は目見開いて微笑みながら歌ってて、この人にとっては「いつまでもふたり 永遠の時間」が至上なんだなと思った。

取調室で♪命尽きるまで~を同じ顔で笑ってるの見ながら、このとき彼も「死ぬまで契約守る」って言っちゃってるんだって今日初めて気づいた。
なんなら、この達成私はそれを言わせるために自分にすがらせたのではとまで思った。

Afraid、彼が独白し始めたときは目見開くだけだったけど、最後絶叫してるの聞きながらすごく邪悪な顔で笑っていた。そのあと53歳の窓の下に移動するときも同じ表情のままで、立ち上がるとめちゃくちゃでかいので、うずくまる彼を取り込もうとする悪魔に見えた。

 

■松岡私×山崎彼

@サンケイホールブリーゼ

21年のチケット消えて配信でしか見れなかったので、劇場で見るの初めて。

相変わらず速度の緩急がすさまじくて、キラキラを感じるピアノとすごく合ってる気がした。

21年はもう少し刹那的な関係の印象だったけど、今年めちゃくちゃ幼馴染。頭の良さを隠さない私で力関係が冒頭から私 > 彼だし、彼も恐怖政治を敷くタイプじゃなくて、若者の愚かさで走ってる感じ。

あの速度で進みながら、芝居がすごい細かい。弟へのコンプレックスとか「分かっててつついてる」のがわかる。

"超人"の彼の仮面が崩れてひっくり返るのが定石のお話と思うけど、この彼はずっと何かやるたびに私がフォローというか尻拭いしてきたのではと思わされる。意外と今までいないタイプでは。
こんなにふたりの関係が変わらないまま迎えるエンドが新鮮で面白かった。

前回「○○に似てる」とか「誰それっぽい」とか感じたところがなくなって完全に独自路線で素晴らしかったんだけど、それはそれとしておさまらないカテコの対応が成河すぎて良かった(三方に手向けて胸のところで小さく手合わせる、前屈せんばかりのお辞儀)

 

 

2017年版以降しか見ていないし、初見時はそこまで考えて見てないから昔からかもしれないんだけど、スリルミー(曲)における私の加害性の観点って前回のまりお私以降強くなってるのかな。柿彼も福士彼もあんまり感情が表出するタイプじゃなかったから余計にかな。

物語がひっくり返る意外性の松柿と、周りがなんと言おうとふたりにとっては愛のにろまり、初演ペア2組が再演しながら、別路線の成福が生まれたり、また新たに違うバランスのペアが生まれてくるの、演劇作品としての強度がすごいなと思う。

2023「ラグタイム」

3つの人種の物語という触れ込みだったけど、白人の中でも階級や男女のしばりがある描写が現実だった。
金銭に余裕のある男は露骨に表には出さないけど移民と握手はしないし、妻への"こうあるべき"がある。おじいちゃんが最初かなり抵抗ありそうだったのに、なんやかんや馴染んでいくのも良かった。貧困層は自分より金を持っている他人種が許せない。

ターテの映画のシーンとラストで、いろんな服の人が混ざって踊ってて素敵だった。のだけどやっぱりターテのストーリーが他と絡まない意図が掴みきれなかったのと、ラストもえ~~ってなった。昔の作品だからかもしれないけど、今なら家族にならなくても多民族が手をつなげるラストが見たいかも。

 

最後の図書館のシーンが本当に好きだった。
もちろんコールハウスの選択は間違ってるけど、明確な差別主義者だけでなく警察や裁判所の消極的無関心と偏見による過剰な警戒で大切な人とものを奪われたとき「正しい指導者」が救えるものは何か、そもそも黒人が救わなければいけないことなのかを考える。
説得されて自分だけで引き受けることを決めた表情、抵抗するヤンガーブラザーに泣きそうな笑顔で「大丈夫!」って言う、他の仲間にも笑って肩抱いて送り出すところが真骨頂。"リーダー"としての表情が苦しい。歌詞聴いてると、自分でも「賢い戦い方」ではないことはわかってるんだよね。でもあの時の彼にはそれしか選べなかった。

ファザーと2人になって息子のことを聞く口調と「やっぱり僕は殺されるのかな」の声と表情。ワシントンは公平な裁判を約束すると言って降伏を取り付けて、お父さんも(自分の命の保証も込みで)そんなことしないと信じたかったんだろうけど、それを守らないのが個人の集合たる"社会"なんだよな。(実在の偉人だけど少なくとも今作の)ワシントンは、自分が交渉役として立ち合い説き伏せて条件として公平な裁判を約束した同胞が目の前で狙撃されたのどう思っているんだろう。どれだけ「寛容と忍耐で乗り越えて」名声を積み上げても、結局軽んじられるのではないかと思うと、ただ道のりの長さを感じる。

作中でいちばん変わったのはファザーかなと思う。コールハウスとの対話がすごく良くて、これを川口さんと芳雄さんで見れているのがすごくありがたかった。

でもファザーは戦争であっけなく命を落とすし、ブロンド美女は美しさだけを消費されるし、大公さんへの注意は間に合わない。そうそう世界は変わらない。

 

サラへ通いが通じたあととか回想シーンとか幸せなシーンのときも好きだった。Wheels of a Dreamの希望に先のことを思って泣いた。背中合わせで向かいにいるようなサラとコールハウスのダンス、綺麗で切なくてつらい。

 

コールハウスの元に来たヤンガーブラザーの歌がものすごく良かった。元々紗がかかったような素敵な声質だなと思ってたけど、その質感はそのままにばんばん声が飛ぶようになっててすごい。

決意を固めてしまったコールハウスを見ながらヤンガーブラザーがべしょべしょに泣いていて、最後の退出の仕方も含めて彼は守られる存在だった。それは最後まで本当に仲間にはなりようがないところでもあるし、ここまで心を寄せてくれたことへの感謝でもあるのかな。

 

ネガポジ含め「髪パーマにしたらいいのに」って感想を見て、ファンデの色の延長の話なのではと思っていたけど、やはりもともとかつらつけるはずだったところを、もうこれもいらないんじゃないかということになったらしい。自分そのままで他の人種を演じる中で、じゃあ肌や髪の違いってなんだろう、と考えたとのお話もあって、今回の演出が完全な正解ではないと思うけど、カンパニーも観客もアジア人が多くを占める中で、考えるきっかけにはなったと思う。

それ以外にも感想見てたら「差別主義者がいるってわかってて行ってるから自業自得」みたいなことを強い口調で言ってる人いて、そう思うのは仕方ないとしても(たしかに行かなければ起きなかった出来事ではある)、通しで今作を見て感想としてそれを出力できるんだと思って本当にすごく落ち込んだ。あそこは差別主義者がいるから仕方ない、別の道を通ろうという判断を被差別属性側がするべきだったって、感想として普通に言っちゃうんだって。本当に「私たちと離れた遠い国の昔の話」と思って見れる人もいるんだって思って、道のりは遠い。

 


藤田さんは毎度当然のようにいらっしゃった。開演前駆け込んだら逆に前から歩いてきてて道譲ってくれたし、普通にいすぎ。
9/23マチネ、2幕の野球シーン直後に舞台機構不具合で一時中断して、直後にプロデューサーが出てきてご説明があった。何事もなく復旧して良かったけど、プロデューサーが表に立って説明してくれるの珍しい気がした。

2023年見たものまとめ(5~6月)

キングダム(配信)
面白かった!すごく良い大劇場の漫画原作舞台だった。終わりの暗転が美しくて、あれは劇場で見たかった。

 

キャストの若者とベテランの配置が見事。

みうちゃんの主人公力がすさまじい。東宝が新しくやりたいことの軸になるのわかる。
そして私は牧島くんのことがかなり好きだな。声色多彩で、漂と政で全然印象が違う。もっとふんわりした印象があったんだけど、今作では名君になる青年の精悍さがあった。

やっぱり祐様の声で登場すると面白いんだよな。原作があんな感じなのか詳しくないけど、ミームとして見かける印象にはかなり合っていたのでは。

壁と昌文君がキュート。ふっと緩むシーンも熱いシーンもふたりともすごく好きだった。昌文君が王騎に「あなたがひとりでバカ熱くなってる理由が少しわかりましたよ〜」って言われる理由がわかるのがすごくよかった。若手とベテランの間に立つ、若き王にかける男。

ゆっくん左慈も見たい気持ちもあるけど、あのくらいの年齢の左慈が見られてよかった。温度のない人斬りとしての存在感がすごかった。

王弟の方が新納さんの嫌な役を彷彿とさせる。あの手の役が上手い俳優が好きだ。片眉だけあがる表情とちょっと癖のある声が好きでした。

カテコで子役を抱き上げる主演ふたりの横で、貂の頭ぽんってしてた昌文君がきゅんすぎた。

全体のパルクールも殺陣もかっこよかった。ただ、芝居強めのシーンの戦闘の無音はたしかにちょっと気になった。北斗の拳のときも思ったけど、打撃音入れたらだめなんだろうか。

甲乙という訳ではないけど、「新感線みたいだなあ」「新感線だったらここで拍子木鳴るなあ」って見ながら考えてしまっており、国産アクション活劇における新感線の型って唯一無二なんだなあって思いました(さらに元は歌舞伎だけど)。

 

歌舞伎家話(配信)
松也×柿トーク。気の置けない友達なんだろうなという感じでとても楽しかった。

2014スリルミーで松下松也柿澤のご飯会に万里生くん来たけど10分で帰った(理由は不明)の話。用事あったのか嫌だったのかはわかんないけど笑、2015年エリザの稽古場でIMYたちがかしましすぎてお花様の元に避難していたよしまりのこと思い出して微笑ましい気持ちになった。全然タイプは違うけど、酔っ払ったら電話する程度の交流はあるかっきーと万里生さんのことけっこう好き。

漫画原作演目でトライアンドエラーの話。すごく上手くいった作品もあるし、出来はよくなかったのも目指すものは正しくて、エラーのプロセスも大切、って表で言い切れる人は素敵だなあと思いました。

かっきーが長唄興味あるって言った途端に「清元もやろ!全然関係者と繋ぐし!てか俺が繋がなくても周りにいっぱいいるよね!!舞台に立てとは言わんからけんけんと3人でなんかやろ!!正座嫌なら椅子作るし!!」のテンションになった松也さん、本職に向かって言うことじゃないけどオタクの熱量……となって愛だった。

初めて歌声聴いたときにDNAを感じたって言ってて、プロが聴いたら本当にそうなのかもしれないし、最近血縁主義について思うこともあり、でも自分もこういうエモに弱い自覚もあり、いろいろ考えながら聞いていた。

蜷川さんの時代を感じるエピソードの流れでロミジュリの話になると歯切れが悪くなるかっきー嘘つけなすぎてラブい。

今年のスリルミーの話。38歳が大学生やります、他は20代なのに、でもこの前新納くんが出てたんだから大丈夫だねって廣瀬さんとふたりで喋ってたって言ってて、かっきーが笑いながらおい!ってつっこんでた。新納さん本人もネタにしてるから大丈夫なんだけど、かっきーはその場にいない人の話題でいじる形になったとき必ずフォロー入れる印象で、そういうところ本当にきちんとした人だなあって思いました。

 

人魂を届けに

完全に理解はできなかったけど、わかることが正解ではないんだろうなと思った。しばらく考えたい。

開演前にしんとした静寂の中で鳥のさえずりだけを聞く時間があってすごく印象的だった。

いろんな要素が入っている作品だと思うけど、最後の陣と山鳥のやり取りは「組織を憎んでも個を許して救う」「構成する個人も救われることを信じて正しいことをする」ことでしか組織は変わらない、ということかな。陣さんが森から出られたあとどっちに振るかわからないけど、少なくとも理解して出ていったように見えた。

複数役の方々の役の切れ目が分からなくて、森の家と現実の境があいまいなのがすごく好きだった。

女形で有名な篠井さんが山鳥を演じてる作品の中で、佇まいとか声色が普段と明確に切り替わらないまま八雲の妻が存在してたのがなんとも良かった。伝統的な女型とそれほど性差を感じない日常の女性役が両方とも出てくるのがなんかすごく好き。
もうひとり、作中女性と同じ俳優が演じる、一人称に揺れがあって「本人の意思でなく恋人を失くした」としか語られない葵さんが気になる。
男性俳優だけで構成されている作品だから私がそこに意味を見出そうとしてるだけかもしれないけど、安井さんとの夫婦役という目新しさだけじゃなくてかなり意図的に境界をぼかしてるように感じた。ここに山鳥が作中でも性別男性である事実が絡んでくるのかな。

初め気づいたら舞台上に立ってた黒ロングコート陣さんにびっくりした。めちゃくちゃ似合っていてかっこよかった。

 

ART

north-th-east.hateblo.jp

 

セトウツミ@ビレッジホール
滑り込みで大楽。眼鏡忘れたけど、頭から見損ねたけど、帰りに目の前でパンフ売り切れたけど、めっっちゃ面白かった。

シリアスな最終パートまでどっかんどっかんウケていて、原作が面白いのももちろんなんだけど、舞台上での具現の仕方がかなりめちゃくちゃ好みだった。テンポが良い。最終パートも体温は変わらないのも好み。

ぼんやりとしか出演者把握してなかったからカテコで出演者6人なことに驚いた。
納谷さんと佐藤日向ちゃんがツボでした。田中真二のひとり語りのパートで、ぴょんって飛んで手すり踏んで飛び上がっていて身体能力何事かと思った。樫村/ハツ美の切り替えがめちゃくちゃ好き。

3月から河原で稽古しながら中華統一を目指してた有澤牧島両人。短い切り替え期間で大阪の高校生になっていてさすがでした。
牧島くんは本日もカテコの挨拶が好みだった。おもろの温度が好き。
有澤くんは兵庫県民なんだね。映画ドラマ舞台どれも瀬戸だけ関西人なのは、やっぱりまくしたてるからかな。

そういえば末中小吉も左右対称だなと思った。

 

ある馬の物語@世田谷パブリックシアター
冒頭ビニールに包まれて吊られたところから落ちてくる成河馬でまず心をつかまれた。あんな姿誰でもなかなか見れるもんじゃない。

終始フィジカル成河。馬たちがめっちゃ馬ですごい。

スーパー小西タイムがどの役でもめちゃくちゃ面白い。あんなにかっこいい=面白いの人なかなかいない。美の象徴たる黒毛のイケ馬が彫刻みたいな美しさだけでなく、存在もイケてて素敵でした。

小柳友の御者、明るいけど色気もあってすごくかっこよかった。
1幕ラストのそりのシーンと、ぶつっと切れる休憩の入り方も好き。

 

ムーランルージュ@帝国劇場

north-th-east.hateblo.jp

 


兎、波を走る@プレイハウス
現状あんまり正しい感想が出せない気がする。過去に見た野田地図作品に比べて主題についての知識が乏しく、まぶされてたモチーフや事実が結びつかなかったというのはあるかな。忘れさせないっていう目的は私みたいな人間にこそ意味のあるものなのかもしれないけど。
あと現在進行形であるはずの主題と、AIについて、とかの生まれたばかりで答えの出てないテーマが複数混ざってて、そこの関係を見ようとしてしまってわからなかった。

演劇オールスターズな座組で、テーマに反して悲劇的すぎないお芝居なのは好きだった。セットとギミックも美しい。

いつもどんな扮装してても秒でわかるような俳優ばっかりなので、この俳優さん誰だっけと思ったらその人は野田さんがち。