みなも泳ぐ水鳥も

観劇と他の趣味

2024「北海道フードフィルムフェスティバル プレイベント」

そろそろ札幌に行きたくなったところで良いイベントがあったので、久々の北海道。

そらのレストラン上映会&アフタートークと、シネマディナー。

 

そらのレストランは本上映時以来に久しぶりに見たんだけど、昔より刺さっちゃって各所で泣いた。食のおはなしではあるけど、お仕事ドラマでもあるなあと思った。仕事との付き合い方とか大切な人がいなくなったときの整理の仕方とか。

 

上映後に大量にプレスが入ってきて規模の大きさにびっくりする。

久仁ちゃん司会で洋ちゃんと本上さん登場!サンセバスチャン映画祭も食の映画で、サンセバの思い出を一通りトーク

その後山の会から村上さんご夫妻と富樫さん(マキタさんモデルの方)もご登場。ご夫妻の実際のなれそめ聞いたり、富樫さんの民宿に本上さん一家で遊びに行ったらたまたま大泉家もいて、みんなで遊んだ思い出話聞いたり。みんなで海辺でモルックしたそう。

その後フォトセッション。カメラさんたちの要求に応えながらひとりでずっと喋ってる。

最後ご挨拶してトークショーは終了。

 

シネマディナー参加勢はスタッフさんの誘導でバスに移動。この辺り手探りでスタッフ総出でやってる感じがしてキュンとした。がんばれCUEさん。

 

そのままバスで大倉山へ。ヌーベルプース大倉山。

ウェルカムドリンクと前菜取って席に行くと、後ろにプレスがずらっと。もっと観客がご飯食べて終わりみたいな企画だと思ってたので、最後を締めくくるメインイベントでびっくりした。

映画祭の主催である札幌市から市長、道新から社長がご挨拶。22年に企画の相談があり、やっとの実現とのこと。乾杯の挨拶は亜由美社長。しあわせのパン公開時に周辺のパン屋からパンがなくなったことがあって、ずっと食と映画のイベントがやりたい、北海道ならできると言って回っていた、とのこと。熱くて素敵なご挨拶でした。

 

その後はコースが提供されながら、正面のステージでシェフや生産者の山の会の方々のお話を聞くような流れ。

メニューは以下。映画で提供されたメニューを踏襲していてすごく美味しかった。

 

前菜:村上牧場 "希少部位牛トンビ"のカルパッチョ 山本さんの"アルパージュ36カ月"

→これがどっちもめちゃくちゃ美味しかった。coronのパンとチーズの相性が良い。

 

スープ:富樫さんの大豆のスープ ふきのとうの泡

→大豆のスープって飲んだことなかったんだけど、確かに大豆の味がするポタージュで美味しかった。

 

サラダ:"若気の至り"~FLOWER GARDEN~

→イッパチでメニュー開発していたらしく、ハチャメチャなメニュー案からシェフがいいところだけ抽出して作ったらしい。お花畑みたいな綺麗なサラダ。

 

とここで、洋ちゃんと本上さんがサプライズで再登場!サラダご紹介の小噺。完全に手が止まる客席に「ごめんなさいね、食べてくださいね」って言ってくれるも、無理!って客席。

この話をしてる間、ずっと入り口で洋二さんが立ってトークを見ている。スタッフに促されてステージにあがってきて「私がいると他局に迷惑かかるでしょ」「あなたはもういいのよ、北海道の珍獣みたいなもんだから」などガヤガヤ。サラダ食べ始めた客席に「今まで胸がいっぱいで喉を通らない!って言ってた人たちがあんた出てきた途端に食べ始めましたよ」とか言って完全にYOYO'Sの時間だった。

テーブルが入り口付近だったのでステージが見にくい代わりに出入りで近くを通ってくれて嬉しかった。

このあとなぜか洋二さんと話す機会があったんだけど、さすがベテランアナウンサーってすごいんだなと思う気遣いと素人コントロールの人だった。

 

魚料理:"マーレ旭丸"せたな沖サクラマスポワレ 菜の花のリゾット

→クセがなくて美味しい。

肉料理:北海道大学より"マトン"の炭火焼き せたな産さやあかね

→映画の通り、確かに香りはあるんだけど全然嫌ではなく、すごく食べ応えのあるマトンだった。

デザート:"自家製"函館ミルクのアイスとイチゴのヴェリーヌ

→ちょうどよいパフェ風アイス。綺麗で美味しい。

 

テーブル同じになった人と喋ったり、なぜか混ぜられていたプレスの方としばし交流したり、楽しい時間だった。非日常とごはんと周りの歓談の声とでなんかふわふわ。

 

勢いで取ったチケットだったけど、良いプレイベントに参加できてよかった。

11月の本イベントも素敵なものになりますように。

2024年見たものまとめ(1-2月)

回廊とデコイ 舞台挨拶

結局表に出るクリエイターになっていて、元気そうで何よりだった。

映像作品は好きなのもそんなでもないのも含めて、懐かしくて落ち着く感じ。

制作の裏側とか思いとか面白かったこととかすごい喋っていた中で、めちゃくちゃ不謹慎な持ちネタをぶち込んでいて、手たたいて笑いながらお前こっち側がどんな気持ちだったと思ってんだよと思ったりもした。これからも元気で過ごしてほしい。

 

ブギウギ音楽祭

人生初かもしれない収録観覧。放送外のところで歌唱シーン撮り直しがあったり、セット転換の間は高瀬アナがつないでくれたり、観覧ならではの面白さがあった。

芳雄さんは服部さんとコトリンゴさんそれぞれのご縁を話したりしながらゴリゴリ笑いを取っていて良かった。

 

オデッサ

革命的な舞台作品だった。共通日本語と鹿児島弁と英語と字幕によって構成される会話劇なんだけど、何のストレスもなくするするお芝居として入ってくる。

アメリカに働きに来ている日本人とアメリカで生まれ育った日系人アイデンティティの話にも踏み込みながら、あくまでも事件を軸にしたクライムコメディで、面白くて爽やかな後味がある好きな作品でした。

 

日高くんは軽いけど中途半端な自分にコンプレックスがあったりなかったりなのが等身大の若者的で新鮮だった。(児島さんの正体がわかるまでは)唯一全状況を把握している人なので、ひとりでドタバタしていてかわいそかわいい。

警部は職業人でピリッときちっとしているんだけど、徐々に人間っぽい可愛らしさが出てくるのが本当にcute。

この作品において、英語監修を担うエマちゃんと英語も鹿児島弁も覚えなきゃいけないかっきーみたいなリンクも感じた。

児島さんは迫田さんが演じてるのがミスリードになるような役。結末分かってから見ると、突然拳銃取りに行ったり詰めの甘いところもあって、そういうところなんだよきっとと思ったりした。

日本語/英語話者のみの空間の日本語、3人いるときの字幕に加えて、(おそらく)アメリカ英語とイギリス英語の違いの表現がすごく良かった。迫田さんは声もかっこいい。

 

大楽は特に、日高くんへのエールの色が強くなったようで好きだった。児島さん退場からラストまでが爽やか。泣くよかひっとべじゃ!

最後のカテコでナレーションの横田さんもご登場。ありがとうございました。

 

大泉洋リサイタルin武道館

north-th-east.hateblo.jp

 

アテンションプリーズ2

海宝先生のクリエコンサートシリーズ。めちゃくちゃ満足度の高いコンサートでした。

 

1幕は航空会社設定の演出付。飛行機に乗っていろんな国をまわったり、アクシデントで停電したり。

海宝フィエロ実現してたら沼だっただろうな。直前までエルフィーで未来を見つめてたのに突然ディズニープリンスの顔になる。

アメリカ航路はCryForMe。智海フランキーとの歌唱に胸がきゅぅんとなる。SoCloseは海宝くんの歌唱だけ聴いたら1幕の山場に男性主人公が歌い上げる曲だと思うだろうな。今にも泣きそうな表情でドラマティック。

ヨーロッパ航路はフランケンより君夢。本編見たことないんだけど、どういう状況で歌われるのか何となくわかってしまった。ソロコンのときにリクエストが多かったかららしいんだけど、それで本編見てバキバキに芝居込みで仕上げてくるのプロでオタクだなと思う。

停電演出はペンライトで照らされる中、アコースティックでTomorrow。コーラスのハーモニーも美しくて、優しいTomorrowだった。みなさんが客席降りるので、サラウンド状態で幸せ。そのあと電気ついてYou can't~。初回はペンライト持ってなかったんだけど、参加したくて買ってしまった。

ゲストもソロが1曲あり、万里生さんはButterfly。イントロ流れたとたんに背筋が伸びた。

2幕は素の進行。ゲストとトークしてデュエット。万里生さんと海宝くんは全く絡みがなくて~っていうところからわやわやと会話していて、デュエットが二人の男!会場のいろんなところから悲鳴が上がった。一気にラドゥースイッチONになって胸ぐらつかんで匂いかぐ男。海宝アルマンはラドゥーのことシンプルに嫌いそうだな。

各航路でやっていたチャレンジコーナーも面白くて、アメリカはEmaさんとジャズ、ヨーロッパは田中俊さまとオペラ。各プロがいるクルーも面白いし、できる海宝先生もすごい。

そのあとのクルーが歌唱するディズニーメドレーが本当に最高だった。天才森亮平によるスパカリ/ジッパディードゥーダ/ハイディドゥルディーディー/ビビデバビデブーくらい?のマッシュアップで、全員歌が上手いどころではないので本当にかっこよかった。あれだけでも売ってほしい。

最後RENTから1曲歌って、ベートーヴェン・デー。これがまた可愛くていい曲。

アンコールはDecember ’63でペンラ振って盛り上がり。

クルーとの関係も素敵で、素晴らしいコンサートだった。

 

ジョジョの奇妙な冒険

面白かった!好きなミュージカル作品だった。

いろんな要素があるであろう原作から、気高さと力の何を大切にしてどう生きるべきかのお話にまとまっていて、するっと入ってきた。父への恨みと元々の野心に加えて恵まれた者への憎しみが積み重なった者と、愛されて育ったゆえの強さと気高さを持つ者、ふたりの男の話。

有澤ジョジョは育ちが良い坊ちゃんで、彼がいろんな人に会って学んでヒーローになっていく成長譚だった。まもディオは育ちに苦しめられて生きるために道を違った人。行動は悪だけど、じゃあどこで引き戻せたのか考えてしまう。

父ふたりがまたレミゼっぽさを強化していて、深みが増していた。施しを受けて心を入れ替える人もいればそれはそれで変わらずに生きていく人ももちろんいる。

 

とにかくステージングがかっこいい。特にオウガーストリート前だったか、ロンドンの満点の星空がすごく綺麗だった。

狂言回しをラッパーが担うの、新鮮だし説明の分量も保てるので発明だと思った。スピードワゴンいい奴。
ツェペリさん、1幕スッと出てきたので爽やか紳士と思ってたら、2幕好き好き好きすぎてやばかった。父であり友であるキャラ造形に若干のフリーダムを加える男。紳士的でかつ様子がおかしくて良かった。波紋の曲、本当に好き。

カテコでは手の甲にキスしてお辞儀する伊達男。

 

レミゼが小説をぎゅっとしているみたいに、1部ピックアップの今作をブラッシュアップしていけば良質な国産ミュージカルになるんじゃないだろうかと思った。

 

テラヤマキャバレー

モデルへの造詣が深くないのもあって本当にわからなかったんだけど、分からなさも許される作品だったのかな。おもちゃ箱をひっくり返したみたいな多彩さ。

鋼ではなく踊るためのしなやかな肉体を持った三島壮ちゃんがなんか好きだった。あとやりたい放題の蚊。

福田えりさんと賀三くんのふたりの女性も良かった。それぞれの寺山への愛情。

 

トッツィー

日本で公演が決まってるって情報が出てから早5年くらい。すごく楽しくて今やる意味のある作品だった!

歌とダンスが全部良い。あとアンサンブルさんの見せ場みたいなシーンがすごく多い気がして、マイケルドーシーが活躍する物語における意義を感じた。特に本田大河くんが舞台上にいると目で追っちゃったな。

いっくんはマイケルのときのギラギラ感とドロシーのフェアリーゴッドマザー感の両方を持ち合わせててすごい良かった。ドロシーとして登場するときのヨッ!って感じもあるミュージカル俳優ってかなり適任だな。

ジュリーは凛々しくて誠実でキュートな人。ちゃぴちゃんでこういうかっこいい現代の女性見られたのすごく嬉しかった。

最後のシーンの「1マイル歩いたくらいで分かったと思わないで」の台詞で胸が締め付けられた。この作品はずっとこれをやっているのが誠実だったと思った。

 

好きだったのはサンディとジェフ。サンディのネガティブ未来予知ソング、昆ちゃんのコメディエンヌパワー大爆発で大好き。でかい男二人と並んで出てくる、小さくてパワフルなもう一人の女の子。

ジェフは友達思いのいい奴だけど、うっすらずっと面白がってもいて好き。女性役でオーディション受かったって聞いて、初手で「女の仕事奪ってきたってことか?」って言える脚本家、現代演劇界で活躍してくれ。

あとミュージカルが主体ではない中で、すごく良い活躍の仕方だと思った。歌の量は多くないけどちゃんと歌えていて、お芝居パートがすごく好き。こういうバランスのキャスティングの仕方すごく素敵だと思ったので、他の作品でもやってほしい。

カテコでちゃぴちゃんがキレッキレで踊っているのをぽ~っとしながら見ていた。かっけえジュリー。

2024「大泉洋リサイタル in 武道館」

ホールツアー1つも取れなくて、最後まで来れるか私も体調崩さないかずっとハラハラしながら1月を過ごしてやっとたどり着いた2/2!

人生初の武道館を洋ちゃんのリサイタルで迎えました。

 

早めに着いて、お花の写真撮りまくって、黄金像を見るための大行列に並んで。もうそれでほとんど開幕時間。横のカフェで食べたフォカッチャサンドがめちゃくちゃ美味しかった。あれまた食べたいな。

 

2階席だったので裏側の大階段から入場。

最速先行で2階かよ~って思ってたんだけど、舞台正面で全体を見渡せる席ですごく見やすかった。何よりドームキャパで慣れてると武道館は距離が近い。

 

なんやかんやして開演時間。洋ちゃんの爆笑アナウンスで注意喚起が入り、ガンガン流れてたParty Ya!がぶつっと止まって会場が真っ暗に。

6年ぶり(!)のオイズーミコールで呼び込むと黄金像の衣装着た洋ちゃん登場!

以下うっすら記憶のセトリと感想。

 

TOKIO

後々のラジオとかで言われてたけど、確かに1曲目が人の曲。笑

サビのカメラ指差しが好き。

 

-トーク-

360度皆さんがいるから何となく回っちゃいますね。

 

♪本日のスープ

♪ビーチドリーマー

♪君には

名曲だけどあんまりジャンボリーでも聴く機会ない3曲嬉しかった。君には大好き。

 

-トーク-

「さすがに13000人いるって思うと、いくらバカでもあと4人いてほしいなって思いますね」っていうNACSさんサービストークから端を発した会場とのやり取りが、自分のファンである前提の戯れでなんか良かった。\福山さんは~?/って客席から聞かれて、大スター伝説とその後日談の流れに持っていくのなんか、仕込みみたいに美しかった。しかもそれをPA席で聞いている大スターご本人。

正直私も福山さん来るのではと本当に思っていた客のひとりでした。笑

 

♪スマッシュヒットLOVEバシーン

♪疾れ!

ロックナンバーパートめっちゃかっこいい。やたらマイクスタンド回すロックスター。

サインボール投げるのをゴルフでやるの天才の発明だと思った。

 

-VTR前半-

やっぱりどうでしょう班と一緒にいるときの洋ちゃんの良さってあるんだよな。紅白出場発表されたあとに「なんでもします」って懇願する紅白歌手好き。

 

自動車ショー歌

また逢う日まで

♪長い夜

昭和歌謡メドレー全部よかった。全部ちょっとずつご本人のエッセンスが入りながら、洋ちゃんの良さがある。ホールツアーの頃から大評判だったネクタイ外しをしっかり浴びてノックアウト。特に長い夜が好きだった。

 

-VTR後半-

ひたすらにファッションショー。結局本人が好きで楽しいんだもんな。

 

♪手漕ぎボートは海をこえて

ヒグマの洋から情緒がめちゃくちゃになる名曲。でも会長との思い出だからこの位置が正しい。あの日振られたダイスの先に会ったのが武道館リサイタルだよ。

 

-トーク-

新曲の「コラーゲン。」はリリースがあるからタイトルだけ決めてくれって言われた福岡公演の夜、水炊き食べてたから思いついた話。めっちゃ笑った。

 

♪Top Of The World

♪ふわり

パセポの曲を持ち歌で歌える日本の俳優ってそう何人もいないのよ。武道館全体を駆け巡る星空みたいな光が印象的だった。

ふわり好きだなあ。転調とともにふわりと舞い散るハートが綺麗。

 

♪ハナ

ふわり歌いながらせりが下がってピアノが出てきたので、お?って思っていたら、そのままピアノに向かう! え?え??って声がしんと消えて弾き始める。

からはいろんなとこで流れた通り。初めは笑い声もあがっていたんだけど、立ち上がってトークで場をつなぎながらも明確にテンパっていて、胸がぎゅっとなって手を握りながらがんばれ……!がんばれ……!ってなって。この状態でも「ここDVDの編集点だから」って言われた途端に声援やめて初見のていのワーキャー始める客席はだいぶ面白かった。

本当にあの瞬間はスペシャルな空間だった。まさかこんなに後に続くくだりになるとはこのときは思わず。

歌いこまれた素敵な歌声とピアノだった。私は声出し解禁ってあんまりぴんと来ていなかったんだけど、ハナの合唱はだいぶぐっときた。

 

-トーク-

すごく練習したこと、京都にピアノ持ち込んで練習したこと、リハまでまったく間違えてなかったことをバンドメンバーに同意を求めて、もう1回だけリベンジしていい?って完璧に弾けて(マイク入ってなくて聞こえず)。最後にせりを下がっていくピアノに「でもありがとね」ってぽんぽんってする洋ちゃんのそういうところが好きだよ。

 

♪あの空に立つ塔のように

キラキラが降り注ぐ中スポットライトに照らされて武道館の中心に立つ大泉洋を目に焼き付けた。

 

En.Man In The Mirror

モノマネ部分しか歌えないから一生懸命練習したら上手くなっちゃって、やりたいのはこれなのか?ってみんなで協議した結果、バンド演奏を収録してみんなであて振りして途中からステージに全員上がってきちゃうっていうネタをやるための、プロの力を結集した名曲。ネタを成立させる洋ちゃんの歌声が最高だった。洋楽も似合うのよ。バンドメンバーとスタッフに拍手を送る機会にもなって素敵だった。

 

En.バカね…冬

En.バカね

あらためてイベントのためだけにファンに向けて書かれた曲が何曲もあるってすごいことだよなあって、バカね…冬の歌詞テロップを見ながら思いを馳せていた。最後渾身の愛してるよ~!

バンドメンバーと手をつないで礼、NAOTOさんとハイタッチして松本さんと握手してみんな見送ってから、生声で「ありがとうございました」と長い投げキッス&エアハグ。

 

すごくすごく満たされたリサイタルでした。

 

ディレイビューイング

上映後のトークショー登場から明確に落ち込んでいる……!昨日落ち込んで帰って見に来た関係者の良かったよって感想にも「あんなことになってしまって申し訳ない」って返した話をぽつぽつとしてくれる。翌日(ディレイ当日)起きたら福山さんから来ていたメールを読んでくれる。「今日みなさんの前で読んでくれていいですよ(イケボ)」の許可付きで、すごくエンターテインメントに富んだ表現で「むき出しになった姿こそ演出を超えた演出で、ああいう姿をファンはみんな見たいんだ」みたいな(一言一句同意の)コメントを送ってくれて、ちょっとだけ元気になった、と。

スター稼業の先輩メンターがすぐそばにいて、我々に聞かせるところまで込みで言葉を送ってくれる環境のありがたさだよ。実際あの出色の出来のリサイタルをやり切って、それでも準備してきたことができなくてしおしおに落ち込んでいる姿を我々に見せてくれる、それこそが大泉洋の魅力であって、感情を喚起されてたくさんの人間が何か言葉をかけなくてはと思わされるのがスターなんだよなあ。

トーク会場現地にいたファンがめちゃくちゃ声をかけて、なんとか盛り立てようとする。「昨日間に合ったの?」って聞かれたときの笑顔がくらっとなるくらい好き。ギリギリ間に合ったそう。あと肩腰膝と肩越しに頬の振り付けが可愛いよね~ってやってくれた。最後は「おかげでちょっと元気になりました」って言ってくれて退場。

 

もう心かき乱されて泣きながら1000字ぴったりのファンメールを送りました。

君こそスターだよ。

2023年見たものまとめ(12月)

明らかに忙しい時期にめちゃくちゃ予定を詰め込んだので、集中力を欠いた月だった。反省……。あんまり無茶せずにちゃんと見たもの受け止められる余裕を持てるスケジュールにするべきですね。

 

リムジン

こちらも2020年リベンジ作品でした。

ワンシチュエーションの会話劇。自分たちも周りも全員がうっすら事実を分かっているのに、各々の理由で触れないようにしているのがリアル。

その空気で守ろうとしているものが、美しくて経歴があってやわらかい作業着の向井理が組合長になる未来であることの説得力がすごい。元のビジュアルももちろんあるだろうけど、作業着が似合わないように作ってあるんだと思った。

 

ウィキッド

お噂はかねがねの作品だったけど、想像を超えて最高で完璧だった。

2001年を受けて作られたという、為政者が都合の良い悪者を仕立てて民衆がそれを信じるというお話の筋も本当によくできているんだけど、みんなに囲まれた人気者が「周りに求められる自分」をやっていくためにひとりで生きていくことを選ぶ決断を、無駄な説明なく見せる美しさに震えた。あとマイノリティの知識人が言葉を奪われるくだりが本当につらい。

1幕の学園パート、あんまり四季のイメージになかった自由度の高さでめちゃくちゃ楽しい。グリンダのギャグセンの高さがずっと面白かった。きゅぅってなる嫌な学校あるあるからのふたりの雪解けがしびれる。

フィエロは超リアコ枠。恋におちてしまった。歌い方がシンガーっぽくてダンスが上手い。ちょっととろんとした表情と喋り方が好き。

個人的にはネッサにいちばん心を寄せてしまった。孤高に生きざるを得ない人の横にいた強くあれない人。本当に勝手な人だとは思うけど、エルファバにもグリンダにもなれない人間は、どうしても自分はここだと思ってしまう。

オズ陛下、やってることはめちゃくちゃなんだけど、ニコニコしててビジュアルがキュートで声がかっこよすぎるので、ずっとクソ!って思ってた。でも人たらしの為政者としてはむしろこうなんだろうな。だからこそ中も外もついていってしまう。

 

ジョン&ジェン

疲労がピークで上手くキャッチできなかった。

強い姉に守られて育ち、一般的な学生生活を送って、「アメリカの若者」になった弟のジョンと、強い母の気持ちを慮りながら成長した息子のジョン。

1幕後半のジョンのタイプの役あまり見る機会がなくて新鮮。オールバック撫で付けヘアも好き。生活拠点が分かれた結果、政治思想で対立することになる姉弟の口論がリアルでつらい。

ジェンの中の弟が大きすぎるのは責められないけど、息子のジョンがじわじわずっとしんどいのも分かるので、2幕はずっと苦しい。ジョンがいろいろわかってやってる子なのがなおつらい。

ゆるやかに切り離して生きていく未来が見えるラストは淡い光だった。

 

もちろん世界的にもそうなんだけど、9.11とその後の世界の変化はアメリカにとって描くべきテーマなんだなと思った2作でした。

 

LUPIN

ずっとなんなんだよ!って思いつつも、個人的には見やすくて楽しい作品だった。手たたいてはしゃげる作品の良さがある。プリンシパルのキャラがそれぞれ立っていて、物語の深みとかはとりあえず置いといて、好きな俳優のたくさんの出演作の中の1つとしてあったら楽しいでしょう。

クラリス、ともすれば取り合われる典型的なトロフィーヒロインなんだけど、自立心はあるけど恋に恋するお年頃で、詐欺師の甘言につられて着いてっちゃうところもある絶妙なバランスのキャラクターで良かった。真彩さんの太陽みたいな明るさが、キャラの魅力を倍増させていたと思う。

1幕終わり時点で色恋コカインおじさんだったホームズは、最後まで見ても蚊帳の外色恋おもしろおじさんだった。何一つ事件に寄与してないのは原作準拠なのか演出家の個のみなのか。「俺はお前のライバルだからな!な!」を世界的探偵でやるな。
でも顔がすこぶる整っている面白おじさん本当に好きなので好きだった。イジドールくんとの即席バディスピンオフ作ってほしい。

 

ベートーヴェン

north-th-east.hateblo.jp

 

2023-2024「ベートーヴェン」

信じられないような豪華メンバーの日本初演

韓国初演から賛否あったストーリー部分については、回数を重ねるごとに冷静になってしまって、こいつら勝手だなと思いつつも、歌と演出とお芝居で楽しんだ作品でした。

 

心に傷を負ったまま大人になってしまった、陰気で人付き合いの苦手な男がなんでこんなに似合うんでしょうね。トニの家に来たときのコミュニケーション苦手っぷりが最高だった。お花さまとのちゃんとしたラブストーリーのシーンが新鮮で、1幕の間はずっとにやにやしながら見ていた。

1幕ラストの演出がめちゃくちゃかっこいい。どこを切り取っても絵になる舞台全体を使った演出。今回全編を通して風がすごく印象的だった。舞台上に風が吹くってあんまり見たことなかったかもしれない。

ベットに仰向けに寝っ転がりながらメイン曲歌唱するシーン、何なら普通の体勢より声でかくてまじで何事なんだと思いました。真上向いてるから顔まったく見えないのに声だけ聞こえる体験をした。

2幕花火のシーンで、過去の傷を慰められて子供みたいな顔で泣くルートヴィヒ好き。

2幕ラストの絶望したトニを見て別れを決める、その心の動きが見える表情の変化に胸が締め付けられる。芳雄さんの好きなお芝居です。

2幕終盤の演出もかっこよくて、砦の井上芳雄を幻視した。芳雄アンジョ。乗ってるのピアノだけど。

 

個人的にはラブストーリーそのものよりも、ルートヴィヒの成長のお話の方が軸だと思った。人嫌いで尊大な天才音楽家が聴力を失っていく中、愛を知って人のために手放すことを覚えた結果、自由を否定され愛を否定されたもう一人の自分である弟を認めて心を通わせることができたお話。

かつて保護者に尊重されなかった子供であったルートヴィヒが、弟に対して高圧的で自主性を認めない。周りの噂だけでカスパールの愛する人を否定したルートヴィヒが、外聞の悪い人妻との愛に身をささげる。ルートヴィヒとカスパールの対比が綺麗だったので、もう少し弟との物語も見たかった気持ちはあったな。

海宝パールは内気で、兄のこと怖いと思っている感じ。だから断絶のきっかけになったヨハンナのことは本当に大切だったんだろうし、兄と離れて自分に自信が持てるようになったんだと思った。和解のシーンで、兄の目を見て口を指しながら大きく喋るカスパールに泣いた。

小野田パールはおっとりしていて、どっちが保護者だと思うくらいの包容力。最後の和解もぼろぼろの兄をがっしり受け止める優しい男。

 

M!のアマデたる音楽の化身ゴースト。トートダンサーと違って個々に若干の意思がありそうなとこが好き。コンサート中止後の曲で、順番に出てきて一番端の子にお前いけよってけしかけてソロダンスに入る流れがめちゃくちゃかっこいい。ゴーストに囲まれて音楽書いてるときの、どこかに魂が飛んでるようなルートヴィヒの薄ら笑いがすさまじい。

 

ベッティーナはso cuteだった。ルートヴィヒ初訪問ではしゃぐミーハー女子可愛い。2幕は裏切りっていうけど、元は兄に浮気やめるよう忠告しているし、義姉のこと好きだから家族でい続けたかったんじゃないかな。

フランツはサカケン先輩の回のみ。ヒール振る舞いが堂に入っている。お花さまのフランツ……の威力がありすぎるのでそれを無下にするフランツ、絶許。

と思いつつ、まあもちろん良い人ではないけど、不倫発覚後の彼は間違ったことも言っていないというか、ベッティーナを見張りにつけるって言われて「馬鹿にしないで!」って啖呵を切ったその足でルートヴィヒに会いに行くトニもなかなかなので何ともですね。もう少しキャラクターの多面的なエピソードが欲しいところだった。

弁護士とのカスのThe Other Sideみたいな曲好き。

 

御園座で一足先に大楽を迎えたマクセみはるちゃんのご挨拶回見られた。
最後カテコで出てきただけでちいちゃくてメロメロ。顔合わせから本当に可愛くって!って言うお花様と「自分でも可愛さの自覚はあるの?」って聞く悪い座長。しっかりご挨拶されていてさすがでした。

 

パンフによると2022年2月にキャストが全く決まってない状態でスタートした企画らしいので、何があったらこのメンバーが集まるんだよと思うんだけど、おかげさまであまり見ないメンバーでのお芝居が見られたのはありがたい。

あのお花さまと芳雄さんが毎公演へとへとになりながら演じていて、本当に主演ふたりの負荷が大きい作品なんだろうなと思った。兵庫大楽で芳雄さんがまっすぐ感謝を伝えていたのが本当に印象的だった。

せっかくクンリーの新作で、このメンバーで立ち上げたんだから、ストーリーをブラッシュアップして再演続いてほしいなと思ってます。

2023年見たものまとめ(10~11月)

眠くなっちゃった

north-th-east.hateblo.jp

 

切り裂かないけど攫いはするジャック

しばらく考察ブームの過熱とか事件のエンタメ化とかが織り込まれてるのかなと思いながら見ていたんだけど、織り込まれながらどんどん混ぜっ返されて、混ざったまま終わった。笑
キーとなるシーンのミスディレクションもそうだけど、キャラクターがめいめいに動くのが肝なので、見てないところで起きてることは見逃してる可能性があるかも。

いつもは群像的な印象が強いけど、今回は個で動くキャラがたくさんいたのが好きだった。また、その群と個の切れ目がなんとなく意味ある感じなのも。考察で盛り上がる住人たちが集まっている後ろで事件が起きているけど、集まっているので気が付かない。

全景配信が欲しい舞台だったな。

 

天號星

笑いとアクションと人情ものが全部楽しめるハンバーグカツカレーみたいな作品。

ザ・新感線の主人公!な義と自己犠牲の男を早乙女太一で見られるとは。
早乙女兄弟が対面してるのにまともな殺陣は2幕までおあずけなのか~?と思ったら、1幕ラストで半兵衛の気持ちの変化に伴って太刀筋が鋭くなる、その物理的な変化にしびれる。

最後のvs朝吉戦終えて、足も手もガクガク震えてる姿に涙腺が決壊した。

 

銀次inの古田さんはこれこれ!って感じ。やっぱり悪い男が好きだな。

半兵衛inタイチサオトメの歩き方がまんま古田さんですごかった。

山本千尋、剣も型も全部かっこいい。普通の会話の声が落ち着いてて好き。くぼしーさんもすごい新感線の人って感じで良かった。

 

シスターアクト

ペンラ複数持ちのファンとなんか有名な作品だよね~みたいなペアに囲まれて、良い観劇体験だった。

 

聖歌隊が変わっていくシーン、何回見てもすごく好き。修道女でも人種の感覚はあって、人によってはデロリスに表情を変える人もいるけど、それでも音楽が距離を近づける。はみ出しものだけど音楽への愛とリスペクトのある人が集団を変えていくの、SORのことも思い出した。

廣瀬エディは誠実でいい奴。かずエディはデロリスと同じグループにはいたんじゃないかなと思うけど、廣瀬エディのことは本当にギリ名前覚えてた同級生って感じ。汗っかきがちゃんと悪口で、からかわれるの嫌だったけど言えなかったんだろうな。

優しくて誠実で内気なエディがデロリスのために少し変わって助けられるようになる経緯がすごく好きだった。

あと動きが不審。笑 なんであんなにガタガタ踊れるんだ。エディ初登場の「フィラデルフィア警察に任せておけば、安心だぜ」みたいなシーンで、武道の型みたいなのをへにょへにょ披露しながら、ちっさい声でア,マチガエタ,チョットマッテ,モウイッカイってごちゃごちゃ言ってんの好き。

梅田メアリーロバートは初め純粋な子供のようで、デロリスの影響で変わったのがすごくよく分かる。ミックジャガー神父のブーツが背丈の半分くらいあって可愛かった。

大澄カーティス、めちゃくちゃ怖い。キザで伊達男なので、より闇の顔が怖い。最後逮捕されるときの喚きは「かつて呪いの言葉だったもの」って感じで、デロリスが何に打ち勝ったかよく分かる。

実はお初の太川神父は、やり手ビジネス神父って感じでギラギラで出てくるのも違和感なかった。この前見た常住神父は、神とともにあった人が俗世にまみれたように見えたのでそれはそれで好きだったんだよな。

この作品のクスッとするシーンはかなり気が合うんだけど、ダントツで「何ひとつ事情を説明されないまま捕まって解放されるタクシー運転手」が好き。

ラスト曲みんな仲良しで可愛かった。
梅ちゃん翔太くんで並んでルダハートしててキュート。
ジャンプするところで無の顔でまっすぐ高く飛ぶ廣瀬氏と、高さを張り合おうとするまあさまはシュール。

 

 

無駄な抵抗

今作もわかりすぎない話でありつつも、かなり直球のメッセージもありつつ。
最後芽衣とリサの会話で何かが解けた気がした。ただかなり直接的に説明されるので、事前に注意喚起があっても良いのではとは思った。

止まらない電車に対して"工夫"して慣れてしまわずに、もし大ごとになったとしてもその手で止めろというメッセージはすごく好きなんだけど、そこまでにあったリサの抵抗や駅の女性の捨て身の抗議は効果がなくて、島忠という個人のこれまた無茶でようやく止まるのが、どう思えばよいか難しい。事実そうでもしないと止まらない、何ならそこまでしても止まるのか?というところまで世界は来てしまっているのだけど。
正式な手順を踏んで、誰か一人の人生をかけずに電車を止めることはできないんだろうか。

 

めちゃくちゃ卑近な感想になるけど、下手最前列に座っていたので登場直後の大道芸人にニコッとしてもらった。

コロスと個としてのキャラクターのつなぎ目が曖昧なのが面白くて、それぞれの人物のそこにいないけどそこにいる居方が好き。その中でどこにも存在している可能性がある大道芸人さんの動き見てるの面白かった。個人的にはコーヒーが来るのを予知しているのが好き。

ケラさんにしても前川さんにしても、今の劇作家が今伝えるべき作品を作って、それを観劇できている世界の有難さが続いてほしい。

 

 

浅草キッド

正直2幕までちょっと長いなと思ってたんだけど、ラストに向けて加速度的に良かった。

とにかく山本耕史オンステージ。登場した瞬間に劇場が色づく。歌もダンスも普段の振る舞いも何もかも様になる。東京はせり上がりだったらしいけど、会場の関係で客席登場。暗闇の中客席に現れるのが見えてめちゃくちゃ沸いていたらそのままスポットライト引き連れて、中通路練り歩いてシンプルにめちゃくちゃかっこよかった。
師匠の半生曲好き。
2幕の亜矢ちゃんとのシーン、どうにもできない情けなさと申し訳なさの表情が切ない。

タケが売れた後の、嬉しさを隠せないめんどくさい師匠に心がぎゅっとなる。それはそれとして師匠のビジュが良すぎる。
最期のシーンは、三浦の服毒(してないけど)後を思いだすような身体コントロールの極致みたいな芝居。本当に体が動かなくなっていくのを見ているしかない客席。あれを舞台で、すぐそこで演じてるのを見られて幸せだった。

2幕の病院のシーンもすごく良かった。マキグチくんが現実でどういう存在の人だったか知らなかったんだけど、穏やかなところから苦しさがにじみ出てくる表情がすごく好きだった。

今野さんもめ〜ちゃくちゃ良かった。コンビとして成立するまではむしろキヨシが引っ張ってきた、売れる熱意のある男。売れて喫煙している後ろ姿から、求められていたのは自分じゃなかったのを実感するすごく短いシーンが苦しかった。

松下さんは全てのシーンの出が強い。歌もダンスも華やかで目を引く人だなあ。
新しい時代を連れてくる男で、でもかつての師匠と同じことはできない自覚がある切なさ。

いろんな濃い人たちの中で、決して表情豊かじゃないタケの芝居が本当に上手い。特に2幕で周りの状況が変わり出した中で、ムスッとしながらいろんなこと考えてるのが分かるのすごい。1幕ラスト師匠とのタップ競演も素敵だった。

ただやっぱり各シーン全部ちょっとずつ長い感じがした。もうちょっとコンパクトにしてくれると助かる。

2023「眠くなっちゃった」

管理が全然うまくいっていないディストピアのお話。
完全管理社会よりリアリティがあって、まるでどこかの国みたいだなと思った。

いつもボリュームがあって疲弊するんだけど、美しくて哀しいラストシーンで会場が静寂に包まれる瞬間はしびれる。
壮絶な人生の記憶がすべて消えたあとに、リュリュから愛されていることだけ覚えるんだな。そこにかつて愛していた人たちがいなくなってしまっているのが哀しいけど。

ヨルコ、初め出てきたときはクズだけどたまに優しいので妻は離れられない系の男ね~と思って見てたら、全く同じ文章を全く同じトーンで繰り返すところで違和感が出てくる。そのあとどんどん壊れたラジカセみたいになっていくので、やりようによってはもっとオモシロになるんだろうけど、絶妙なバランスでコントロールされているんだろうな。その演出も実際に出力できるのも好き。
ロボットの身体表現もすごく好きだった。お茶入れずに帰ってきて、ノーラたちが喋ってる横で上半身だけガガッガガッって回すのとか、火花が出て壊れたり回収員に頭撃たれて直角のままバタンと倒れるところ、機械の体だった。
サーカス団長も道化たちと一緒にパフォーマンスしていたし、身体表現のプロがいる作品でここまで役割を担っているのが見えて幸せでした。

団長も優しくてずるい良いキャラクターだったな。匿ってくれるし裏切ったりするわけじゃないけど最後は置いていってしまうし、そもそもノーラにやりたくない仕事させてたのは団長なわけだし。

ケラさんはメッセージを直接言わせるような作風ではないと思っているけど、現実を組み込んだような描写のひとつに「娯楽は必要でしょう」って言う興行主と生活でそれどころではない苦しい市民が入ってくるの、苦しいな。


マイベストは野間口ナンダ。お仕事と人間味のバランスが好き。
ゴーガに対してもどういう感情を持っているのかわからないけど、少なくとも何か特別ではあったんだろうなと感じるラスト。
あの作品世界であの立ち位置のキャラで、あの力の抜け方が野間口さんだなあ。

門番-バンカーベックも好きだった。壊れている世界を容認して、実際の立場がどうであれ支配者側に立って人生をドライブしようとする人。今の世界にたくさん存在する人。あの生き方を選んでも、決して平穏に生き続けられるわけではないのが、まさに現実だなと思った。
あの彼だけが世界を止めて第4の壁を越えて、現実の我々に語りかける役割なのが何となくわかる。

山内さんは毎回精神が分裂しそうな対極の2役をやっていた。ゴーガの暴力表現の圧倒的な美しさ。

リュリュ妻が本当に妻なのびっくりした。一回気づいたら、「愛する妻の声を聴きながら今はノーラといる」構造にもうひとつ入り組んだ気持ちを抱いてしまうところはあったけど、本当にあたたかくて素敵だった。